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家族の秘密

長らく忘却していた40年前の記憶。
家族一緒に暮らしていたおだやかな日々。

もう何年も前のこと、ものごころさえもおぼつかない、だからすっかり忘れていたと思っていた。けれど、その知らせを受けて、心のどこかでずっと引っかかっていたのだと気づく。

知りたい。

なぜあなたはお母さんを捨てたのか
なぜあなたは私を捨てたのか
お父さん、私、その答えが知りたい



全ての予定をキャンセルして、私は東北行きの新幹線に乗っていた。生まれ育ったあの地へ行ったのはいつかもう覚えてもいない。それほどに向かうことを許せなかったのだ。

父の死の便りを受け、その縛りを破り、私は今あの場所に向かっている。当たり前だけれど、乗客の誰もそんなことは知るよしもない。でも、まわりにそんなことがバレていないかどうかおっかなびっくりしてもいて、そんな自分が自分でおかしくて笑ってしまう。なんだろうこの感覚は。こわさとおかしさが今私の中に矛盾なく同居している。



過去の記憶
父、母、一緒に暮らしたたくさんの家族
海の見える生家
潮のにおい
砂浜に漂着した大きな木
そして、突然の瓦解

聞くところによれば、暮らした家はもうないらしい。家事で全焼して立て替えたのだという。その家もしばらくしてよそに売り払ってしまったようだ。そして、あの地震のあの津波でもうなにも残っていない。
その歴史がまるで私と家族みたいだな。


次の停車駅のアナウンスが車内に流れる。
目指す終点はまだずっとずっと先だった。

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