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美術展が好き。 |ピカソとその時代

2022年に続き2023年も、美術館に通いたい。

そして年の暮れには、胸を張って「美術鑑賞が趣味です」と言えるようになっていたい。この「美術展が好き。」シリーズは、そんな願いを持つ男が、適当に呟く独り言だ。


昨年末に、川内有緒さんの『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』という本を読んだ。

この本を読み、私の芸術鑑賞に対するイメージが拡張された。一言で言えば、「芸術鑑賞に正解はない」ということが、ようやく分かった。

作品が制作された背景や、作家の生い立ち、当時の歴史背景などを学ぶことは、芸術鑑賞を豊かにする。これは間違いない。しかし、これだけが正解でもない、ということが分かったのだ。

作品の傍にある解説文を読まずとも、オーディオガイドを購入せずとも、図録を読み込まずとも、美術展は自由に楽しめる。ただ作品を見て、これは好きだな、これは嫌いだな……ただそれだけでもいいのだ。

己の感覚だけを武器に作品と対峙し、何らかのインスピレーションを感じ取る。あるいは何も感じ取らないかもしれない。芸術鑑賞はそれでいい。

2023年、私の美術展に対するスタンスは、すごくラフで、気楽なものになった。



国立西洋美術館|ピカソとその時代

とはいえ「ピカソ」とくれば、あまりに有名な画家であり、多少は勉強もしたくなる。

本名がめちゃくちゃ長いことでお馴染みのパブロ・ピカソは、1881年にスペインで生まれ、20世紀にフランスで活躍した画家だ。

作品としては、「アヴィニョンの娘たち」や「ゲルニカ」が非常に有名。様々な画風に積極的に挑戦するスタイルのピカソは、生涯で膨大な数の作品を残し、ジョルジュ・ブラックとともに、キュビズムの創始者としても知られている。


国立西洋美術館で開催されていた「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」。私は最終日に滑り込み参加した。

日曜日の美術館内は多くの来場者でごった返しており、館内の通路を人が埋め尽くして前に進めないほどだった。


「ピカソとその時代」のタイトルを冠する本展示会には、「ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」の副題がついている。

ドイツ有数の画商・美術蒐集家であったベルクグリューンは、ピカソ、マティス、クレー、ジャコメッティといった、名だたる画家たちの作品を数多く集めた。

今回は、彼のコレクションを収蔵しているベルクグリューン美術館から、日本初上陸の作品も含め、20世紀を代表する作品たちが海を渡った。


ベルクグリューンのピカソ・コレクションは、青の時代、ばら色の時代、キュビズム探究、新古典主義といった、ピカソの全時代を網羅していることで知られる。

今回の展示会のピカソ作品も、まさに「ピカソとその時代」という名前にふさわしい、錚々たるコレクションだった。


3次元のものを2次元に置き換えて描く、キュビズムという手法を探究したピカソ。それは、それまでの西洋美術の常識を根本から覆すものだった。

複数の視点を、同一平面に描くキュビズムの手法は、従来の絵画にはない、新しい奥行きと立体感を生み出すことに成功した。正直作品の良し悪しを理解するのは今の私には難しいが、その独特の「奥行き」のようなものは、いくつかの作品を観る中で、なんとなく分かってきた。

そしてピカソが描く人物画、特に女性画には、大胆な変形が加えられている。そこには、彼自身の女性観が反映されているという。

彼の愛人ドラ・マールを描いた作品は、各パーツが大きくデフォルメされ、彼女の持つ魅力が最大限に引き出されている……らしい。


本展示会は、ピカソ以外にも見所が満載だった。

まずは、音楽をテーマにした作品を多く描いたパウル・クレー。

彼の絵には独特のリズム感があり、有機的で、本当に音が奏でられているかのようだった。色鮮やかな作品が多く、観ていてとても楽しい。


アンリ・マティスは、色彩鮮やかな切り紙絵が印象的だった。

切り紙が重ね貼りされ、単純化を極めた彼の作品たちは、水彩や油彩にはない独特の表情があった。


本展示会に参加した一番の収穫は、理解できずにずっと嫌厭していた「キュビズム」に、一歩近づけたような気がすることだった。

キュビズム作品を繰り返し眺めていると、次第に奥行きや立体感が見えてくる。最初にその感覚が訪れた時は感動した。人物画のキュビズム作品は、未だ理解が難しいが……。

また個人的に、パウル・クレーに出会えたことも嬉しかった。さまざまな絵画手法やモチーフを採用していて面白いし、色彩豊かな作品群が楽しかった。

このような形で、2023年も興味のある美術展に赴いては、好き勝手に感想を呟いていく。いつか「美術鑑賞が趣味です」と言える日が来ることを目指して——。



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