突然の懇願。男としては、やはり

〇前回までのあらまし:
ビジネスパートナーから、うちの会社がダメ出しされる所からのスタートを切る事になった私

〇今回:
ハノイに辿り着くと、その日は夜。またも、ここハノイでも東屋宿泊。近くを散策してみた。目の前の湖はにほんが

*日本のODAで浄化作業が行われている湖(殆ど池に近いちっぽけなもの)

Hồ Ngọc Khánh(ゴックカイン湖)と言います。

*当時の東屋の食堂フロアから見た景色。(その当時は一旦水を全部抜いてました)

次の日早速、オフィスへ。現在の担当者とは交代になる(現在の担当者が日本に帰任)と社長からは聞かされていた。その担当者吉田さんが歓待してくれた。彼やオフィスメンバーとは一通りの挨拶を済ませ、早速各種打合せをしました。

オフィスはこんな感じ。Chua Longと言う学生街にある民家に近いビルにあるオフィスはとっても素朴な感じだった。

*私たちのオフィス

その後、ビジネスパートナーのハノイ事務所にいる代表Hồngさんへの挨拶を済ませた後に、彼は「田中さん、もし良かったら今晩飲みに行きませんか!?」と言いました。彼はあまり群れるタイプではないし、そんなに飲みに行ったりするタイプではないと分かっていたので、「えぇ、、あ、はい。ぜひ!!」と。僕から誘うつもりだったのに、力強く彼から誘ってもらったのに意外な思い半分、嬉しさ半分、そんな気持ちでいました。

定時を超えるとスタッフはみんな、「オツカレサマデシター」と、意外と流暢に口々に発し、去っていきました。

「田中さん、これ、黙っててくださいね。僕、と言うか、周りの駐在メンバー、みんな豪に入れば郷に従えでバイク乗ってます」そう言うと、僕にヘルメットを寄越した。
今だから言うけど彼はこちらでバイクを乗りこなし現地に根付いていた。(社長はバイクに乗ることを禁止していた)
クラクション音が飛び交う中、彼は精一杯大きな声で「これから行く店はー!、きのこ鍋の店なんですよー!、すごく美味しいのでお連れしたくてーー!」僕は「へぇーー、そうなんですかーー!たのしみですーー!」人生初めてのバイクニケツに四苦八苦。ホモカップルみたいだが、3万で他の方から譲り受けた彼のバイクの揺れは半端なく、ビビりまくった僕は彼にしがみついてしまっていた。

着いたお店は、駐在員にはド定番の「Ashima」さん。食べ放題と言うパターンにすると、もっと安く食べれますが、大体1人当たり60~70万ドン位のご予算で飲み食いできます。スッポンを入れると出汁の濃厚さが一気に変わるのでオススメです。

*言わずと知れた、駐在員には超有名な店

そのAshimaさんで、彼から「ベトナムあるある」分からないを聞かされ楽しく談笑していました。
すると、突然彼は姿勢を正してこう言いました。「田中さん、お願いがあります。」
突然の彼の申し出に僕もまた、礼を尽くして同じく姿勢を正し、「は、はい。どうかしましたか?」
吉田さんはこう切り出しました。「僕には好きな人がいます。ベトナム人女性です(そこまでは聞いていた)。でも、相手方のお父さんがどうしても認めてくれず、ここで帰任になったら、日本に帰ってしまったら、きっとうまくくいかなくなると思います。ここ(ハノイ)に残りたいんです。僕は。そこでお願いです。ぼくがハノイに残れる様に力を貸してくださいませんか。お願いです!」
僕が知りうる彼は極めて合理的な人物で、良くも悪くもドライ。暑苦しいのは苦手な筈の彼が珍しく、あらんばかりの「熱」を込めて頼み込んでいる。ここで何とかしてやらないと、男がすたる。僕は結婚願望は全くない男だけど、男が1人の女を、しかも国境を超えた1人の女を強く愛しているのだ。でも、社長の思いは伝えないといけない。
僕は言った。「吉田さん、相談してくれてありがとう。相談してくれたことは嬉しいですよ。でもね、知ってるかと思いますが、社長は吉田さんのベトナムでの動きを良しとは思ってません。(社長は関西人でせっかち。実は2名体制だったが1名は帰されてしまった。そして、かく言う僕の動きも良しとは思っておらず、僕も何度か帰らされることになりそうだった)
吉田さんは「分かってます。重々分かってます。給料が下がったってどうなったって構いません。実際シミュレーションもしてみました。この程度の給料になったって、何とかします。生活を切りつめてやっていきます。どうしても今帰る訳には行かないんです。お願いします。ご恩は一生忘れません。」と。
こう見えて、母親から特に、義理人情には厳しくしつけられましたので、ここで断っては男がすたる、と思い、「分かりました。結論はどうなるか分からないですが、精一杯話してみます。」
すると、吉田さんは「ありがとうございます!本当にありがとうございます!宜しくお願いします!」と。
そうは言ったって、僕には確たる策なんて無かった。さぁ、どうするべきか、、吉田さんには随分婉曲的に伝えたが、社長は猛烈に怒っていたのだ、吉田さんの動きに対して(まあ、とは言え、その後、僕も同じ状況になるのだが、(笑))でも、やるしかないな、そう心に決め、その日は別れた。

次に続く

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