最寄駅で過ごす会


先日の港区会メンバーでまた集まることになった。
我々には共通で好きなお酒の銘柄があり、通常2,3割増で売られているそれが原価で買えたのでプレゼントしてくれるということだった。ありがたい。

一升瓶を持って帰る人間の家から近い方がいいだろうということで、私の最寄駅で集合となった。港区のように洒落た店ではないものの、魚がよさそうな居酒屋をネットで見つけておいてそこに行くことにした。

仕事帰りの私の服装(紫のパンツに黄緑のベルトと靴)は、「吉良吉影みたいで良い」と評され、植物の心のような人生を望んでいるタイプの私はまんまと喜んだ。

店に入ると店主らしきお母ちゃんとバイトくんが驚いたような顔でこちらを見る。今夜はお客さん来ないかもねと話してたとこだったんですよ、やっぱりここ数年は客の入らない日も珍しくなくて、と言われて店のチョイスを間違えたかと一瞬焦ったが、カウンター前のガラスケースに並んだ新鮮な魚を見て、我々は今夜の勝利を確信した。グレートですよ、こいつはァ〜。

座敷に陣取ってビールを注文するやいやなお母ちゃんがやってきて「ピーマン食べれる?うちの畑で採れたやつなんだけど美味しいから食べていってください、魚もいいのが入ってるからカルパッチョもおすすめ。とりあえず最初は串でも持ってきましょうかね」と良いテンポ。苦手のありなしを確認してサクサクとおすすめを出してくれる店は素敵だ。

それからすぐに「ざくっと切りっぱなしのピーマンにうっすらいい塩梅の塩をかけてもの」が出てきて、それをパキッと噛んだ瞬間、我々は声が出せなくなってしまった。うまい(ゥンまああ〜いっ)。しばらく黙ってピーマンを咀嚼してこれは確実にまた来る店だねと確認しあったのち、ビールをおかわりして、後はほぼおまかせで料理を出してもらった。

とろっとろでジューシーな白ナス、こってりとさっぱりが組み合わされた刺盛り、秋茗荷とトマトの天麩羅、茹で茶豆。採れたてを極めた野菜は言わずもがな、正直どの魚屋にも負ける気がしないとお母ちゃんが豪語するだけあって魚がうまい。ピーマンもおかわりした。この店選んだの私だからねと何度も念を押した。

すりおろしのトマトがふわふわと浮かぶトマトサワー(絶品)のグラスのふちに店自慢の自家製塩を勝手に塗ってその美味しさにもんどりうったりしていると、あっという間に4時間半。一軒目で二次会ぶんまでたっぷり楽しんでひとり5千円ちょっとだった。ますますこの店が気に入ってデカい声で「また来ます!!」と叫んで店を出た。

肩に一升瓶が食い込んで痛かったけど、慣れない仕事に荒んでいた心と胃袋が幸せで満たされているのを感じながら家路についた。玄関の鍵をかけて吉良吉影のコスプレを脱いで、ざっとシャワーを浴びたのち、くつろいで熟睡した。

翌朝になって友達から昨日の料理の写真が送られてきていたことに気付いた。彼の趣味がカメラということもありかなり良い写真で、昨日は散々このインスタグラマーめと揶揄していたくせに、流石だなぁという素直な感想しか出てこず、そのままを返事にした。

いまは弊社社長(この辺りでオススメの店ありますかと聞いて微妙なセンスの店を紹介してくれた頓珍漢)にこの店のことを教えてやるかやらないかで悩んでいる。

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