先輩をダシにしようよ

学生時代のバイト先の先輩が亡くなった。
死因は大腸癌。若かったから進行も速かったんだろう。息子に先立たれたご両親や、ブラコン気味だった妹さんの気持ちを思うと心が痛む。

人づてに訃報が届いた頃にはすでに葬儀も済んでいたので、それはそれとして彼を偲ぶ会という名目で当時のメンバーで集まろうじゃないかという話になった。しんみりした会にするつもりはない。同窓会のような感覚で開催する予定だ。

そんなわけで西暦2023年のいま、私はガラケー時代の知人を呼び出す作業をしている。電話番号で勝手に登録されただけのLINEアカウントはもちろん、電子メールやショートメッセージを駆使してなんとか10名程度に呼びかけることができた。スマホの画面に所在無さげに残っていた『連絡先』アプリが輝いてみえる。ありがとう連絡先。

普段は仲のいい数名とのやりとりしかないLINE画面に見慣れないアイコンが並んでいるのも不思議だし、メールの受信にそわそわする感覚も久しぶりだ。受信があれば通知されるのはわかっているけれど、古のガラケー魂が騒いでしまって何度もフォルダを確認してしまう。「センター問い合わせ」とかあったよなぁ、やってたよなぁ、懐かしいなぁ。

数名とやりとりするなかで「バイトの昼休憩、あの店の出前とったりしてたよねー」という話題が出て、なんならそこで集まってもいいかもね、ということになった。幸い今もその店は残っているので早速電話をかけてみる。

「すみません、まだ未定なんですけど、金曜の夜に貸し切りってできますか?」と聞くと、20名以上なら可能だということだった。昔の記憶ではいつも無愛想なばあさんが電話対応していたけど、今回は聞き覚えの無い声と感じの良い対応だったので、ばあさんはきっと引退したのだろう。そもそもさすがに20名は集まらんよなと思い「じゃあ10名程度で予約をするかもしれません、決まったらまた連絡します」と言って電話を切った。

まだ既読にならないLINEもあるし、返信待ちの人も沢山いる。それでも既に何人かからは返事が来ていて、行きたいとか行けないとか内容は様々だけど、突然「○○(バイト先)で一緒に働いていた○○(私)です」なんて書き出しの怪しすぎるメールに返信してくれたことがありがたい。

こうやって皆が集まろうとしているのはひとえに先輩の人徳なんだろう。背が低くて、癖っ毛で、字が綺麗で、「今日は機嫌いいから」って言って毎日のようにアイス奢ってくれる、照れ屋で優しい人だった。もう会うつもりも無かったくせに、もう会えないとなるとやっぱり寂しい。

先輩、みんな元気そうですよ。
今度先輩をダシにしてみんなで集まります。
最期までおつかれさまでした。




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