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探せ!乾物屋さん【第5話】

健太とアキラが作った光るひじき料理の動画が予想外の大反響を呼び、SNSで瞬く間に拡散しました。
街角の小さな乾物屋「EMO乾物店」は一躍有名になりますが、その人気は思わぬ問題を引き起こします。

保健所の来襲

SNSでの大成功に、健太はこれからの希望を感じてワクワクが止まりません。
「もしかして、このままバズったらオレもYouTuberになれたりして・・?
そしたら会社辞めても食っていけるかも!?」
だって、アキラの乾物は現代にはないんだ。オンリーワンの強みを生かさない手はない!

そう思いながらEMO乾物店に立ち寄った健太は、椅子に座り、今にも倒れ込みそうなくらいに落ち込んだアキラの姿を目撃しました。
なんだか、すっかり老け込んでいる・・・?

嫌な予感しかしません。
「・・アキラ?何があったんだ?」

アキラは、俳優のように綺麗な顔が涙でぐしゃぐしゃになったまま、健太を見ました。
「健太、もうダメです。僕の夢は叶わない・・・。」

SNSで光るひじきのことを知った保健所の職員がアキラの店を訪れ、未来から持ってきた乾物を、食品としての安全性が不確かとして全て没収してしまった、と。
そりゃそうですよね、光るひじきなんて、この世界にはないんだから。
怪しいと思われて当然です。

しかし、アキラは彼の宝物を失い、その場にぽつんと立ち尽くすのでした。

「もう、売るものもありません。
未来に戻ろうにも、未来へ戻るためのブーストエネルギーの元となる食べ物がなくなってしまった以上、それもできない。

もう、僕にできることは何もなくなってしまった。

なんで考えなかったんだろう、この時代の人に、未来の食べ物の魔法を見せるのはまだ早い、って・・・。

健太のように、直感に優れている人は圧倒的に少ない、ってわかっていたのに。」

店内は静まり返ります。
アキラは未来から持ち帰った乾物を大切にしていただけに、その没収は彼にとって大きな打撃でした。
店の隅でしょんぼりと座り込むアキラの姿は、まるで未来の希望まで奪われたかのようです。

健太の決意

健太は、EMO乾物店のカウンターに腰掛け、思案にふけっていました。
始めたばかりでこれだけの反響があったんだ。きっと、応援してくれる人だってたくさんいるに違いない。
未来の食べ物を使うプランはもうできない。それは本当に残念だけど、未来の食糧危機に備えるために、できることはきっとあるはずだ。

アキラの店が直面した窮地を打開する方法を模索している最中、ひらめきが訪れます。

「アキラ、ちょっといいかな?あるアイデアがあるんだ。」

アキラは涙か鼻水でぐちゃぐちゃになったまま、健太の顔を見上げ、興味深そうに耳を傾けます。

「地元の農家や漁師を訪ねて、伝統的な方法で作られた乾物を集めてみない?それを使って、新たな料理動画を制作しようよ。」

アキラの表情には、躊躇いが見えました。
しかし、健太の目は情熱で輝いていました。

「アキラ、君が未来から持ち帰った乾物が没収されてしまったけど、僕たちにはまだできることがある。
この地で育った素晴らしい食材にだってきっと、エネルギーの高いものがあるはずなんだ。
そういう食材を見つけて、使って、人々にエネルギーの高い食べ物の大切さを伝えよう。」

よみがえるあの頃の記憶

昔、健太は田舎のおばあちゃんから聞いていた。

太陽をいっぱい浴びて、虫や風と共に育った野菜は、大雨や寒さ・暑さに負けない、強い力を持つんだよ、と。

お天道様と
風と
大地に感謝をすること

それがいただきますの意味で
それこそが、お前に力をくれるんだよ、と。

きっと、現代の食材にだって、力強いパワーを持つものがあるはずだ!
それは、おそらく、自然と共生していた時代からの伝統的な製法で作られたものの中にある。

健太の言葉に、アキラは少しずつ心を開き始めました。
「君の熱意にはいつも驚かされるよ、健太。それでは、君のプランに賭けてみようじゃないか。
どうせ、今の僕にできることは何もないんだから。なんだってチャレンジだよね!」

健太は、アキラのポジティブさに改めて感銘を受けました。
自分だったら、誰も知り合いのいない所に来て、全てを失ったら、こんなにすぐに立ち直ることはできないだろう。
アキラに不安はないのかな。
それとも、うすうす思っていたけど、アキラって、ちょっとバカなのかな・・。

健太の思いをしってか知らずか、アキラはニコニコと健太を見つめます。

もう考えるのはやめて、行動してみよう。
全ては、それからだ。

そうして二人は計画を進め始めました。

地元の農家や漁師との対話を通じて、健太は彼らの長年の知識と、食材への深い愛情に触れることになります。そして集められた乾物は、健太とアキラの手によって、新たな料理動画の星となっていくのです。

次回、二人はどのような乾物料理を世界に届けるのでしょうか。その旅はまだまだ続きます。

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