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救え!乾物屋さん【第3話】

胸が光っているうちは店の外にも出られない。
騙されたような気がして少しイラついている気持ちと、これまでに感じたことがない胸の高鳴りに戸惑いながら、健太はアキラの話を聞いてみることにしました。

アキラは「農薬を使っていない茶葉から作られた高エネルギーのお茶です」と言いながら、あたたかいお茶を出してきた。
「これを飲んだらまた何か変なことが起こるんじゃないだろうな」」といぶかしむ健太に、アキラはにっこり笑った。
「はい、これはこの時代のお店で買ったものですので。」

未来の危機と乾物の話

椅子に座ると、アキラは健太に、未来の世界について語り始めました。

「今から少し先の未来では、地球は環境悪化による大きな試練に直面しています。」

気候変動が進行し、干ばつ、洪水、極端な天候が食糧生産を大きく阻害。
これらの変化は、世界中の多くの地域で食糧危機を引き起こし、人類は飢餓という壮絶な戦いに立ち向かう。

食糧をめぐって国同士の戦争が起こったが、戦争を継続できないほどに気候変動が進行し、世界政府が発足。人類全員で厄災に取り組むことになったのだという。

こういった話は前から動画配信サイトの都市伝説でも聞いていた。だから健太は、抵抗感なく話を聞くことができた。

アキラは続けた。
「しかし、そんな危機的な時代においても、私たち人類が頼りにしたのは、実は非常にシンプルで古くからの知恵に基づくものだったんだ。
それが『乾物』さ。」

アキラの声は、遠い未来からのメッセージを伝えるかのように、重々しく響きました。

乾物は、余計なエネルギーを使わずに長期保存が可能であり、栄養価の高さを保つことができます。
特に、旬の食材を乾燥させることにより、その「高いエネルギー」—生き生きとした生命力—を一年中、人々に供給することが可能になります。
未来では、この乾物がただの保存食を超え、多くの命を救う貴重な食品へと再評価されました。
特に、日本人が古くから守ってきた乾物製造の技術と知恵は、多くの命を守ることにつながったのだという。

「未来の科学によって、食べるものが直接私たちの身体や精神にどう影響するかが明らかになったんだ。」アキラは続けます。
「旬の食べ物に含まれる栄養素が最も豊富で、身体に必要なエネルギーを最大限に供給してくれること、そして乾物がそのエネルギーを保存し続けることができることが科学的に証明されたんだよ。」

この発見は、乾物をめぐる人々の認識を根本から変えました。

かつては見過ごされがちだった乾物の価値が、未来では食糧危機の解決策として、また健康的な生活を送る上での基本として、改めて高く評価されるようになるのです。

乾物の魔法

アキラは続けます。
「未来では、乾物が持つエネルギーが魔法のように人々の生活を支えています。
例えば、"光るひじき"は人々の心を明るくし、"時を超える乾燥キノコ"は記憶を鮮明にします。
しかし、この時代にそれを証明するのは難しい...。」

アキラの話を聞いた健太は、ワクワクしている自分に気がつきました。
光るひじきだって?そんなものは見たことがない。
ひじきの煮物は食べたことがあるけど、おばあちゃんの食べ物って感じがして、ワクワクはしなかった。
それなのに、アキラの話はどうしてこんなに楽しいんだろう。

「もしかしたら、この乾物やさんを通じて、人々に自分と同じようなワクワクを届けることができるのかもしれない。
そして、乾物の大切さを伝えることができたなら、未来を変える一歩になるのだとしたら...。」

健太はアキラと一緒に、乾物の素晴らしさと、それが未来にもたらす可能性を広めるためのプランを練り始めました。

まずは、光るひじきを使った料理を作ってみることにしました。

未来の食材を使った料理の様子を動画SNSで配信してみるのはどうか、という作戦なのです。
ところが・・・。

次回、健太とアキラの作戦がどのような結果をもたらすのか、お楽しみに!


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