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はじめまして!乾物屋さん【第1話】

時空を超えた乾物屋との出会い

佐藤健太は28歳のごく普通のサラリーマン。
とある生命保険会社の営業マンをしています。

日々、お客様の未来への不安に寄り添いながら、病気で保険に加入できない人々の無念を肌で感じています。
しかし、人生の鉄則―健康な時に保険に加入すべきという説得に、多くは耳を貸さしません。健康ならば、病気の影は遠いと思いがちだからです。

その通りだとも思います。
多少、不健康な生活をしたって、別に体は動くのだから。

それは、自分だって同じです。
彼の生活は、オフィスと自宅、そしてコンビニの三点セットで成り立っていました。
日々の忙しさに追われ、食べることは生きるための”義務”のようなもの。動き続けるためのエネルギー源として、空腹感を感じるゆとりもなく、胃を満たすために行う活動の一つ。

わかっている。
野菜や海藻を食べた方が健康にいい。

けれど、そんなことに気を使う時間があったら、一件でも多く契約をもぎ取りたい。
そう、契約が全て。
営業成績に余裕が出たら、有給を取って温泉に行って、美味しいご馳走をたくさん食べるんだ。

そんな自分の心に、ふとした疑問が生まれます。
「本当にこんな毎日でいいのだろうか?」
しかし、答える暇もなく、また日常が呑み込んでいきます。

未来から来た乾物屋

そんなある日の帰宅途中、見つけた店の外観は何とも言えない懐かしさと、未来的な雰囲気が混在していました。
「高エネルギー乾物屋・・・?」
怪しすぎる店名と懐かしさを感じる店構え。こんな店、あったっけ。
行き交う人も、チラッと店を見るだけで通り過ぎて行きます。

普段なら、きっと、素通りしていただろう。
けれど、今日は。

今日、会社の上司が入院した。働きすぎとストレスだそうだ。
会議のたびにパワフルだった尊敬する上司が、枯れた木のようになっていた。
いつも自分を明るく励ましてくれた上司のエネルギーが、枯れたようだった。

このまま働いていたら、いつか自分も、ああいうふうになってしまうのかな。
漠然とした不安を感じた日だったから、普段なら絶対にしない行動をしたのかもしれない。

「高エネルギー・・・。食べたら俺にも、エネルギーが湧いてくるのかな。」
好奇心に駆られた健太は、躊躇いながらも店の扉を開けました。

店内に一歩足を踏み入れると、目に飛び込んできたのは、ただの乾物屋とは思えない光景でした。

健太がイメージしていた乾物屋は、どれも「枯れたような」干からびた商品ばかり。
しかしこの店の商品は、確かに干し椎茸や海苔など、扱っている商品はいわゆる乾物なのですが、なぜか生き生きとしているように見えるのです。

商品ラベルも変わっています。
「光るひじき」「時を超える乾燥キノコ」など、まるで未来から来たかのような奇妙な商品が並んでいます。
空間全体が不思議なエネルギーで満ちていました。

「え・・・。なんだこれ。食べ物が、光っている・・?」

その時、店の奥から店員が現れました。
ひげが長い仙人のようなおじいちゃんか、はたまたいかにもぼったくりそうなガタイのいいやばそうなお兄ちゃんが出てくるか。

そう思って身構えていた健太は驚きました。まるで俳優のようなスラッとしたイケメンが出てきたからです。
変な人が出てきたらすぐに逃げようと思っていたのに、あまりのかっこよさと魅力的な瞳の美しさに、健太は思わず見惚れてしまいました。

「いらっしゃいませ〜!ああ、やっとお客様が来てくれた!もうダメかと思ってたんですよ〜来てくれて本当にありがとうございます!」

「・・・え?」

「申し遅れました、私、この店の店長をしていますアキラと申します。今から150年後の未来からやってまいりました!」

ペラペラと早口で喋りながら近寄ってきたそのイケメン店員は、健太の手をぎゅっと握って、初対面の健太に向かってこう言いました。
「私を、助けてください!」

アキラの涙交じりの美しい目で見つめられた健太は、違う意味で逃げ出したくなりました。
こいつ、かなりやべー奴かも・・・?

次回、健太の行動をお楽しみに!

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