むかしのはなし

私のママは魔法を使う。姉ちゃんも使ってた。
私は人間だから魔法は使えない。
というか使えなくて当たり前なのだ。

魔法といっても瞬間移動とかテレパシーとかそういうすごいやつじゃない。すごく役に立たないし料理をするときにしか発揮されない。

ママはご飯をたちまちゲテモノにする魔法を使う。
野菜ジュースで煮込んだ甘酸っぱいカレーとか。
サンマの生臭さ全開のトマト煮込みとか。
焦げ臭くてもはや何か分からないシチューとか。

創作料理の限度を超えて、もう人間の食べ物じゃなくなっている。やっぱりこの人は魔女なのか。

姉ちゃんはご飯を無味に変える魔法を使う。
バレンタインのマフィンは小麦の味しかしない。
野菜炒めはもう無味無臭だった。
卵焼きもチャーハンもほんのり卵の味がしただけ。

見た目はすごく美味しそうなのに。素材の味すら消す魔法なんて何の役に立つのか。毒でも盛るのか。

ただの料理が下手な人は大抵、手順が違うとか、分量が適当すぎるとか、火加減がおかしいとか失敗する明確な理由があると思う。

けれどママも姉ちゃんも手際は良いし、調味料の分量も私が知る限りは普通だ。手順も合っている。

なのに出来上がるのはゲテモノと無味無臭の可哀想なご飯たち。もうご飯なのかもわからない。
お腹を壊す事はほぼないし、お腹は膨れるけれど、私の舌がいつも救難信号を送ってくる。

おかげで私はそれなりに料理が上手くなった。
良いことなのだろうか。複雑だ。

おばあちゃんのご飯は美味しいのに何故だろうか。
未だにわからない。

魔法使いにはとっとと魔界に帰っていただきたい。
お盆だしちょうど良いんじゃないのか。
魔界にお盆が関係あるのかは知らないけど。

オチが迷子なので捜索願を出しておく。
…語彙力鍛えます。

以上、お盆で思い出した魔女のはなしでした。笑

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