伊織

ポップカルチャーは衰退している

伊織

ポップカルチャーは衰退している

最近の記事

デルフィニウム

さようなら。 なーんて。 結局まだあたしは生きてんだよな。 そんなもんなんだよな。きっと。 人生なんてさ。 死ぬ勇気すらねぇことなんてずっと知ってたんだよ。それでも最後くらいきれいなこと言って終わりたかったんだよ。 でもまだ泣いて酒飲んでちょっと笑って、この汚い部屋でまだ息してんだよ。 あたしの人生の光たちがまだ笑ってるから。  まだ死ねねぇよって笑って電話をくれるから。 まだ。まだ。もうちょっと。 そうやって助けられてばっかりで、そうやって生きてきた。これまでも。

    • 死にたい、が死のう、になった。 まだ大丈夫、がもういいや、になった。 何度この部屋を片付けてもまたすぐに散らかる。 何度身体を売ってもお金はずっとない。 何度嘘をついてもあたしが変わることはない。 何度逃げても、逃げても、逃げても、また逃げる。 もう回収不可能なんじゃないか。 まだ若いんだから。まだまだこれから。 わかってんだよ。 でもさ、もう頑張る気力なんてないんだよ。 愛されてないわけじゃない。 孤独でもない。 幸せだしちゃんと笑えてる。 それでも、もういいんだよ。

      • こんな夜更けは

        初めて彼氏と喧嘩をした。 喧嘩って言えるかどうかもわからない。 ただ、別に誰も悪くない事が、誰にも怒りをぶつけられない事が、彼には耐えきれなかったみたいで、あたしには怒ってないなんて言いながらあたしが一番恐れている態度と言葉をあたしに向けた。 それに自分でとても落ち込んで反省しているみたいで、クリスマスまで会わないと言われた。 自分の気持ちに整理をつける期間だって。 同時にそれはあたしにも同じ意味を持つ時間だと思った。 考えだしたら泣いちゃいそうになって喉の奥がぎゅっとなるく

        • おまじない

          先日、またひとつ歳を取りました。 この頃なんだか疲れてしまって、スイッチがぱちんと切れたみたいに動けなくなって、働くのも遊ぶのも億劫になってしまって、しばらくお休みしていました。 何度も何度も行こうと思って行けなかったネイルも美容室も誕生日の前日にやっと行けました。タトゥーは結局行けなかったけれど。 初めてこんなに長くてキラキラでゴツゴツしたネイルをしました。きれいな緑色で、柄にもなくリボンやハートが沢山で、とっても可愛くて不便で愛おしい。 思ったより赤くならなかった髪も、陽

        デルフィニウム

          神隠し

          死ぬな。生きてくれ。 あたしも。あたしの大切なあなたたちも。 できれば健康で。病むことなく。 健やかに笑って美味しいものを食べて適当にお酒を飲んだり遊んだりしながら一緒に生きていてほしい。 つい昨日会ってたじゃないか。まだ半日くらいしか経っていないよ。あんなに楽しそうにはしゃいでたじゃん。やめてよ。あんたいつも楽しそうに酒飲んで寝ずに遊んで元気をこれでもかってくらい振りまいてくれてたじゃん。どれだけ遊んでも仕事飛ばすこともなかったじゃん。遊ぶために働いてんだからってギリギリま

          アイビー

          恋人ができてそろそろ一ヶ月。 好きなときに好きだと言えて、会いたいときに会いたいと言える相手がいる生活っていいものですね。 休みのたびに家に来てくれて、一緒に馬鹿みたいな話をして笑い転げて、夕方まで寝て、ご飯を食べてお酒を飲んで一緒にあたしの家に帰る。 おしゃれなデートなんてしたことないけど、サプライズも色気もないけど、とっても幸せ。 俺はマットレスみたいってほんとだね。 あたしがすっぴんでも部屋が散らかってても、落ち込んでも失敗しててもどこにいようともあたしをちゃんとずっと

          アイビー

          ほろよい

          今日終わった場所。今日初めてのこと。今日あたしが発した言葉。たった1日でこんなにたくさんの出来事があるなんて。 永遠なんてない。心配しなくても終わりは来る。どれだけ望んでもずっと続いてはくれない。 だけど、どうか、あたしを生かしてくれているあなたたちの身体と心と生活ができるだけ長い間健康でありますように。 そりゃ生きてるんだから酔っ払って転んで血が出たり、誰かと喧嘩して傷付いたり、病気をすることがあるかもしれないけれど。 それでも、自分で自分の終わりを決めてしまうことはしない

          ほろよい

          ふたつの星

          恋って面倒ですね。 生きるって複雑ですね。 嫌いなあの子が大切な友達になったり苦手な店員さんが仲のいいお客さんになったりする。 好きで好きでたまらない彼からのたった一言に泣いたり笑ったり悲しくなったりしてる。 大好きも愛してるも惜しみなくその愛しい声で届けてくれる彼からのお休みのあとに大好きの一言がついていない日ってだけでこんな文章を書き残しちゃうあたしが一番面倒ですね。 あたしが若くて無知で馬鹿な女の子の頃に起こったあの憎たらしい事件のせいで子供が産めなくなったことを彼が知

          ふたつの星

          マットレス

          好きな人が恋人になりました。 夢みたいだけど夢じゃないんだ。 やっと手に入れたあたしだけのお城みたいなワンルームのまだシーツも付いてないマットレスに好きな人が寝ている。 目が覚めたら横にいて、その日一番最初の声でおはようって言ってくれる。 あたしが夜中の海で馬鹿みたいにはしゃいでびしょ濡れで帰ってくるのを家の前で待っててくれる。 休みの日は一日じゅうぐうたらしてるあたしを外に誘い出して素敵なお店を見つけさせてくれる。 ふたりしてお酒が好きなもんだから外でたくさん飲んじゃってふ

          マットレス

          Moonlight

          また好きな人ができた。 本当にあたしってやつは何度失恋したって懲りないんだからしょうがないやつだ。 だけど好きだって自覚しちまったんだから仕方ないじゃないか。 悪口のセンスがずば抜けて良くて決してかっこよくはないけど愛嬌のあるあいつが好きだって気づいちまったんだ。 彼女ができたんだって言われてショックを受けたあの時から、いやきっとそれより前からあたしは恋してたんだろう。 彼女の不満をため息まじりに話すあいつにそんなに嫌なら別れちまえよって言ったのは決して意地悪じゃない。 彼女

          あんたもね

          明けない夜はない。止まない雨もない。怪我だっていつかは治る。でも今あたしは傷ついている。 それがどうしようもなく痛くて辛くて悲しい。 捻挫した右足が歩くたびにズキズキと音を立てるように痛んで、喉の奥がぐっと詰まって涙が出そうになるのをこらえている。 働いて稼いで病気になって、つまんないことで散財してお金なくなっちゃったなんて惨めな生き方してる。 あたしはちゃんと可愛いし愛される価値がある。 あたしを好きじゃない人に割く時間なんてない。 胸を張って頑張ってるって言えるくらい努力

          あんたもね

          強火で炒めて

          誰のことも好きじゃない。だからみんな好き。 無愛想で冷たくて気分屋で、好きって言ったら大好きって返してくれるあなたのことも。 あんまり笑わないけど愛に溢れてる優しくて一途で不器用なあなたも。 好きなんて口に出さないけどいつも一緒に帰りたがる可愛らしいあなたも。 俺はやめとけって言うくせにずっとあたしに構ってる甘くないバニラのあなたも。 だーいすきよ。 ばかみたいで。 みんなにドキドキしちゃうの。 嫌なところばっかり探しちゃうの。 モテてるあたしが好きなの。 ちやほやされたかっ

          強火で炒めて

          黄色い柚子胡椒

          人と付き合うってどうやってするんだっけね。 そんなことすら忘れちゃうくらい恋愛なんてしてなかったしそもそもまともな恋愛経験もなかったような気がする。 でもあたしは今あなたが好きだ。 せっかく顔がいいのに自分の見た目に無頓着で何よりも仕事を優先するとこも嫌いじゃないよ。 もう少し見た目に気を使えばいいのにとは思うけどね。 クールで無頓着な男を気取ってるつもりかもしれないけどあたしを好きなのがバレバレなのも可愛らしいね。 なにかあればすぐあたしのこと気にかけてるのも来月ご飯行くっ

          黄色い柚子胡椒

          2023.5.1

          悲しいな。 こんなにもきれいな景色が目の前にあるのに小さな鉄の塊から発する光ばかり見てる。 大好きだった夕暮れを見逃し続けている。 黄色とオレンジと青が混ざった空じゃなくてブルーライトばかり目に入れてる。 大好きだった本にも集中できなくて文字が目に入れたそばから抜けていっちゃう。 あんなに面白かったものが楽しめなくなってる自分が悲しくて寂しい。 相変わらず飯と煙草と酒の量は減らないし金は増えない。 財布にはもう100円もない。 こんなに働いてるのに家賃どころか次のタバコも買え

          2023.5.1

          n日目

          毎日なんて書けるわけがなかった。 それでもあたしの生活は続いている。 これから先もきっと続いていく。 死ぬかもしれない、と思ったら色んなことが惜しくなって前より少し生きやすくなった。 相変わらず酒ばっかり飲んで、仕事ばっかりしてる。恋人なんてできるわけがない。 いいな、と思った彼にはやめとけ、って言われちまったけど付き合えたところで恋愛してる暇がないくらいには忙しいんだからこれでいい。 たまに顔を見に行くくらいでちょうどいい。 そう思いたい。 まだ二十歳のあたしが今日からママ

          1日目

          3月16日 今日からここはあたしの日記帳になる。 いつまで続くかわからないけどとりあえず書いてみたら何か変わるかもしれない。 先週は酒を飲みすぎた。 立ちくらみが酷くて寝るのも起きるのも辛い。 飯を食わない日もある。 タバコの本数は増え続けてる。 彼氏は未だにいない。 そろそろ一年かしら。 ここへ来てから一度もブスだなんて言われなくなって可愛いね素敵だね好きだよってあまりにも沢山の人に褒められるもんだから本当に自分がモデルかなんかになったような気でいる。 この世のすべての人が