AP通信のファクトチェックが、ツイッター民によってファクトチェックされた事件

アメリカのニュースを追っている人ならば、トランプ政権がメキシコとの国境に壁を建設する予算をめぐって政府シャットダウンに突入してそろそろ3週間目に入ろうとしているのをご存知かと思います。

流れを一応追っておくと、もともと政府シャットダウンを回避するための法案は上院で満場一致で可決されてトランプ大統領はそれをサインするだけでよいところまでいっていたのですが、そのタイミングで保守メディアからいっせいに「公約の壁はどうした!」とツッコミが入ったことで大統領は態度を一転、壁の建設に必要な57億ドルが盛り込まれない限り法案にはサインしないと対決姿勢をつよめていました。

そこで国民の危機感を煽るためにトランプ大統領は昨日、主要メディアにむかって特別放送をおこない、壁の建設への理解を求めました。

問題は、この演説自体にも多くの嘘や、ミスリーディングな主張が盛り込まれていたため、メディアは大統領の言葉を伝えるという義務を果たしつつ、それをファクトチェックするという作業に追われました。

事件がおこったのはそうしたファクトチェックのうちの一つ、AP通信がツイッターで行っていた連続ツイートでの話です。

ぬるいファクトチェックに一斉に異議を唱える人々が集結

トランプ大統領の嘘の説明のなかには「メキシコ国境から麻薬が流入しているので壁が必要だ!」(実際には密輸の大半は正規の通関ポイントを経由している)といったものや「テロリストが増えている!」(実際には移民は2000年以来激減している)といったものがあったのですが、AP Politicsのアカウントはそうした言葉の一つ一つをチェックしていました。

そこで飛び出てきたのがこちらのツイートです。

APファクトチェック: 民主党は政府シャットダウンの理由をトランプのせいにしているが、タンゴを踊るには二人必要だ。予算の停滞はトランプが国境の壁のために57億ドルを要求していることが理由だが、もう片方の理由は民主党がそれを承認しようとしないからだ。

注意深く読むと、これがファクトチェックではなく「どっちもどっち」という中間意見を述べたものであることがわかります。当然、それに対してツイッター上で非常に大きな抗議が生まれたわけです。

「殺人事件があったとして、ナイフをもっていた側が悪いものの、被害者もその場にいたのが悪いなどとはいわないだろう!」

「APファクトチェックによれば、タイタニック号の設計者たちは乗客が溺れたことに対して不満を爆発させているということになるだろう」

といったものです。APはおそらく「政府シャットダウンはトランプ政権と民主党の意見の不一致によるもの」という説明をしたかったのだと推測できますが、それは「両者の責任は同程度」ということと同義ではありません。

そして「ファクト」をチェックしないファクトチェックをうっかり流してしまったために、すばやくツイッターユーザーたちがそれに気づいて抗議したという構図ですね。

意見に大きな隔たりがあるのは仕方がないとして、事実に基づいた議論ができなければ民主主義の根幹は揺らぎます。そしてトランプ政権の特徴は何千もの嘘の声明を混ぜることで事実をうやむやにする手法です。

だからこそ、事実と真実の番人としてのメディアの責任は大きいわけですが、それだって完璧というわけにはいきません。そして間違いをおかしたときには、すみやかにそれを指摘する声がツイッター上にあふれるというのも、これはこれで健全だといえるでしょう。

日本にも、ファクトチェックを標榜するメディアは複数あります。でも私たちは彼らのファクトをチェックできているでしょうか? 「ファクトチェック」のうらにある見えない意志や動機を見逃さずに注意できているでしょうか?


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