創作》僕は自分で自分を殺しました。

ある朝目が覚めたら、僕は透明な箱の中に居た。

正確に言うと、誰からも僕が分からない状態だったんだ。

誰も気付かない。
誰も僕が居る事に気付かない。

話しかけても、誰も気付かないんだ。
まるで、周りから僕の存在を見えなくする、箱に入ってるみたいな。

透明人間にでもなった気分。

でも、僕は自分の手が見えるし、鏡に自分の顔も映った。
だから透明人間になったわけじゃない。

あぁ、そうか、僕は自分で自分を殺したんだ。

20XX年1月15日に僕は確かに、大量の睡眠薬を飲んで眠った。
あぁ、僕は未練を残してこの世に止まる、幽霊ってやつか。

はは、それはいい。
未練ならいくらもある。

高校時代、僕をネクラだなんだと詰っていたアイツ。
大学時代、僕に散々たかって、金を要求したアイツ。
仕事場でも、クズだのノロマだの罵っていたアイツ。

せっかくだ、殺してしまおう。

きっと、僕が今こうして、幽霊と言う透明な箱に入っているのは、神様が僕に復讐を許しているからに違いない。
せっかく殺しに行くのだから、死神のような真っ黒な衣装で参上してやろう。

自室の箪笥から、黒いズボンに黒いシャツを引っぱりだし、ついでに黒いカーテンを引きちぎってマントにした。
力に自信がないので、金属バットを持つ事にした。
念のため、反対の手に包丁も握った。

よし、コレなら勝てる。

カーテンのマントを翻し、アイツの家に向かう。

あぁ、きっと、アイツは驚愕の表情を浮かべるだろうなぁ。
くくくっ。
愉しみだ。。。

---数分後

全身黒尽くめの金属バットを持った男が、路上で職務質問されていた。

original post:http://novel.ark-under.net/short/ss/76


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