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映画『MONOS 猿と呼ばれし者たち』(2019)の感想

映画『MONOS 猿と呼ばれし者たち』を映画館で観てきた。2019年に公開された作品で、監督はアレハンドロ・ランデス、コロンビアの内戦のゲリラ部隊の少年少女たちの物語である。言語はスペイン語が基本で、誘拐されてきたアメリカ人女性が少し英語を話していた。

博士と呼ばれるアメリカの白人女性を監禁・監視している理由は、はっきりとはわからない。それが彼らの任務となっている。人質と呼んでいるので、身代金目的なのだとは思うが、彼女がどういった博士であるのかも説明がない。

借りてきた乳牛の牛を誤って銃で撃ち殺してしまうところから、ゲリラ部隊内のパワーバランスが変わり、緊張が生まれる。

直接的な暴力的なシーンはそれほど多くはないのだが、痛々しい場面が多い。そして、密林(自然)は容赦なく、厳しい。川の濁流に流される場面は圧巻だった。

ゲリラ部隊が嫌になり、ランボーという少女は逃げ出すのだが、どこまでも追いかけられる。そこが、ホラーであり、サスペンスである。超怖かった。

結局、ヤクザは新人をスカウトするより、組から足を洗おうとする人間を戻そうとするし、DV夫も新しい女性ではなく妻を連れ戻そうとする。新しい人間を洗脳するには時間がかかるうえに、成功するとは限らない。ゲリラ部隊もそれは同じ。人間ってのは、本当に面倒くさがりなのだと思う。あと裏切り者に制裁を加えたいというのもある。

博士と呼ばれるアメリカ人女性も、たくましく、何度も脱走を試み、逃げることに成功する。

公式サイトにある朝日新聞の元中南米特派員の田村剛さんのコラムを読むと、コロンビアの内情が、おぼろげながら理解できる。内戦というやり方は、やはり得策ではない、と思わされた。

ただ、内戦で生じた分断はそう簡単には埋まらなかった。和平合意の署名式典からわずか6日後、やっと結ばれた和平合意が国民投票で否決されてしまったことが、溝の深さを何よりも物語っていた。背景にあったのは「ゲリラを許すな」「ゲリラへの対応が甘すぎる」といった反対派の声だった。最終的には、合意内容の一部を修正した新合意が議会で承認され、和平プロセスは何とかスタートしたものの、反対派の声は現在も和平の進展に影を落とし続けている。映画「MONOS」はまさに、そんなコロンビアの歴史的局面につくられた作品である。

http://www.zaziefilms.com/monos/background/index.html

法治国家で暮らしているのだから、きちんと法律を勉強して、最悪の事態は避けたい、と心底思った。結局、ゲリラとかセクトの行きつく先は、内ゲバで外部に助けを求めるはめになる。やはり、面倒だろうが何だろうが、対話を続けていくしかないのだと思う。もちろん、相手を席に座らせること自体ができなかったりもするのだけれど。

中南米と一括りにしてしまいがちだが、ちゃんと勉強しなきゃとも思った。

チップをいただけたら、さらに頑張れそうな気がします(笑)とはいえ、読んでいただけるだけで、ありがたいです。またのご来店をお待ちしております!