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#映画感想文262『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』(2023)

映画『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE(原題:Mission: Impossible - Dead Reckoning Part One)』(2023)を映画館で観てきた。

監督はクリストファー・マッカリー、脚本はクリストファー・マッカリー、エリック・ジェンドレセン、出演はトム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、ビング・レイムス、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、バネッサ・カービー、ポム・クレメンティエフ。

2023年製作、164分、アメリカ映画。

『ミッション:インポッシブル』シリーズの第7作で、お馴染みのイーサン・ハントが大活躍。

あらすじはGQの記事から引用。

 『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』の冒頭で、セヴァストポリというロシアの実験的潜水艦が登場する。潜水艦が最新技術の実験を行っていたところ、突如現れた敵艦から魚雷攻撃を受ける。混乱のなか、セヴァストポリのキャプテンも攻撃を命じるが、敵潜水艦はレーダー上から消え、魚雷も姿を消す。レーダーなどの搭載機器のエラーだとロシア側が一安心した瞬間、自分たちが攻撃のために放った魚雷がUターンして戻ってくる。魚雷はセヴァストポリに命中し、乗組員もろとも破壊される。
 その後、トップ頭脳集団の会議シーンでは、潜水艦の爆発は「エンティティ」と呼ばれるAI(人工知能)によって画策されたものであり、エンティティは爆破された潜水艦とともに海底に沈んでいることが判明。元々は、指紋を残さずに敵国に侵入するために開発されたエンティティが制御不能に陥り、知覚を身につけ、インターネットの世界へと逃げ込んだというのだ。今や、それは世界銀行や世界的防衛インフラを含むあちこちに入り込み、全人類が危険に晒される可能性がある。それを止めることができるのはあの男だけ。イーサン・ハント、いや、トム・クルーズだ。

GQ『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新作の悪役は、AIだ!』

冒頭の「このロシア語訛りらしき英語は何なのだろう。ロシア語にしろよ」と思っていると、追跡型の魚雷が戻ってきてしまい、ロシアの戦艦が大破してしまう。それをやってのけたAIが海底に沈み、その精密機器を開けるための鍵があるらしく、それを探すのが今回のイーサン・ハント(トム・クルーズ)のミッションである。

でも、ミッションなんかは、実際のところはどうでもいいこと。脚本はトム・クルーズのアクションとアクションをつなげるための、梯子に過ぎない。

今回はちょいと趣向を変えた映画感想文をお送りしたい。


ガラガラガラ。

「へい、らっしゃい」
「おっ、大将、今日も肌艶がいいじゃねえか。よっ、色男!」
「へへ、おかげさまで」
「いや、本当、そこら中、値上げの嵐だろ。でもよ、大将の新作があると聞いたら、いてもたってもいられなくなって、来ちまったんだよ」
「あっしは旦那の期待は裏切りませんよ」
「だろうな。まあ、野暮で無粋ではあるってえことはわかってるんだが、ちょっと質問させてもらってもいいかな」
「お安い御用で。何なりと」
「今回のやつにはあれだ、カーチェイスとかはあんのかい?」
「ええ、もちろん、ふんだんに」
「そうかい。あと、おいらは『トムとジェリー』とか『ロードランナー』が好きなんだよ。そうそう、『キャッチミーイフユーキャン』とかな。いわゆる、追いかけっこものだな。ああういうのはあんのかい?」
「もちろん、全編通してありますぜ。変装やらなりすましもあります。旦那は『アラビアのロレンス』も好きだったでしょう。砂漠も出てきます。ご安心を」
「おお、そりゃ最高だな。あと、銃撃戦とかはどうだい?」
「銃だけじゃ、満足しないお客もいるもんで。ナイフや剣のサシのちゃんばらもございますし、殴り合いもございます」
「そりゃいい。あと何だ。おいらはよ、友情ものに弱いだよ。そこらへんはどうなんだい?」
「もちろん、バディ感も存分に味わえます。おっちょこちょいで愛嬌があって、肩の力を抜けるくだりもありますぜ」
「ふんふん。あと、べっぴんさんに何度も騙される、まぬけな男が好きなんだが…」
「旦那、手ぬかりはございません」
「おお、やっぱり、そうか。大将のサービス精神には恐れ入ったよ。名所旧跡なんかも見られんのかい?」
「旦那はさすが舌が肥えていらっしゃる。ええ、もちろん、コロッセオを背景にした市街地が楽しめますし、ヴェニスの水上ボートなんかもご用意がございます」
「そりゃ、最高だ。大将、実は、おいらは鉄道密室ものが好きでね。『オリエント急行殺人事件』とか『新感染』とか『ブレットトレイン』とか、そういう要素はどうなんだい?」
「旦那はお目が高い。もちろん、空港内を走り回ったり、バイク、車とくれば、最後は鉄道ですよ。しかも、ブレーキの壊された暴走鉄道ですぜ」
「そりゃ、すごい! あと、これは怖いもの見たさなんだけどよ、崖からバイクで飛び降りたり、高速の電車に飛び移ったり、岩壁にしがみついたり、宙吊りになったり、パラグライダーで山から降りるとか、ピンチの波状攻撃的な描写はあんのかい?」
「旦那、あっしが、旦那をがっかりさせたことがありますか」
「ははは。ねえんだよ。そこが大将のすごいところだ。最近のかわら版ではよ、生成AIとか、アメリカのGAFAMとか中国のBATHが庶民の個人情報抜いてるっていうじゃねえか。顔認証でどこにも逃げられねえ。そういうテクノロジーの話はあんのかい?」
「旦那の鋭さにはかないませんね。ここだけの話、今回の敵は人工知能なんですよ」
「そりゃ、たまげるわな。見えない敵と闘うのか。そいつらとどうやって闘うんだい?」
「…ええと、それは後半で明らかになるんですよ」
「ふむふむ。時間はどれぐらいなんだい?」
「2時間24分です」
「よっし、わかった! 注文するよ。念のため、言っておくがな、これだけのボリュームで損は客にさせねえっていう大将の心意気をおいらは買うんだよ。大将、おまえは一流で最高の職人だよ」
「旦那の喜びが何よりの褒美ですよ。毎度あり!」


とまあ、こんな感じの映画だった。観客にサービス過剰なぐらいにサービスしてくれている。ある意味、『君たちはどう生きるか』と同じで、物語としての整合性とかはそんなに気にして見る必要はないのだと思う。本作はトムのアクションシーンを楽しむものなのだから。

ただ、エンタメに徹しているのは、宮崎駿との大きな違いではある。アクションとは何ぞやということを考え抜いた映画が本作であり、映画的なイマジネーションとは何かを考え尽くした映画が『君たちはどう生きるか』なので、どちらにも共通しているのは、あふれんばかりの映画愛であると思う。映画という枠組みを最大限生かそうという執念がある。

そんで、ちょっと驚いたのは、マット・デイモンですら、トム・クルーズのスター性は驚異的で「彼がいるとほかの人が消えてしまう」と表現していることだ。そして、トムはすさまじいスタントを決行するため「危ないからできない」と真っ当な意見を言った安全管理担当者をクビにしたという逸話まであるらしい。

トム・クルーズは1962年7月3日生まれなので、すでに61歳。還暦って何なのだろう、と思わされる。とはいえ、トムの顔には皺もあるし、ちょっと髪の艶なんかは落ちているような感じもする。整形やヒアルロン酸注射とかをしている感じはないので、美貌の追求はしていないのだと思われる。老いを受け容れつつ、自らの最高値を更新し続けようという様が何より尊い。

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