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#映画感想文254『アシスタント』(2019)

映画『アシスタント(原題:The Assistant)』(2019)を映画館で観てきた。

監督・脚本はキティ・グリーン、出演はジュリア・ガーナー、マシュー・マクファディン。

2019年製作、87分、アメリカ映画。

ジェーン(ジュリア・ガーナー)は、ノースウェスタン大学を卒業し、映画会社の会長アシスタントとして働いている。ジェーンはいわゆる雑用係で、下っ端の存在だ。朝一番に出社して、一番最後に会社を出る。コーンフレークを給湯室でかっこんで、誰かの食べ残しのドーナツを口にくわえて、会議室のごみの片付けをしたりしている。

若い女性というだけで、一段低く見られる。ベテランスタッフらしき女性は何も言わずにコーヒーカップを流しの横に置いていく。ジェーンに「洗え」と言わんばかりに。仕事の実績もない新人女優が毛皮のマフラーを彼女に投げるようにして渡す。会長の子どもたちの面倒を見させられ、奥さんの愚痴の電話がかかってきたりする。会長のご機嫌を損ねたら、速攻で謝罪メールを送る。「あなたを二度と失望させません。しくじったにも関わらず、チャンスをくださり感謝しています」と。ジェーンは二回も謝罪メールをしていた。会長からは「君は優秀だから期待しているんだ」とアメのメールが送られてくる。人心掌握術には長けているのだろう。

ジェーンは疲労困憊で父親の誕生日すら忘れてしまうのだが、のっぴきならない事件に遭遇する。新しくアシスタントとして雇われたアイダホ出身の元ウェイトレスの女の子が、会社近くのマークホテルに住むことになる。彼女がホテルにいる時間と会長が不在の時間が一致している。これは看過できないとジェーンが人事部のようなところにその件を相談すると「君は新しいアシスタントに嫉妬しているんじゃないか」と言われてしまう。

いやいや、そうじゃねえよ。田舎の娘を都会に連れ出して、仕事を餌に性的搾取するって犯罪じゃんか、企業倫理どうなってんだよ、と彼女は言いたかったはずなのだが、的外れのことを指摘される。そして、「このことは黙っててやるから、せっかくのチャンスをふいにするな。有名大学を出ただけの職歴もスキルもない君を雇ってやっているんだからありがたく思え」と説教される。自分のデスクに戻ると、激おこの会長からの電話が入るではないか。黙っていてやるって嘘だったのか。このクズ野郎!

名もない仕事はこの世にあふれていて、そのような仕事に従事している人は少なくない。されど報われず。深夜にオフィスを出て、ジェーンはマフィンを食べながら、会長室の窓を見上げ、アイダホ出身の女の子が会長を利用してのしあがれるのかを思案し、うんざりしながら家路につく。

ジュリア・ガーナーの能面のようでいて、ときどき見せる不安の表情にこちらも苦しくなる作品だった。

(それにしても、日本公開が本国から4年後というのは、時間がかかりすぎではなかろうか。)

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