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スローマン、ファーンバック『知ってるつもり 無知の科学』の読書感想文

スティーブン・スローマン 、フィリップ・ファーンバック『知ってるつもり 無知の科学』を読んだ。単行本は、2018年に早川書房より出版されている。

この本を読んで「なるほど」と思ったのは、人類は何も知らない。無知であることに無自覚で生きている。わたしたちは「知識」を外部、ほかの人々に委ねている、という点である。コミュニティの中で知識は分散されるのでなく、共有されている。これは、当たり前のことなのだが、いざ指摘されると、すごいことだと思った。

この本はパンデミック前に出版されたものであるが、風疹などのワクチンを打たない、打ちたくないという反ワクチン派も登場する。著者は、反ワクチン派に情報を提供しても、打つことを選択する人は増えなかった、という研究結果を紹介している。つまり、無知かどうか(知識の有無)は関係なく、社会的・文化的な問題であると結論付けている。道理で減らないわけだ。

ちょっと本書の趣旨とはずれるのだが、わたしは、自分が「無知」であることを知ってはいるが、謙虚ではないかもしれない。

たとえば、哲学を学ぶのであれば、アリストテレスから読まなければならないだろう。順を追って読んでいったら、いつマルクス・ガブリエルまで、たどりつけるのか。そのまえに、あのマルクスを読んでいたら一生が終わってしまうではないか。哲学も、政治学も、歴史も、文学も、読む前からうんざりしている。もちろん、翻訳を読むだけなのだが、無理だよなと思う。しかし、こういった教養(リベラルアーツ)を前提に、ハリウッドの映画なども作られているのだから、知っていたほうが、何倍も味わえることはわかっている。しかし、しかし、時間がない。

小説の場合、国や地域を限定しても、ミステリーやSFにジャンルを限定したところで、作品は膨大にある。それに、わたしは働いて銭を稼がなければならないんですよ! という現実もある。

だから、ランダムに出会ったものを見たり、読んだりしていくしかないのだと思っている。それぐらいは面倒くさがらずに消化していきたい。

この無知に対する焦りは、中学生ぐらいから抱えているのだが、焦ったところで、別に進まないんだよなあ。

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