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『ガラスの仮面』何度読んでも私が惹かれる、強くて気高いあの人。

演劇マンガの金字塔『ガラスの仮面』。累計発行部数が5000万部を突破した大ベストセラーにして、1976年から連載が始まり2021年現在未だに未完という長期連載作品だ。

私が『ガラスの仮面』と出会ったのは高校生の頃。学校の図書館に置いてあったそれは、当時の私が好んで読んでいたマンガたちと絵柄もストーリー展開も何もかもが異なり斬新だった。そんな興味本位で読み始めた『ガラスの仮面』だったが、やはり大ベストセラーなだけあって大人になった今でもこうして読み返すほどどっぷりとハマってしまった。それくらい面白いのだ。

ちなみに、本作を読んだことがない人に向けて説明をしておくと、幻の演劇「紅天女」の主役を巡り、鬼才・北島マヤと演劇界のサラブレッド・姫川亜弓が舞台上で闘う物語だ。

また「・・・おそろしい子!」というセリフや登場人物たちが突如白目になることで有名なので、どちらかというとギャグマンガとして認識されている方も多いのではないだろうか。

だが、『ガラスの仮面』は断じてギャグマンガではない。

確かに時代錯誤的な描写や、長期連載であるがゆえに登場人物が1〜10巻ではポケベルを使っていたのに40巻以降は突然スマホを使っているなどツッコミどころはあるかもしれない。けれど、役になりきるためにマヤがギプスをつけたり滝に打たれたりするシーンはスポ根マンガさながらだし、様々な苦難に遭遇しても決してめげずに演劇の道へとひた走る彼女の姿やセリフには胸を打つものがある。

そして、この作品の魅力を語る上でもう一人欠かせない人物がいる。

私が敬愛してやまない、孤高の天才「姫川亜弓(ひめかわあゆみ)」だ。

彼女は、大女優と母と有名映画監督の父を持つ、言わば演劇界のサラブレッド。母親譲りの美貌と演技力、そして学力優秀、高い身体能力に芸術性、まさに完璧な女性。

そしてこの姫川亜弓こそが後に北島マヤと「紅天女」の主役を巡って闘うライバルなのだ。

本作を読んでいると、姫川亜弓は貧乏で平凡な北島マヤと比べるに値しないほどに圧倒的な存在のように思える。

けれど、それは大きな間違いなのだ。

北島マヤは、環境や経済的に恵まれていなかっただけで本能的に役の本質をつかむことのできる言わば天才タイプ。

反対に姫川亜弓は、努力や経験によって養われた"洞察力"や"観察力"で役の本質を探り試行錯誤しながら役を掴んでいくタイプ。天才ではなくどちらかというと秀才タイプである。

そんな姫川亜弓は、世間から見れば北島マヤよりも圧倒的優位に立っていると思われ世間から騒がれてきたが、彼女自身は一度もそう思ってはおらず、誰よりも北島マヤの天性の才能に気付き評価してきた。

本作では北島マヤの"ライバル"として描かれる姫川亜弓だが、80年代の少女マンガ特有の卑劣ないじめなど彼女は絶対にしない。それどころか、北島マヤのことを良きライバルとして認め、彼女がとある事件をきっかけに芸能界失脚の危機に陥った時も姫川亜弓だけが彼女を信じて救ったのだ。

恵まれた環境に甘んずることなく、自分の能力にも奢らず、相手を妬まず、常に前を向いて努力を続ける。

姫川亜弓とはとても強くて気高い女性なのだ。

1月26日現在、LINEマンガでガラスの仮面』が期間限定で無料公開されている。

北島マヤのライバルである姫川亜弓の初登場シーンは6話。演劇初心者の北島マヤに対して彼女がとった行動は、何度読んでも中学生とは思えないほどだ。『ガラスの仮面』をこの機会に読む方は、ぜひ姫川亜弓に注目してみてほしい。


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