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目眩く夕日堂やっほー #7

#7 星野道夫さんの写真展に行ってきたの巻

 やっほー、みなさんお元気?
夕日堂はなんとか元気に、やっておりますよ。
今日は写真展に行ってきたお話、いたします。

星野道夫 悠久の時を旅する


 岡山県立美術館に行ってまいりました。
地元の人は結構行ってるんじゃないかな?
NHKのローカルニュースで、5日連続でコーナー紹介をやっていたので。 
5分足らずの映像紹介を見ているだけでも、一瞬で心を掴まれる。
そんな写真です。
 展覧会では大判のパネル一杯に、アラスカやシベリアの大地の自然と動植物たちの雄姿が、詩情豊かに美しく、厳粛にそして壮観に写し出されています。
 動物写真家としてだけではなく、文筆家、詩人としても有能な方でした。
私は、あまり写真家に詳しくは無いのですが、20年以上前の取材中の事故で名前を知っている方もおられると思います。

 事務所のHPによると、今回の岡山での展示は巡回展の開始以来初めての全作品展示だそうです。非常に幸運です。
 展示された作品ひとつひとつを前にしながら、「どれがベストワンかな。。。」と考えて拝見しました。結局、選びきれませんでした。どれも素晴らしくて。まず、あの場所に居ることが凄いです。厳寒も、短い夏も、北極圏の美しさの虜になった写真家の情熱が真っ直ぐ伝わる写真ばかりです。写真は、千撮って一残れば良しとする分野なので、自然を題材にする写真家は気が遠くなるほどの忍耐を要求されます。言い方が悪いですが、それこそ馬鹿が付くほどでなければ務まらない。奇跡のようなカットが見る者を否応なく写真家の意図の中に引きずり込みます。

 何か、これをこうして見せつけてやろうといったあざとさを一笑に付すかのように、一人の人間が立ち会った瞬間のそのままを、持てる力の全てを尽くして、大事に大事に撮影されたんだと、そう感じました。
 最初の、ニ十歳の時にシシュマレフ村の村長さんに書いた英文の手紙の展示を読んだときに、もうその時点で、不覚にも落涙です。見ず知らずの北極圏の住人に、お会いしたい受け入れて欲しいと懇願する、凡人にはそんなこと出来ません。ただただ純粋に、本で見た世界に飛び込んでみたい。その一心で書いたエアメール。素晴らしいのは、遠い日本の一青年の希望を何とか叶えてあげようとする、村長さんのお人柄。何処の誰だか分からない人間にそんな事出来るか、と凡人は考えますよね。魂が呼び合う、そんな関係性だったのでしょう。偏りのない世界観に暮らす人にしか分かり合えない。憧れの境地です。二十歳の青年が書いた英文は決して流麗な文章では無いが、伝えたいことをしっかりと、誠実に、とても読みやすく丁寧に書かれていました。真剣さが一発で感じ取れる。それは、後年極地での写真家として人生を全うする星野さんの性分がもう既に表れている、そう思いました。

 音楽同様、写真を文章で説明するのはほぼ不可能なので、出来れば皆さんにも直に鑑賞していただきたいです。見ないのは損、です。

写真展 星野道夫 悠久の時を旅する 巡回予定
2021年5月12日~6月27日 仙台文学館
2021年7月17日~9月20日 北九州市立文学館
2021年9月28日~2021年11月7日 岡山県立美術館
2022年1月頃 関東地方
2022年4月頃 東海地方
2022年7月頃 北陸地方
2022年11月頃 関東地方
詳細は後日HPにて発表
https://www.michio-hoshino.com/

 特に昨今、海外へは当面出にくい状況なので、写真家の目線で見た北極圏の壮麗な自然美を堪能されては如何でしょうか。私は改めて、写真の威力を見せつけられた。そんな充足感で美術館を後にしました。幸福な時間が暫く余韻を残しそうです。

 最後に、星野さんの死について未だに懐疑的な論調があるやに聞くのですが、私はこのように考えます。
 一匹狼のような生き方を好む、そのように周りからは見えてしまうタイプの人を見るにつけ、いつも思い起こすのは田中一村の生き方です。田中一村は中央画壇からはかけ離れた日本画家として知られていますが、真の芸術家というのは元来このような人を指すのだと思います。誰にも決しておもねることなく、自分の信念を貫き通す。例え変人と言われようが、異端とあだ名されようが、作品が全て。人生を終えてから世に評価されるのでは遅いと批判するのかも知れませんが、承認欲求を度外視する者の前では、その批判は無意味です。そんなところに価値を置いていないので、永遠に交差することは無い。
 星野さんが一村のような生き方をした訳ではありませんが、人間も自然の一部だとすれば、中傷をした輩の批判は自己矛盾であると簡単に判断が付きます。つまり、自然の概念を履き違えている。野生動物を人間が餌付けする愚行を追認する思考だと気付いていないということです。部分的な情報に偏頗する危険と傲慢。今現在も、何処かで、そこかしこで似たようなことを聞いているような。。。ここにも、ファクトチェックの重要性が語られています。

 星野さんは今も生きていらっしゃいます。作品が全てです。見ず知らずの私にも、「自然って凄いよね」って、語りかける。死んでなんかいないのです。


岡山県立美術館
https://okayama-kenbi.info/exh-20210928-hoshino/

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