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【読書日記・5】小さな変化は、大きな一歩


「元女子高生、パパになる」杉山文野・著

いつの頃からかランドセルの色がカラフルになった。赤と黒しかなかった昭和世代の私は、そのどちらでもない色のランドセルを初めて見た時の衝撃を今でも覚えている。
小学校5年生の時だ。ピンクのランドセルを背負った1年生が入学してきたのだ。全校生徒の中、たった一人のピンクのランドセルは当然目立った。当時の私は、赤と黒以外のランドセルが存在することを想像もできなかったので、見かけるたびに珍しそうに眺めたと思う。
しかし、珍しかったピンクのランドセルも、いつしか景色に溶け込み一ヶ月も過ぎれば見慣れていった。

それから20年の間にランドセルは進化を続け、娘の兎が入学する時には水色や紫もあり、ピンクに驚いているどころではない。中学校に入学する頃には、制服のジェンダーレスが進み選択肢が増えた。
そうやって私は、カラフルなランドセルにも、ズボンの制服姿の女子にも、髪を長く伸ばした男子にも見慣れてゆくことになる。
はじめは見慣れない景色であっても、人は次第に慣れてゆく。とても自然な流れだ。

杉山文野さんの著書『元女子高校生、パパになる』を読んだのは2ヶ月前のことである。身近にLGBTQの方が居ないので、本を読んでみようと思ったのだ。しかし、読見終えると「身近に居ない」のではなく私が「知らないだけ」なのでは?と疑問を抱いた。「気づいていない」と言ってもよい。
カミングアウトされないだけで、私も多様性に富んだ世界に住んでいる。そもそも、カミングアウトしなければ理解されない世界なんて、多様性に富んだ世界と言えるだろうか。カミングアウトしようがしまいが、自分らしく居られる世界こそが、多様性に富んだ世界なのだ。

自分の持っているアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に気づくには「知ること」と「想像力」が必要だ。文野さんの著書を読み、頭が化石状態だと気づいた私は、これから何度も自分の価値観と向き合うのだな、と思う。


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