見出し画像

【詩】迷子の青春

泳ぎ方を忘れた水鳥を見つけた

バイクのヘッドライトはずっと前を照らしている

生きる世界から外れた迷子のトリ

往来を駆け抜ける重量車

雨の予感がする風が蒼い翼に吹いた

協力的なスーツの男と非協力的制服姿

びっこを引いて焼けたアスファルトをよちよちよち

二人で協力して保護した
切り傷と皮膚荒れを残し

川へと
さようなら
元気でな、もう迷うなよ。

雨の予感がする風が頬を撫でた
バイクのヘッドライトはずっと前を照らしている

十三年前と同じ風だった

どこか懐かしくて何となく不安定だけど
今日の僕らは季節外れの青春を謳歌した

あの日からずっと

バイクのヘッドライトはずっと前を照らしている

誰にも見えない僕らの未来を

清々しい風と一緒に


家に帰ると風が吹き抜けていた

水田を縫って水鳥が泳いだ
枝を咥えて奪い合いながら

この記事が参加している募集

私の作品紹介

今こんな気分

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?