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産科フィスチュラ撲滅国際デーによせて

今日5月23日は産科フィスチュラ撲滅国際デーです。
(産科フィスチュラについては以前の投稿をご参照ください。)

私が代表を務めるGender and Diversity Lab Melatiは、ニジェールで産科フィスチュラの状態にある女性たちで、すでに治療不可と判断されてしまった女性たちの支援を、現地で活動する団体を通して支援していきます。

必要なのは尿漏れとその匂い対策です。この尿漏れと匂い対策グッズを現地でテストしていきます。もし既存のものでうまくいかないようであれば、新たに開発することも考えています。

産科フィスチュラへのアプローチとしてメジャーなアプローチは3つあります。
予防(prevention)
治療(surgical treatment)
社会への再統合(re-integration)
です。
このアプローチは、産科フィスチュラにならないように、予防しよう。
もしなってしまった場合は治療しよう、
治療したら社会へ再統合していこう、というもの。
これは、産科フィスチュラにならないことを目指しており、またなったとしても治ることを前提にしているアプローチです。

実は、現場にはこのアプローチではどうしてもこぼれ落ちてしまう女性たちがいます。それは、すでに産科フィスチュラの状態になっていて、症状的に治療ができないと判断された女性たちです。色々なデータがあるのですが、産科フィスチュラ患者さんのうち、治療によって治るのは80-97%のケースとのこと。つまり残りの3%から20%の女性たちは、治療できない、しても治らないということです。

ニジェールの現地からの情報によると、そういった女性たちは人目につかないように村のはずれにある畑などで日中過ごすか、少し離れた都市まで出ていき物乞いをして生きているそうです。こういった女性たちはまずその存在が隠れているので、見えづらいです。おそらくそれもあって国際機関や国際的な団体の支援対象からはこぼれ落ちてしまっているのだと思います。

尿漏れと匂い、これらが最も彼女たちの尊厳や人間らしい生活を奪っています。私も、2009年から2011年まで現地で産科フィスチュラ患者さんの支援をしていました。彼女たちと同じ釜の飯を食べて、共に泣き、共に笑う、といった日々でした。その中で、複数の産科フィスチュラ施設に通っていたのですが、手術までの間、患者さんは導尿するための管を入れます。ある施設ではその管を受けるのはバケツでした。これだと、尿そのものが周りの人に見えるし、尿の匂いもしました。
ある時、彼女たちに「一緒にかわいい布を買いに市場に行こう」と言ったら、「私たちはYoyon fusari(ハウサ語で尿が漏れること、産科フィスチュラの状態を表す)だから市場に行くのは無理だよ」と言われました。バケツで尿を受けること、その匂い、それらが彼女たちの行動を制限して、時に差別的な言葉を投げかけられたりする要因になっていました。

一方で、ある産科フィスチュラ施設では、導尿した尿を服に隠すことができる尿パックで受けていました。その場合、見た目としては産科フィスチュラということがすぐにはわからず、彼女たちの行動範囲は上記のバケツの例と比較すると、広かったです。市場で買ってきたビーズなどを使ってアクセサリーを作って病院内で売ったりしていました。

彼女たちが尊厳を取り戻して人間らしい生活を送れるよう、どうぞ支援をお願いします。



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