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【詩】霧雨の降る街

鉄の扉を両手で開くと
霧雨に包まれた街が
視界に広がっていた

小高い丘の上に建つこの家からは
街全体を見下ろすことができる


あの頃は
雨に濡れたグレーの街が
湿り気を含んだ黴臭さが
私を陰鬱の果てへと押しやった


変わらぬ信念と祈りを大空に掲げ
見知らぬ敵から身を護り
傷つきながら森を彷徨い戦い続けた

希望に向けて最後の光の矢を放つ

悲しみの果てに築き上げた
魂のディストピアは
燃え上がる炎と化し崩壊した


霧雨の降る街は
静寂な潤おいに包まれた
何物にも変え難い
安堵と平和が
深淵に刻んだ傷跡を癒す

市街の教会から響き渡る鐘の音

白い空に鳩が舞う


大好きな『ハンガー・ゲーム』にインスパイアされて書いた詩です。


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