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1994年 SideA-5「Wherever You Are/ドリームズ・カム・トゥルー」

吉田美和・Mike Pira 作詞 中村正人作曲・編曲

・「長男の嫁」(TBS系 1994/4/14~7/7)主題歌

 TBS系木曜10時枠4月クールドラマ主題歌。「木曜10時」といえば、80年代半ばから現在まで多くのヒットドラマを生んできたフジテレビの看板ドラマ枠である。そこにこの時期、かつてこの木曜10時枠から多くのヒットドラマを輩出してきていたTBSがドラマ枠を復活させてきた。狙っているターゲットもほとんど同じだったため、ここから5年半、クールごとに主要キャストが行ったり来たりするという全面戦争状態がしばらく続くことになる(主題歌のアーティストも結構行ったり来たりした。脚本家は不思議と色分けされていた)。

 一見のほほんとしたホームドラマの顔をした「長男の嫁」は、そんなTBSの宣戦布告第1弾として放たれた強烈な先制パンチだった。貴島誠一郎プロデューサーが目指したのは「“最旬オールスターキャスト”による新たな大家族ドラマのスタンダード」という相当に挑戦的な企画であった。集められたのは、バブル期を彩ったトレンディードラマやエキセントリックな話題作、あるいはドキドキの青春ラブストーリーなど、それぞれ近年に代表作を持つ豪華俳優たち。主人公である長男夫婦に浅野ゆう子&石田純一、そして姑に野際陽子(この時点で作り手側としてはすでにしてやったりだったことだろう)、さらに次男夫婦に段田安則&鈴木杏樹、三男カップルに山口達也&坂井真紀という布陣は、オールタイムで考えてもかなり豪華で的確な配役である。

 そしてこの大掛かりな仕掛けを見事にゴールまで導いた原動力は、何と言っても大石静脚本の力であった。決してありがちではない展開でありながらきちんとツボを心得、コミカルで、シリアスで、見るものの気を決してそらさない豊かな筆力。ここから大石静は現在まで約30年にわたってほぼ切れ目なく代表作を生み出し続ける未曾有のドラマ脚本家となっていく。

 主題歌はDreams Come True。「晴れたらいいね」以来のドラマ主題歌で、ツインボーカルにアース、ウインド&ファイアーのモーリス・ホワイトが参加しているという原点回帰&ネタばらし的1曲。のちのコンピレーションアルバムにはほとんど収録されることがないが、間違いなく彼らの最高傑作のひとつであろう。なおドラマの劇伴音楽も「ひらり」に続いてメンバーの中村正人が手掛けた。


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