34歳、自転車で自由を感じた日

僕は20歳から鬱病で、今年37歳になります。
長い間鬱病で立ち歩くこともできなかった期間もあります。
これは、そんな状況だった僕が34歳の時に経験したちょっとだけ「自由を感じた」話です。

約2年半前の春先、僕は鬱病で寝たきりでした。
外に出ると言っても、玄関先に少し出るくらいで限界でした。

ただ、日によっては行動的になれる日があります。
その時は、少し遠くに行ってみようと思いました。
遠くと言っても電車で一駅先の場所に行くくらいです。

それでも、その時の僕にとっては体力と気力のいることでした。

僕は古着や中古品など、セカンドハンドものが好きで、鬱になる前はよく中古品を取り扱っているセカンドストリートというお店に行っていました。
セカンドストリートで掘り出し物を探すのが趣味でした。

その日は少し気分も楽で、久しぶりにセカンドストリートに行きたいと思いました。
電車に乗って、セカンドストリートの最寄りの駅まで行きます。
ただ、その駅からお店は結構離れていて、歩きで行くと片道20分くらいの距離です。

徒歩でもいいのですが、流石に疲れるかなと思って、駅に隣接されているレンタルバイクを借りてみることにしました。
その時、自転車に乗ること自体本当に久しぶりだ、ということに気づきました。

当時、というか今も僕は一人暮らしをしているのですが、自転車やバイク、車というものは持っていません。
街中の近くに住んでいるということもあって、全て徒歩圏内で用を済ませることができます。

だから、自転車も、たぶん数年ぶりにその時に乗りました。
レンタルバイクの使い方を確認しながら、僕は自転車にまたがりました。
久しぶりに乗るので、乗り方を思い出しながら、少しぎこちなくペダルを漕ぎ出しました。

すると、自転車が少しずつ前進します。
ペダルを強く漕ぐと、その分早く前に進みます。

僕は、しばらくの間自転車に乗っていないこと、そして長い期間鬱病で寝たきりだったこともあって、自転車のスピードに少しびっくりしました。
久しぶりに自分の歩くスピードよりも速い世界を体感し、そしてこの時、ちょっとだけ「自由」を感じました。

昔は自転車もよく乗っていたし、バイクも乗っていたし、車も持っていました。
それでも、鬱を経て久しぶりに自転車に乗って走った世界は新鮮でした。

今まで、体が鎖に繋がれているのかと思うくらい身動きができず、ずっと体が鉛のように重い、そんな日々を過ごしていました。

でも、ペダルを漕げば、そんなことはまるで関係ないように、自転車は前に進みます。
そして、その自転車のハンドルを握るのは自分であり、行き先も速度も全て自分で決めることができる。

久しぶりの自転車に乗りながら、僕は

「俺は自分の力で、どこにだって行ける」
「どこまでも行ける」

そう感じました。

その時、自分の力で漕ぐ自転車で、そよぐ風を頬に感じながら、久しぶりに「喜び」を感じ、そして少しだけ「自由」を感じました。

ただ、それだけのお話です。
ありがとうございました。


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