ANAの安全ビデオにハートを射抜かれた話

ANA国内線で流れている安全ビデオを見て、衝撃を受けました。「わ、古い!そんな話今さらしてる」という方には、ごめんなさい。

機内安全ビデオが歌舞伎?!

先日、出張で福岡に行ったときに、ANAを利用しました。離陸前に、CAさんが緊急時の設備や対処法を説明する『安全ビデオ』が流れますよね。これ、真面目に見ている人はほぼいないようですし、私自身、しっかりと見たことはありませんでした。

ところが、今回流れてきたビデオはなんと歌舞伎バージョンだったんです。

もう目が釘付けになりました。

現代の飛行機内に、歌舞伎役者が乗っているという設定のこのビデオ。素晴らしいのは、手荷物の正しい置き場所から、スマホや喫煙などの禁止事項、緊急時の避難方法や、酸素マスクなど緊急設備の使い方などの細かい部分まで、しっかりと伝わってくるということでした。女形の役者さんが、芸者姿で救命胴衣を着けて、紐を引き、チューブから空気を吹き込む所作のなんと美しいこと。見とれているうちに、自然と正しい知識が身に付くという仕組みになっている。あっぱれです。

さらに、降機時にはメイキング映像が流れ、撮影の舞台裏まで見せてくれるサービスぶり。役者さんのお化粧の様子なども見られて、海外の方も、興味深げに見入っていました。また、このビデオからは、正しく情報が伝わるように、スタッフが一生懸命工夫している様子も感じられて、ANAに対する好感度がぐっとあがりました

結果として選ばれる企業へ

後日、このビデオの仕掛け人は誰なのだろうと、めっちゃ興味がわき、ANA担当者のインタビューを探して読んでみました。すると、「ビデオにエンタテイメント性を持たせるという発想がこれまではなかったが、より興味を持ってみていただけるようエンタテイメントの要素も盛り込んだ」との内容。その意味で、これは、大成功ですよね。まったくビデオを見たことがなかった私が、4分15秒、画面にくぎ付けになり、なおかつ、映像内で黒子が手に取った「安全のしおり」まで確認してしまったのですから、ANAさんにまんまとやられた、としか言いようがありません。

また、インタビューでは、「ANAにはJAPANという文字がどこにもない。日本の航空会社だと知ってもらうという意味もあって、歌舞伎をテーマに選んだ」とのこと。海外からの渡航客の中には、安心と安全の『日本ブランド」の航空会社を選びたい方も多いでしょう。2020年に向けて、ANAが日本の航空会社だと知ってもらうことで集客につなげることも、しっかり狙っているわけです。

ちなみにこのビデオは、国内線では2018年12月から、国際線では今年の1月から使われているそうで、3パターンあるとのこと。また、監修は歌舞伎役者の 尾上松也さん。どのシーンでどの役者が、どんなしぐさをするかなど、細かにアドバイスをされたそうです。昨年、STORYの取材でインタビューをさせていただきましたが、その多忙ぶりには驚かされました。若手のリーダーとして、こういった分野でも、ますます活躍されているんですね。

そして、梅王丸は澤村國矢さん、芸者役は3代目市川蔦之助さん、若旦那役は尾上音一郎さん、子役は歌舞伎スクール寺子屋の生徒さんだそうです。

見ずにはいられないと思うものを作りたい

ANAのビデオは、見ちゃだめ、と言われても、見たくなるものでした。わざわざ、動画を探して、見返したくなったほどの逸品でした。

そんなふうに、どうやったら、お客さんが喜んで自分からすすんで見たいと思うものを作れるのか。お客さんは何を求めていて、どうやったら、それを提供できるのか。一生懸命考えて、実行していくことが求められているのだと改めて感じさせられました。

ちなみに、このビデオの発案者・仕掛け人を調べてみたのですが、たどりつけていません。もし、どなたかご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。いつか、お話を伺ってみたいと切望しています。

私はこちらでお仕事をいただいています。ぜひ、こちらもご覧ください。


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