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優先度をゲーム的に決めるファンクショナリティ・マトリクスPlus

機能開発の優先順位を決める時に何時も揉める。または”もやもや”するシーンが多い人・チーム向けに書いたnote。
納得感のある優先順位付けを、ゲーム的な要素で解決しようという手法です。

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社(以降ケンブリッジさん)というファシリテーション型コンサルティングが得意なコンサルティング会社から伝授された「ファンクショナリティ・マトリクス(FM)」、これは情報システムの上流工程における要求仕様の範囲や優先度における、“あいまいさ”を排除するための強力な実践的ツールなので私もよく利用しますが全般的に難易度が結構高い。(よいファシリテーターが必要)

なので、この設計思想は活かしつつ、ゲーム的な要素で優先度を決める「ファンクショナリティ・マトリクスPlus(FM+)」というツールを開発しました。(ファシリテーターのスキルはそんなに高くなくても大丈夫)

※ケンブリッジさんにも逆伝授しました。

まずは基本となるファンクショナリティ・マトリクス(FM)について

ファンクショナリティ・マトリクス(FM)の役割


(1)必要な情報システムの全体像を示す
 対象プロジェクトにおいて、情報システムに求められる機能要件を一覧として把握、システム投資のボリューム感を掴む。

(2)プロジェクトとしての優先順位を見える化する
 どの機能を優先し、何を後回しにするか、もしくは実施しないかを一目で分かるようにする。プロジェクトとしてのフェーズ分けを示すとともに、個々の機能の優先度が明確になります。例えば、開発工数を見積ったところ予算を超過した場合に、FMは開発範囲を見直すための重要な情報を提供します。

(3)多くの関係者の共通認識づくり(高い納得感の醸成)
 情報システムの構築プロジェクトには、多くの関係者が関与します。経営者、業務部門、情報システム部門、ITベンダーなどです。これらの関係者をFM作成のプロセスで上手く巻き込み、関係者の共通認識を築きます。これにより、納得感が高く、後々ぶれの少ないプロジェクト運営になります。FMの作成プロセスには、「皆で作り上げたFM」に仕上げるための秘訣が隠されています。

詳しくはこちら
ケンブリッジ・ファシリテーション研究所より
「ファンクショナリティ・マトリクス」~あいまいさの排除なしに、プロジェクトの成功はなし~
「ファンクショナリティ・マトリクス」~納得感のない優先順位は長続きしない~

ファンクショナリティ・マトリクス(FM)の利用イメージ

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ファンクショナリティ・マトリクスPlus(FM+)

繰り返しますが、ケンブリッジさんの「ファンクショナリティ・マトリックス(FM)」は、非常に強力なツールですが、事前の準備から始まるファシリテーターの力量で品質にばらつきがでます。

例えば、ケンブリッジさんのFMの優先順位付けの評価は次の3つです。

・ビジネスベネフィット(BB:Business Benefit)
・技術的難易度(TC:Technical Complexly)
・組織受入態勢(OR:Organization Readiness)

それぞれに定義を作成します。がコレが結構難しい。しかし、そこには「皆で作り上げたFM」に仕上げるための秘訣が隠されています。
秘訣については、ケンブリッジさんに譲るとして、

FM+は、皆で作り上げない。ゲームのように攻略する

例えば、開発優先度について、相反する2つのチームがある。

・企画チームは、管理ツールの強化、インフラ部分の機能強化の優先度を上げたい。
・営業チームは、売るためのもの、競合との比較や派手めな機能の優先度を上げたい。

そんな2つのチームに納得感を与え優先度をつけたい!そんな時に使います。

概要

1)FM+の評価軸は、組織や個人に割り当てます。(2〜4個位が妥当)
例として次のチームに評価軸を与えます。
・企画チーム
・営業チーム

2)それぞれポイントを与えます。
・企画チーム:1,000ポイント
・営業チーム:1,000ポイント

3)割当ポイントを、それぞれが優先度を上げたい施策に割り当てます。

4)施策毎に企画チームと営業チームのポイントを合算します。つまり合計数値の大きい施策が開発優先度が高いというロジックです。

5)最後は合算数値の大きい順から1次リリース、2次リリースなどを開発が出した想定工数を見ながら調整していきます。

具体的な運用イメージ
保有ポイントの割当の計算を自動化させ
ゲームに集中させる

結論から言うと、(3)の「保有ポイントを適切に施策に振り分ける」部分を自動化します。

STEP.1
優先度 S / A / B / Cの重み付け

準備として、優先度 S / A / B / C(Sが最高、Cが最低)の重み付けを、それぞれのチームが行います。
・営業:S=10 / A=5 / B=3 / C=1
・企画:S=5 / A=3 / B=2 / C=1

ここではSの価値は営業の方が高いという判断をしています。

STEP.2
割当ポイントを決める

・企画チーム:1,000ポイント
・営業チーム:1,000ポイント

STEP.3
各チームは、それぞれ施策毎に優先度 S / A / B / Cを付けます

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Sは営業5、企画1、つまり企画の方がSに価値があると思っている。

計算の準備(変数を入れる)

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青背景の白文字が、それぞれ操作できる所です。
割当ポイントは組織の強さなどで決めます。優先順位付けで揉めている場合は、力が拮抗している場合が多いので同じが良いです。

計算ロジック

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営業は最高優先度Sを企画よりも多く付け、重み付けも大きくしています。そのため、相対的にSの価値が企画より低くなっています。
・営業のSの価値:144.9
・企画のSの価値:200.0

各集計

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・施策Aは営業と企画がそれぞれ優先度Sなので優先順位1位です。
・施策B~Eまでは営業は全部Sなのですが、企画の意思で優先順位がついています。
・施策FとGは営業と企画で優先順位が逆なのですが、こちらも企画の意思で優先順位がついています。

攻略ゲーム

つまり優先度を自分たちでしっかりと考えないと思い通りならないという事です。例えば全部優先度S(全部大事!)と言った場合、そこには優先度はありません。相手の優先度に従うだけという結果になります。

例にある施策Cは優先順位が4位ですが、これを絶対1位にしたい場合は、他の優先度Sの施策を全部AやBに落とす、と言った戦術が必要になります。

仕上げ

これ以降は、ケンブリッジさんのファンクショナリティ・マトリクス(FM)と基本的には同じ流れで、施策を機能グループと機能毎のマトリックスに落とし込みます。

つまりこれ

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そして、機能グループと開発リソースを鑑みて最終優先度を決めていきます。

開発リソースを最後に設定する理由は、フロントだけで済む、サーバ側対応が必要など開発の得意/不得意があるからです。

とめ

このファンクショナリティマトリクスPlusは納得感のある優先順位付けを、ゲーム的要素を用いて行うというものです。その核となる思想には「しっかりと考えて優先度を決めて欲しい」という背景があります。

EXCELでお試し版を用意しました。興味があれば使ってみてください。

お試し版ファンクショナリティマトリクスPlus



アレとソレを組合せてみたらコノ課題を解決できるソリューションができるよね?と言うパズルをやるような思考回路です。サポートして頂いた費用は、プロジェクト関連の書籍購入やセミナー参加の資金にします。