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「違うこと」に気づくこと

縁あって吉本ばななのスピリチュアル本『「違うこと」をしないこと』を読んでいたら、「一目で人を見抜き、かつそれを瞬時に伝えてくれた人」の記述があった。
あの大リーグ選手のまわりにも、彼の通訳の"Something's Not Right"に気づいている人が一人くらいいたんじゃないだろうか。さすがに何らかの行動には移せなかっただけで...。

人づてに紹介されて、大型犬の訓練士さんに来てもらっていたことがありました。忙しいから代わりに散歩に行ってくれ、くらいの気持ちだったと思います。(中略)
そうしたら、ある日、仕事で打ち合わせに来た写真家の本橋成一さんが、その人をひと目見て「やばいよ、あの人。絶対金貸せって言ってくるよ。それから仕事してないよ、あの人」と言ったのです。
いきなりそんなこと言われたら、びっくりしますよね。本橋さんと会ったのはその日が初めて。初対面の人の犬の訓練士をそこまで言い切るっていうのは、本当にスゴイなと思ったし、私にそれを言ってくるっていうのも、やさしいっていうか、本当にスゴイなと。(中略)
実際、その人は「どうしても明日までに十万円必要だ」と言ってきました。
(中略)
ある企画で谷川さん [引用者注:詩人の谷川俊太郎] とご一緒することになったのですが、編集の人がちょっと席をはずしている時に、谷川さんが「吉本さん、あの人はダメだよ。あなたを利用しようとしているから、あんまり関わらない方がいい」と言ってくださったのです。
(中略)
「人は見た目じゃわからない」と言うけれど、見る人が見れば、一瞬でわかっちゃう。
それって、単に本橋さんや谷川さんが凄いというだけの話でもなくて、たとえその人をよく知らなくても「いい人だな」とか「なんかいやだな」って思ったりするじゃないですか。気配みたいなものを察知する力が、どんな人にも、もともとあるんだと思う。

吉本ばなな著『「違うこと」をしないこと』77ページ

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