最果

中学二年生のとき、休み時間に最果タヒのエッセイを読んでいた。チャイムが鳴り終わるその瞬間まで読んでいたら厳しい先生に取り上げられて「後で職員室に取りに来い」と言われた。職員室で「チャイムが終わった頃にはカバンに仕舞っていたしきちんと授業の挨拶に参加していたため不当だ」と言った。毅然と、そんな風に言い返されたのが初めてらしい先生は、私が読んでいた本のタイトルを見てバツが悪そうに「次からは気をつけるように」と言った。なんとなくその先生のことを憎く思えなくて、放課後に質問にも行くようになり、仲良くなった。「彼女いるの〜?」などと年相応の質問を友達がすると「君たちの方が結婚早いかもね」などと笑ったその先生は、次の年に結婚をして、次の年に別れた。あたしが読んでいた本のタイトルは『十代に共感する奴はみんな嘘つき』だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?