見出し画像

小さな幸せに気付けなかった王子“たち”のお話【ミュージカル「ピピン」】

ミュージカル「ピピン」を観劇しました。

トニー賞受賞してる作品見たくなっちゃう。だから、観ました。(単純)
特に今回、日本版再演で、2代目ピピン役が森崎ウィンくんだと!知って!見たい!となりました。
ウィンくんは、去年「ジェイミー」で何度か見ていたけど、本当にお芝居が繊細で、なんといっても優しく透き通るあの歌声が素敵すぎる。
初演のピピンが城田優くんだったみたいなので、(それも見たかったけど)次ウィンくんなんだ~と思って楽しみにしてた。
あと、もう一つ見たい!となった理由はやっぱりクリスタル・ケイさん。

本当は2020年上演予定だった「ヘアスプレー」で拝見できる予定だったけど、今年リベンジとなるヘアスプレーにはキャスティングされてなくて、でもクリスタル・ケイさんのお芝居見てみたいな、と思ってた。
ピピン、なんか色々凄かったから書き綴ります。


イープラスの貸切公演に行ってきた!


ミュージカルってなんだっけ

本作のタイトルは「ミュージカル『ピピン』」なんだけど、この作品、サーカスじゃん?????ガチめのサーカスじゃん?????が第一印象だった。
どうやら本物のプロサーカス団も出演してるらしい。あの外国人たちはプロのサーカス団の方々だったのか…
本当にすごかったです。本場の(?)サーカスって初めて見た。ハラハラドキドキして、それはもう何回心臓止まるかと思ったくらい、びっくりするようなサーカス演目がたくさん。
2013年のリバイバル版からサーカス要素を多く取り入れるようになったみたいだけど、いわゆるミュージカルってなんだっけ?と思わされるような作品だった。
そうか、ミュージカルって、歌唱シーンがあるだけじゃないんだ、こんな表現こんな演出だってあるんだ、って視野が広くなった。

私はストレートプレイよりも断然ミュージカルの方が好きなんだけど、それってなんか、もちろん歌やダンスを見て楽しむのが好きなのもあるけど、一体感とか団結力とかそういう類を、ストプレよりも感じられるから好きというのもある。
そういう点では、サーカスも一緒だった。あれこそ団結力ないと大けがするエンターテインメントだから。それを今回、気づかされた。


年齢なんて関係ない!今を楽しもう!

そのサーカスの一つの演目で、本当に心底びっくりして心揺さぶられたのが、ピピンのおばあ様であるパーサ役の前田 美波里さん。
前田さん、なんと、空中でアクロバティックな演技をやってた。
いや、ほんと?幻覚じゃないよね?って何回も思ったけど、どうやって見ても何度も双眼鏡で覗いても、前田さんなのよ。
観劇時にはご年齢を知らなくて、でもきっとお年を召されているのは知っていた。だって私が小さい時からテレビでも活躍していた女優さんだから。
それで、幕間中に調べてびっくりしたんだけど、前田さん74歳だった。

いや、意味わかんない

まず74歳でミュージカルの舞台に今だ立たれているの凄すぎない???それでとっても綺麗。素敵な年の取り方だなって20代の若造は思った。
それで、ムキムキマッチョのお兄さんと(プロのサーカス団の方)空中に吊るされてあれやこれやと。すごい!
これは言葉で言い表されないのでゲネプロ映像を見てほしい。


また、パーサ役はWキャストで、もう一名が中尾 ミエさんで76歳だそう。
や~~~~~~本当にすごいです、尊敬します。

前田さんを見て、年齢って関係ないんだなって感じました。
きっと役者として生きる覚悟を持った方は、できるところまで舞台に立ち続けるんだと思う。そしてできるところまで挑戦し続けるんでしょう。

そしてパーサが歌う楽曲は「時間はあっという間に過ぎるから今を楽しもう、残りの人生を楽しもう」っていう、とっても前向きな楽曲で、それが空中アクロバット披露してたパーサにぴったりで、とっても心が揺さぶられました。
あんな素敵なかっこいいおばあちゃんになりたいな!!


「充実感を探すこと」に取り憑かれた王子たち

ねえねえ、ピピンは1人だけでしょ?
森崎ウィンくんでしょ?

と私も思っていたのです。観劇前までは。

そもそもこのピピンという作品、サーカス団が「ピピン」という王子の物語を私たちに見せてくれてるという設定で、いわゆる劇中劇みたいな感じなので、「ピピン"役"の〇〇さん=ウィンくん」ということになる。

ストーリーは、劇団の一座が「ピピン」の物語を
演じているという劇中劇の構成となっている。
ミュージカル「ピピン」公式サイトより


てことはです、そのサーカス団に所属しているピピン役の役者さんはウィンくんだけではない。

なぜか、というところでクライマックスの演出がめちゃくちゃキーになる。
私はこれに気づいた時にゾッッッッとして鳥肌が立ちまくりで寒気もした。いやほんと、これはほんとです。


※ここからは超クライマックスの超ネタバレになるので知りたくない方はごめんなさい!※





リーディングプレイヤー(クリスタル・ケイ)は冒頭から「絶対に忘れられないフィナーレをお見せします」と私たちに語りかけていた。
そのフィナーレとはなんなのか?

自分探しの旅に出て色んなことに手をつけてみたけど、どれも中途半端に終わってしまって「次は何をすればいい!?」と彷徨っていたピピン王子。
そこにリーディングプレイヤーが登場し、「炎の中に飛び込んで永遠の太陽となれ」と言う。

そこには燃え上がる炎、上にはワイヤー(ブランコみたいなやつ)で持ち上げられたピピン。
「飛び込め!」「早く!」と煽るリーディングプレイヤーと一座のメンバーたち。
何度も飛び込もうとするが「できない!」と、途中で辞めてしまうピピン。


これが、「絶対に忘れられないフィナーレ」。
厳密には、ピピンが炎の中に飛び込んで永遠の太陽となるというところまでが、フィナーレ。

つまり、ピピンは炎に燃えて死ぬ。
いや、ピピン役の役者が、死ぬ。


冒頭のピピン登場時にリーディングプレイヤーは彼のことを「今日がこの役初めてなんです」と紹介していたんだけど、これってつまり、そういう……

え、わかりますか??

この一座は、何度もこの「ピピン」という物語を演じてきていたわけです。
もちろんキャストが変わることもあるでしょう。
でも、フィナーレを知ってしまってからじゃこのピピンは初めてのピピンなんだと、別の意味で思って恐ろしくなる。


あとは、キャサリンの行動にも、「今までのピピンと違う」描写はいくつか出てきていたので、まあ、そういうことだよね。

いや〜〜〜これに気づいた時はゾッッッッとした。
まじかこの一座そんな恐ろしいことしてたのかって。いや、てか、それで事件とかにならないのかな…色々考えてしまう。
深く考えると色々深すぎました。


それで、このnoteのタイトル、「小さな幸せに気づけなかった王子"たち"のお話」にした理由について。

ウィンくんピピンは、小さな幸せに気づけた王子なんです。きっとキャサリンと2人で生きていくんだと思う。
でも、ウィンくんが演じる前までのピピン役の役者さん達は1人2人じゃないはずで、じゃあその人たちはみんな炎の中に飛び込んで永遠の太陽となったのかどうか?は不明だけど、もしそうと仮定すると、その人たちは小さな幸せに気づけなかった王子たちになる。
むしろ、私はそこが気になって仕方なくてどうしてもタイトルにしたくなった。
ウィンくんピピンは、気付けた王子なのでこれからはきっと幸せな人生が待っているはず。
でも他のピピンだった人たちは、ピピンを全うして舞台上で死んでいったのかもしれない。
そう考えると胸が痛いのとこの一座なんなん!?っていうゾッとする感情が交差して複雑な気持ちになる。

リーディングプレイヤーが言っていた「絶対に忘れられないフィナーレ」になってしまったなぁ、ととても印象が強いものになった。
なので、タイトルにしました。


劇場にあったフォトスポット。
これで私も一座の一員!


クリスタル・ケイさんすごかった

ケイさん、とっても不気味でした。(ほめてる)歌はもちろん素晴しかったけど、ダンスも素敵だった。すごい。あとサーカスも。プロだけしゃなくてケイさんやウィンくんも演技するシーンがあって、どれだけ練習をしたんだろうと、胸が熱くなった。
リーディングプレイヤーって超キーパーソンなんだけど、良くも悪くも不気味で威圧感がある。それを表情やダンスで表現されていたのが本当にすごいなって思った。

もちろんケイさんだけでなく皆さん素敵すぎました。すごいです。
でもやっぱり冒頭の登場からあの不気味さとその中に見えるワクワク感溢れるリーディングプレイヤーは忘れられない。
圧巻でした。


ウィンくんが来ていた衣装と
トニー賞受賞トロフィーが展示されていた


おわりに

東急シアターオーブ初でしたが、ミュージカルのために作られた劇場みたいで音響は流石でした。聞きやすく綺麗だった。
今回は3階席だったからステージの上部分は見れなかったのと、手すりの位置がちょうど視界の邪魔になってブリリア思い出しちゃった。
それがなかったら不満なし!という感じ。
観劇にストレスはかけたくないですよね…せめて視界に何かが入って見づらくなるのだけはいつも避けたい。

9月10日、ピピン中止になっちゃったので観劇できた私は幸せだった。
少しでも早く再開できることを祈っています。


シアターオーブからの渋谷

この記事が参加している募集

舞台感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?