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【月刊電視台1月号】『ウルトラマンブレーザー』視聴記録

今月から【月刊電視台】という企画をスタートさせてみようと思う。これは、筆者がその月にTVで視聴したTV番組の中で最も印象に残ったものを書き綴っていこうという趣旨の企画である。
「電視台」というのは、どうやら中国語で「テレビ局」を指す言葉のようであるが、偶然TVでこの言葉を見かけ、カッコいいなと思ったからタイトルにしたとそのぐらいの軽い感覚で捉えてもらいたい。
主に毎月末の発信になるかと思うが、月末の些細な楽しみにしていただければ幸いである。

さてさて、記念すべき第1回目に取り上げる作品は、この1月をもって最終回を迎えた空想特撮ドラマ『ウルトラマンブレーザー』だ。
2023年7月より放送を開始した本作は、ハードSF風の構成で、観る者を大いに魅了している。間違いなく筆者もその中の一人である。
まさに‘‘王道’’であり‘‘斬新’’といった表現がピッタリと当てはまる作品であることは間違いなく、近年の「ニュージェネレーション・ウルトラマン」とは一線を画す作品であった。
筆者は一ファンとして毎週毎週、新作の放送を心待ちにし、とっさに浮かんだ感想を全て書き残してきた。これを世に出さずに、このままにしておくのは少々もったいないという思いから、今回は「視聴記録」として、全25話分を一挙大放出する。
『ウルトラマンブレーザー』視聴時の肴にでもしてもらえたら嬉しい限りだ。


第1話「ファースト・ウェイブ」

放送日:7月8日
監督:田口清隆
脚本:小柳啓伍
登場怪獣:バザンガ

闇夜にこだまするウルトラマンの咆哮…すごいのが始まった!
冒頭から映画を観ているかのような臨場感溢れる演出とカメラワーク、一話丸ごと同じシチュエーション、リアルな市街戦…ウルトラマンの歴史が変わった!震えた!

第2話「SKaRDを作った男」

放送日:7月15日
監督:田口清隆
脚本:小柳啓伍
登場怪獣:ゲードス

前回が第0話として今回がまさに第1話と呼べるエピソード。
隊員を集める段階から物語を始めることで圧倒的なリアリティを醸し出す。
良い塩梅で笑いも組み込まれており出来栄えは上々。
戦闘場面でもカメラワークに新しさを感じさせる。

第3話「その名はアースガロン」

放送日:7月22日
監督:田口清隆
脚本:小柳啓伍
登場怪獣:タガヌラー

タガヌラーがパワード怪獣っぽいと思っていたらまさかのアメリカから物語が始まって驚いた。
それはさておき、眩い光の中でウルトラマンと出会う描写は『ウルトラマンガイア』へのオマージュ、一話一話ドラマ性をしっかりと持たせている点が素晴らしい。

第4話「エミ、かく戦えり」

放送日:7月29日
監督:辻本貴則
脚本:継田淳
登場怪獣:レヴィーラ

レヴィーラのデザインが良い!
宇宙人の侵略ではなく人間の企み、それも大手製薬会社を隠れ蓑にした陰謀を描いている点がとてもリアル。
さらにエミの存在が硬派なスパイドラマとしての魅力も引き立てている。
カメラワークも素晴らしい。

第5話「山が吠える」

放送日:8月5日
監督:辻本貴則
脚本:継田淳
登場怪獣:ドルゴ

平成シリーズからよく見受けられる村の言い伝えや都市伝説を描く回。
守神として登場する怪獣ドルゴのデザインが山と一体化していて面白い。
ただ、ロケーションやキャストを出し惜しみしすぎて、一つのシチュエーションの中で物語が完結している点が物足りなさを醸し出す。

第6話「侵略のオーロラ」

放送日:8月19日
監督:辻本貴則
脚本:継田淳
登場怪獣:カナン星人 ほか

これは機械に頼りすぎた生活を送る人類への警鐘。
オーロラが現れると機械が誤作動を起こす描写は、さながら『NOPE』を彷彿とさせる。
アースガロンが車を手に取るシーンとかクレイジーゴンっぽくて好き…関節が自由自在のブレーザー、まさに"宇宙人"だな。

第7話「虹が出た 前編」

放送日:8月26日
監督:中川和博
脚本:山崎太基
登場怪獣:ニジカガチ

自然災害、天候不良、異常気象…これらは「神の怒り」と例えられることがあるが、まさに今回登場する虹蛇神という怪獣はそういった伝承を具現化したようなもの。
怪獣の存在は是か非か?その問いを訴えかける横峯教授という存在が秀逸。
その土地土地に伝わる伝説をストーリーとしている点は『ウルトラマンガイア』や『ウルトラマンコスモス』を彷彿させ、全体的な構図としては『シン・ウルトラマン』を思わせるシネマティックでリアリスティックなものになっている。

第8話「虹が出た 後編」

放送日:9月2日
監督:中川和博
脚本:山崎太基
登場怪獣:ニジカガチ

自然を破壊し、進化した文明を築き上げる人類への警鐘を横峯教授の口を通して鳴らす。
かつて『ウルトラマンガイア』でも地球を洗濯するという話があったが、恐らくはそのオマージュ。
通常ならばここでウルトラマンがパワーアップするはずだが、今回はアースガロンが先にパワーアップ。
そういった点でも本作はあくまで人類が主役であることを印象づける。

第9話「オトノホシ」

放送日:9月9日
監督:越知靖
脚本:植竹須美男
登場怪獣:ガラモン/セミ人間

これぞ神回!音楽の持てる力を伝えているエピソードであり、『ウルトラQ』へのオマージュが満載。
まるでオペラであるかのように旋律の変調で物語を構成。
「ウルトラQのテーマ」でさらに古参ファンを喜ばせる。
60年前を白黒映像で映し出しているのも面白い。
エピソード的には『ウルトラマンマックス』第15話「第三番惑星の奇跡」を彷彿させる。

第10話「親と子」

放送日:9月16日
監督:越知靖
脚本:植竹須美男
登場怪獣:デマーガ

ゲント隊長、デマーガ親子…両視点から"命の尊さ"を説く。
途中の"親"と"子"目線で映し出す画角が秀逸。
参謀長の視点から迫り来る脅威への伏線も同時に匂わせる。
青と赤の二重螺旋🧬、咆哮などブレーザーは何者なのか、そのヒントが隠されているような気がする。

第11話「エスケープ」

放送日:9月23日
監督:武居正能
脚本:足木淳一郎
登場怪獣:ゲバルガ

攻撃を求めるのがゲントなのか?それとも避けたいのがゲントなのか?いまいち判然としない。
ブレーザーとの意思疎通が上手くいっていないことを明確にしているエピソードであり、パワーアップ前の前章としては上々。
宇宙怪獣の脅威や倒すか救うかの判断などは『ウルトラマンガイア』と共通する部分なのかもしれない。

第12話「いくぞブレーザー!」

放送日:9月30日
監督:武居正能
脚本:足木淳一郎
登場怪獣:ゲバルガ

上層部にお伺いを立てなければならない縦社会がSCaRDにも存在し、それに対処するゲントがリアル。
地上部隊の登場やギリギリまでウルトラマンに頼らない展開、そしてゲントとブレーザーの意思が共通していたことを明確にした描写は見事。

第13話「スカードノクターン」

放送日:10月7日
監督:宮﨑龍太
脚本:足木淳一郎

ただの総集編にあらず!
しっかりとした科学考証のもと制作されていることを印象づける。
宇宙怪獣の注釈(バザンガとゲバルガが同じ星を住処にしているというのは、『ウルトラマンガイア』におけるコッヴなどの設定と酷似)、隕石落下の年など、随所に『ウルトラマンガイア』へのオマージュを感じさせる。
アオベエミ隊員が少し怪しいな………
ブレーザーの意味は…活動銀河の中心にあるブラックホールから高エネルギーで放出されるジェットの一種、ブレーザーの光

第14話「月下の記憶」

放送日:10月14日
監督:田口清隆
脚本:小柳啓伍
登場怪獣:デルタンダル

大空をマッハで飛び回る怪獣に対抗するSCaRD。同時に、過去の事故や怪獣頻出の調査を続けるエミ。
2本の軸で物語を展開させ、より一層、ハードSFの様相を呈する。
宇宙から怪獣を送り込む「V99」という存在は、恐らく「根源的破滅招来体」と似て非なるもの。
ここから、そういった話が増えていくのだろう。
ウルトラマンの戦いが必要最低限に抑えられており、変身から撃破までをワンカットで描写、一度も地上に着地せず空中戦のみで構成されている点なども新鮮。

第15話「朝と夜の間に」

放送日:10月21日
監督:田口清隆
脚本:中野貴雄
登場怪獣:ガヴァドン

実相寺昭雄氏が監督した『ウルトラマン』第15話「恐怖の宇宙線」を見事、現代に蘇らせた快作。
昭和では土管に書かれた絵だったが、令和では画用紙。
随所に現代っ子らしいセリフや設定が施されている部分には緻密さを感じさせるが、それでも極力、デジタル社会を映し出すのではなく、子供らしく"秘密基地"、校庭、河原、工事現場ではしゃぐ姿が描写されており、大人たちからガヴァドンを隠そうとする姿やウルトラマンが"悪者"になる展開などもオリジナルへのオマージュを感じさせる。
今回はガヴァドンAのみの登場なのも斬新。

第16話「恐怖は地底より」

放送日:10月28日
監督:辻本貴則
脚本:継田淳
登場怪獣:モグージョン

タイトルに込められた意味を読み取ることが鍵となる。
アースガロンにAIが搭載される部分は『ウルトラマンガイア』のPALを彷彿。
エミは自身が怖いようだが、その真意は…。
『シン・ウルトラマン』浅見弘子、否、『ウルトラマン』フジ隊員へのオマージュも。
ウルトラマンの目の光が消える瞬間は目を瞑っているというまさに盲点、新たな解釈のもと、文字通り目を瞑って戦うブレーザーがかなり新鮮に映った!

第17話「さすらいのザンギル」

放送日:11月11日
監督:辻本貴則
脚本:継田淳
登場怪獣:ザンギル ほか

全体的に"和"の雰囲気を感じさせるエピソード。
喫茶店内でのメトロン星人を思わせる会話劇、ザムシャーを彷彿させる剣豪のザンギル(というかザムシャー出てた?)グレゴール人っぽさもあるな…ブレーザーとのタッグ戦も見事なコンビネーションであった。
唐橋充 氏の演技も見事であり、何より「三大特撮」制覇おめでとう!

第18話「そびえ立つ恐怖」

放送日:11月18日
監督:越知靖
脚本:継田淳
登場怪獣:イルーゴ

光化学スモック、環境汚染、そしてコロナ…現代社会が抱える空気汚染の恐怖を未知の"イルーゴガス"という形で表現。
本来「ウルトラ」シリーズは自然破壊への警鐘を鳴らす作品であり、今回のようなエピソードがまさに王道。それでいて我々にとっても記憶に新しいコロナ禍の言いようのない恐怖、マスク生活、目に見えない脅威をストーリーに組み込むことにより、説得力のある現実味を大いに感じさせる内容となっている。
V99や第66実験施設の謎など縦軸の物語も一段とサスペンス要素を醸し出すようになってきた。

第19話「光と炎」

放送日:11月25日
監督:越知靖
脚本:継田淳
登場怪獣:ブルードゲバルガ、イルーゴ

ついにブレーザーがパワーアップ!ここまで、やや時間を要し、文字通り満を持してのパワーアップと言えるだろう。その姿は神秘の炎竜ファードランによって覚醒した神秘的なフォルム。
ブルードゲバルガのサイズ感がゾグを彷彿させる。1999年にやってきた地球外生命体とはブレーザーのことなのか。V99を巡るミステリー要素にも拍車がかかり、物語はさらなる深淵へと向かっていく……。

第20話「虫の音の夜」

放送日:12月2日
監督:武居正能
脚本:根元歳三
登場怪獣:ズグガン

これまでちょこちょこ組み込まれていたテルアキ副隊長の実家ネタをここに来て回収。SCaRDメンバーの素性を深掘りするという点ではこれ以上ないエピソード。
そして「ウルトラシリーズ」の根底にある"環境問題"と"命の尊さ"をしっかりと描いたお話でもある。テルアキ副隊長がズグガンの卵を爆破する際に発した「すまない」という一言が印象深い。
人間が生きていくためには少なからず命を犠牲にしなければならない。畑に住み着いた虫を"駆除"するのもまた人間が生きていくためには必要不可欠な営みなのだ。
夕景にブレーザーの姿がまた映える。ズグガンの生体やデザインがエイリアン・クイーンを彷彿させる。卵を産み落とすズグガンの母親を駆除したテルアキは父親の畑を救った。この辺りの"親子の対比"も面白く、以前のデマーガ親子とヒルマ親子の対比のように、本作のテーマの一つに"親子"というものがあるのかもしれない。

第21話「天空の激戦」

放送日:12月9日
監督:武居正能
脚本:根元歳三
登場怪獣:デルタンダルB

現場を理解しない上層部の圧力に耐え忍び、必死に抵抗しようとする特殊怪獣対応分遣隊(SKaRD)が主人公のエピソード。
改めて、ウルトラマンではなく、アースガロンが主役であることを印象づけ、あくまでもウルトラマンはサポート役に徹する。
いつの日かアースガロンがブレーザーよりも先に怪獣を撃破する日が楽しみだ。
デルタンダル亜種を大きさ、攻撃方法で差別化している点はこれまで意外となかった斬新なアイデアであるように感じる。
やはりヤスノブは高山我夢のポジション?

第22話「ソンポヒーロー」

放送日:12月16日
監督:中川和博
脚本:足木淳一郎
登場怪獣:レッドキング(二代目)、ギガス、ガンキリュウ

こういう話を待っていた!
視聴者と同じ目線である民間人を主人公に、SCaRDの面々にはあまり話が及ばない。一つの事件を"地上"から見つめるこの感覚、「平成ウルトラマン」初期によくあった形だ。"倒す側"ではなく怪獣災害"被害者"の視点から展開していく部分にリアリティがあり、今の時代によくもこんな話を作ることができたなと関心しっぱなしの30分であった。
それにしてもレッドキングがかつて多々良島?に現れたことがあると言及されていたが、まさか『ウルトラマン』と同じユニバース?
最後まで下から見上げるようにウルトラマンと怪獣の戦いを映し出していたら、もっと面白かったかも。

第23話「ヴィジター99」

放送日:12月23日
監督:中川和博
脚本:小柳啓伍
登場怪獣:デルタンダル、タガヌラー、ヴァラロン

SCaRD隊長としての激務、そしてウルトラマンブレーザーとしての戦い…それらが祟り、生命力が枯渇していくゲントの描写が新鮮。これまでウルトラマンに変身する人間にここまでの影響が出ることはなかったように思う。
また、怪獣が世界各国に同時多発的に出現し、それに対処するため、アメリカへと向かうブレーザーの姿も新鮮に映る。
宇宙怪獣に対して地球怪獣が攻撃を仕掛ける展開は、さながら『ウルトラマンガイア』を彷彿させる。冒頭のデルタンダルとの空中戦は『ウルトラマンティガ』のガゾートを思い出した。

第24話「第3波接近襲来」

放送日:1月13日
監督:田口清隆
脚本:小柳啓伍
登場怪獣:ヴァラロン

サードウェーブであるヴァラロンの脅威が地球を襲う。これに対処すべく満身創痍のヒルマ・ゲント率いるSKaRDは、初の地球外任務へと赴く。
アースガロンMod.4に搭乗し宇宙へと向かう面々、地球から彼らをサポートしようとする面々…まるで戦争に向かうかのような神妙な面持ちを魅せるSKaRDの姿が泣かせる。そんな彼らを"使い捨て"としか思っていない上層部には腹が立ち…こんなにも感情移入できる「ウルトラマン」がこれまであっただろうか?間違いなく、歴史的な作品だと言える。
ゲント隊長、そしてウルトラマンブレーザーの運命やいかに!?

第25話「地球を抱くものたち」

放送日:1月20日
監督:田口清隆
脚本:小柳啓伍
登場怪獣:ヴァラロン、デマーガ、ズグガン、デルタンダル

再びブレーザーと一体となるゲント隊長の姿に涙が止まらない。
地球人類と地球怪獣が手を取り合い、宇宙からの使者に対処。サブタイトルに集約されたラスト、最後の最後にブレーザーが両腕を十字にクロスさせ必殺技を放つ描写がニクい!
人類も未来を見てみたい…現実に、未来が不透明な先行きの見えない世の中であることを実に見事に反映してみせたラストであった。
映画級のカメラワークとVFXも目を引く次第。
やはり全25話では少なすぎるよ。


ここまで読んでいただいた稀有な読者たちには感謝の意を表す。
ウルトラマンブレーザーの戦いは、さらに劇場版へと続いていく。
果たして、劇場版では一体どんな壮絶な戦いが繰り広げられるのだろうか?
まだまだ『ウルトラマンブレーザー』に対する楽しみは尽きない!

(文・構成:zash)

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