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選曲がヤバかった結婚式の思い出

結婚式には、今までに3度出たことがある。

結婚式は言うまでもなく大変めでたいイベントだが、私は毎度、どんな曲がかかるのかが気になる。

きっとこれには、私が人生で初めて参加した結婚式が大きく影響している。


曲のチョイスのみについて言えば、最もセンスが良かったと感じたのは、私が最後に参加した、大学の同級生の結婚式である。

ブーケトスのタイミングでケラケラの「スターラブレイション」がかかり、披露宴の最中も嵐の「Love so sweet」などがかかっていた。

カップル向けのコンピレーション・アルバムを作るとすればこのような構成になるだろうな、端的に言えば、大衆的で非常にポップな選曲だった。

反対に、最も「ヤバかった」と思ったのが、何を隠そう私が人生で初めて参加した結婚式であった。

それは、私の従兄の結婚式だった。


その式は、海辺の式場で催された。

新郎新婦の関係者が集まり、めいめいが歓談をしていた。

式場のスタッフに促され、我々は教会に移動した。

教会で、新郎新婦の二人は神父に促されて誓いのキスをした。

通常の結婚式がどのようなものか、初参加の私は当然知り得なかったわけだが、その私の目から見る限り、それは極めて順調な式だった。


続いて我々は披露宴会場へ移動した。

私と同席だったのは、従兄の家の向かいにかつて住んでおり今は東京で一人暮らしをしているという渡辺さんと、数年来会っていない従兄――新郎の弟――だった。

渡辺さんとはこの日が初対面であり、人見知りの私にはたいそう大変な状況になったぞ、と感じていた。


会場の照明が暗くなり、「それではただ今より、新郎新婦の入場です」とアナウンスがあった。

テーブルでの会話の糸口が掴めずにいた私にとって、これはまさしく僥倖だと思われた。

少なくとも、登場する二人に拍手を送っていれば間が持つからだ。

披露宴会場の大きなドアがゆっくりと開けられた。

そして会場に、Every Little Thingの「fragile」が流れ始めた。


「fragile」は恋愛リアリティ番組「あいのり」の主題歌だ。

そして歌詞自体も、決して悲恋を歌ってはいない。

むしろ、この愛を手放さないという強い意志を感じる歌だ。

しかし、結婚披露宴の冒頭で「壊れやすい」は不吉すぎやしないだろうか。

嬉しそうな顔で入場する二人を見ながら、私はそんなことを考えていた。


その後も二人のチョイスする曲は、結婚式の晴れやかなイメージとはどこかずれていた。

たとえば宇多田ヒカルの「Prisoner Of Love」からは、タイアップしていたドラマの内容も伴って、ひどく不気味な印象を与えられた。

前述の「fragile」の件があったので、私はよりいっそう「マジかよ……」と思った。

しかし、まさか「このチョイスは――」などとテーブルで話すわけにもいかず、私はなんだかもやもやしたまま、この披露宴を見届けることとなった。

このときの衝撃が強く、だから私は、結婚式では流れる曲に注目するようになってしまった。


さて、こうやってネタにできるのは、二人がちゃんと別れていないからに他ならない。

式はあの震災の前年だったから、二人は結婚してもう10年以上になる。

つまり、二人の絆は壊れやすくなかった、ということだ。


何もかもが順風満帆なんてことはないだろうけれど、それでも生活が続くことは素晴らしいことである。

これからも、仲睦まじく添い遂げてくれたらいいな、と思う。

まあ、二人の子供には、このままずっと人見知りし続けると思うけれど。


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