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おもろい女子の夜明け(IPPON女子グランプリ)

私が女として形容される時、もっとも多かったのは間違いなく「おもろい女」であった。
いつからだったろう。
小学校高学年頃からそう呼ばれる回数は徐々に増えていき、中学生の頃には私の代名詞として「おもろい女」は機能していた。

関西生まれ関西育ちの私は、例外に漏れず土曜の昼は帰ってお好み焼き食べながら新喜劇を見、
日曜はごっつを見、月曜はミスタービーンの物まね等で盛り上がり、
悪いことをしたり、勉強をさぼったりすれば「吉本入れるよ!」と脅されたりなどをしながら大きくなった。
中学校になれば、お笑い芸人はいちアイドルとしての地位を築き、
歌ったり踊ったりブロマイドになったりしていた。
高校時分に初めて松本人志の書籍を買った時の感動は忘れられず、
その頃になるとアイドル的目線で芸人を見る女子とは少し違う角度でお笑いを好いていた。
放課後、物静かだが私よりも人志熱が高めの友人と、公園のベンチで時間も忘れて人志について語り合った。

その頃になると、私は「おもろい女」という地位を確固たるものにしており、ただそこにいるだけでフリをかまされたり、いじりという名の雑なボケ等を一手に引き受けていた。
最初は自分が言うことで人が笑ってくれることがうれしかった。
だがだんだんとそれは「自身が安心するため」の行動となり、少しずつ重荷になっていった。
あと、おもろい女はモテなかった。
モテないからおもろい女になるのか、おもろい女だからモテないのかは分からないが、まぁどちらもだろう。

私はここに、「女とお笑い」の決定的な問題があると推測する。
おもろい男はモテるのに、おもろい女はモテない。
何故か。
笑わせる側と、笑わせられる側、という構図が、攻め受けの構図となっているからだろうか。
はたまた逆に「笑われる側」という認識がまだまだ世間一般にあるからだろうか。

女子特有の事情にも起因しているかもしれない。
男子とお笑いはその成長過程と共に成長し、持つべきひとつの能力として存在しているように見える。
要は「お笑い力」がひとつの武器として認められており、その存在意義は大きい。
だが、女子はどうだろう。
到底武器にはなりえないのである。
そのため、必然的にその能力は衰退し、「持たなくとも支障のないもの」となる。
お笑い番組を見たり、書籍を読んだり、大喜利やってる暇があるなら、
美容院行ったり、ダイエットしたり、良い下着買ったり、おもろ能力よりも褒め能力を伸ばしていた方が有意義なのだ。

ただ、そんなことでは手放しがたい魅力が「お笑い」にはある。
その魅力に魅せられた者たちが「女芸人」なのである。

昨日のIPPONグランプリは素晴らしかった。
期待していなかった自分を恥じた。
戦わずして牙を抜いた私に、一体何が言えるだろうかとは思いつつ、感想を述べたい。
特に箕輪さんの回答はどれも素晴らしく、圧倒的強さを見せてくれた。
まさに「女王の風格」といった感じであった。
その他の三人も、まさに「今を時めく」といった感じだったし、Aマッソ加納ちゃんの、IPPONがなかなか取れない時の表情には同じ女であるにも関わらずゾクゾクした。(彼女のあの泥臭さが好きな方も多いのではないだろうか)
福田さんの、大喜利に囚われない自由さ(番組として成立させようとしている感じ。さすがバラエティにひっぱりだこなだけある)や
イワクラちゃんの後半の追い上げにもドキドキが止まらなかった。(彼女も結構泥臭く芸人やってる感じなので好き)

確実に、今までのIPPONグランプリにはない良さで溢れていた。
今後は男子の部女子の部で二部やるべきだと思った。
誰かが混合ダブルスでやるのもいいかも、といっていたが、男女は分けた方がいいと思う。
なぜなら【女子だからこそ】答えられる問題が無数にあることが、今回の番組で明らかになったからだ。
一問目の【おじさんと体が入れ替わっていた時にする注意事項を言ってください】みたいなのは本当に良い問題だし、
男性が女性の気持ちになって答えるのとではリアルさが格段に違い、それがめちゃくちゃおもろかった。

これまで掘り下げて来なかったからこそ、女のお笑い道にはまだまだ源泉が残っている。
女芸人がただただ【女あるある】や【女同士の愚痴】のみで笑いを取る時代がようやく終わろうとしている。(一応弁解しておくが、女あるあるネタも女同士の愚痴ネタも大好きです)

とにかく、ワクワクした。
長くなってきたのでサラッと触れるだけになってしまうが、もちろん女性タレントの回もめちゃくちゃおもしろかった。びっくりした。
カレンちゃんとなぎさちゃんの面白さは知っていたが、王林ちゃんがうまくてびっくりした。
そして神田さんも最高のスパイスとなっていた。笑

なんだろう、もう【お笑い】という枠を超えた感情がそこにあった。
ウーマンリブにも似たような感情というか。笑
ドキュメンタルで、ゆりやんがおっぱいをもろ出した時にも感じたが、
男気、いやほとばしるほどの女気を感じた。
「男に負けたくない」という感情を、痛いほど感じた。
この感情は、男社会で女として生きる者こそ、人一倍感じるものだろう。

女芸人が、「ブス」や「デブ」といった身体的特徴のみで笑われる時代もようやくもう終わろうとしているのだ。(これも一応断っておくが、それが悪いというわけではない。それすらも武器になるのがお笑いであり、そこに男も女も関係ないからだ)
かっこよかった。
笑わせてやる!という一心で戦ってる女芸人たちの、ただそこにある情熱を見た。
M-1並みに胸熱でした。


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