見出し画像

サイボーグ姐さん

うちの近所にアルビソーラというお店がある。

カジュアルなイタリアンのお店だ。
まー平たくいうと「街のパスタ屋さん」。

料理は美味しいし、スタッフさんもいい感じだ。
店内も結構広めで天井が高いので居心地がよい。

常連・・・というほどでもないが
年に3~4回は行っていると思う。
おすすめがアオサとエビの柚子胡椒クリーム。

なんだかんだで毎回これ頼んでいる気がする。
いや~基本トマトソースかボロネーゼ系なのだけどね。
ここのお店はこれ。

実はこのお店で過去に忘れられない出来事があった。
もうかれこれ7年くらい前だろうか。

仕事の関係で、ここの近くに来ていた私は
相方のアラレちゃん(女子)とここを訪れた。

席に通される。
確かアラレはこの日が初来店だったと思う。

スタッフさんが水を運んでくる。
当たり前の光景。

だがしかし!
そのスタッフさんの右腕を見て
私たちは驚愕した。

なんと手の甲からひじにいたるまで
しっかりとギプスで固定されていたのだ。

※写真はイメージです。

おそらく骨折であろう。
腕を吊っている様子はない。
いや、その腕フリーで大丈夫か?
ていうか、あんた仕事してもええのか?

いやいや。この状態で働かされるって
この店ブラックなん????

ほんの1~2秒でそこまで考えた。
どうやらアラレも同じだったみたいだ。
アイコンタクトで我らは理解した。

しかもである。
おねえさん、すっごいスマイルだ!

もうね、プロ根性っていうんですか?

「私、すっごく腕が痛いんだけど、
 お客様の前では絶対に笑顔を絶やさないの」

アタックナンバーワンや!鮎原こずえや!

我らの動揺をまったく感じ取らない様子で
ランチメニューの説明をしてくれる。

全然メニューが目に入らん。
とにかくその右腕が気になって仕方がない。

わずか数十秒のことだと思うが、
やけに時間が遅くなった気がした。

我らのリアクションが薄かったのか、
おねえさんはものすごい笑顔で
こう言い放った。

「ランチ限定メニューもあるんです!
 今お持ちしますね!!!」

おねえさん、足早に向こうに行く。
そして持ってきたのがこういうヤツ。

※イメージです。アスクルさんから借りました https://www.askul.co.jp/

そう。あのお店の前とかによくおいてあるやつ。
チョークで今日のランチが書いてあるやつ。

結構重いよね、あれ。
それをこともあろうかギプスをはめた腕を使って
これまた足早に戻ってくるではないか。
そして例のごとく、スマイル!

今日のランチの説明を受けたが
おねえさんの腕が心配で
何も頭に入ってこなかった。

せっかく重いのを持ってきてくれたが
結局我に返った私たちは
メニュー表のやつを選んでしまった。
すまん、おねえさん!!


料理はいつも通り美味しかった。
初来店のアラレにも好評だった。
でもそれ以上におねえさんのインパクトが強かった。

人間というのは、想像を上回る出来事に遭遇すると
それ以外のことがよくわからなくなる。
そんなランチタイムだった。

帰り道、もうおねえさんのことで
話が盛り上がってしまった。
そして我らは、あの彼女をこう呼ぶことにした。

「サイボーグ姐さん」。

もちろん、親しみと感謝をこめてだ。

その日以来、このお店にいくと
サイボーグ姐さんの姿を確認してしまう。
もちろん、もうサイボーグではない。
笑顔が素敵なおねえさんだ。

話次いでに彼女のすごいところを紹介しよう。
実は私は玉ねぎが苦手だ。
特に生のやつは絶対にダメだ。
でも、前菜のサラダには入っている。

最初はうちの奥が、玉ねぎを取り除いてくれていた。
奥が玉ねぎ食べれる人でよかったとつくづく思う。

一度ダメ元で聞いてみることにした。

「サラダの玉ねぎって抜いてもらえますか?」

これってお店にしてみたら、ダメだしされているようなものだ。
きっと「あー無理ですう」って言われるか
OKもらってもきっと無表情で対応されるのだな。

いや、でもおねえさんならきっと笑顔で
「はい。大丈夫ですよ!」と言ってくれるはず。

期待半分、不安半分で答えを待った。

彼女の答えは、そのどれでもなかった。
彼女はすこしとまどい、困ったような表情を見せた。
そしてほのかに笑顔を浮かべてこう言ったのだ。

「サラダの玉ねぎは抜けますけど、
 ドレッシングが玉ねぎドレッシングなんです。
 そちらは大丈夫ですか?」

なんとドレッシングの心配をしてくれていた!
すごいぞおねえさん!!
もちろん、ドレッシングに罪はないのでOKだ。

こうしてこれまで以上にランチを楽しめるようになった。

すごいのはこれだけではない。
なんとこの日以降、数年間通っているが

言わなくても玉ねぎがぬかれている!!

もうね。惚れてまうやろ!!

そんな素敵なアルビソーラさんはこちらにあります。

他のパスタも載せとくね。

追伸1
お店には3~4か月に1回くらいしか行っていない。
でもおねえさんは「いつもありがとうございます」と
わざわざテーブルまできてくれる。
そんなに目立つのだろうか、うちの夫婦ww

追伸2
サラダの玉ねぎドレッシングだが
あるときからにんじんドレッシングに変わっていた!
これも感激したエピソードだ。

追伸3
実はおねえさん、オーナーシェフの奥さんらしい。
上司が率先してやるから、みんなもそうなるんだな。
とにかくみなさん素敵なスマイルです。