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世界の長寿国の食事からわかる長寿の秘訣6法則「110歳まで生きられる!脳と心で楽しむ食生活」家森幸男

これは実に面白い。最近、読んだ健康本の中では5本の指に入るんじゃ無いかな?。私の中では評価の高い一冊。書店でパラっと見たときから「意味の含有量」の濃さを感じた。

言われている内容は、ちまたの健康本でも重複する内容が多い。でも、この本の場合、著者が実際に世界をその目で見たフィールドワークの強力な裏付けがあるところが違う。引き込まれるようにして読み終えてしまうこと請け合いだ。自信を持っておすすめできる本だ。

稀代の「冒険病理学者」が生まれるまで

著者の家森氏は、医者ではなく「病理学者」だ。あまり、聞き慣れないとはいえ、病理学は人類の進歩に大いに貢献している。医師は、手術や投薬で、直接目の前の患者を治していくが、原因のわからない病気に対してはお手上げだ。これに対して、病理学者は、病気の原因を探り、病気を治すと言うより防ぐことに力を注ぐ。

家森氏は、自分の生涯で一つの病気でも根絶したいと強く願った。そして選んだのが「脳卒中」だった。祖父母を共に脳卒中で亡くしている。家森氏のチームは試行錯誤のうちに、100%脳卒中を引き起こす因子をもったラットを開発する(かわいそう)。このラットに塩分の濃い食事を与えつつづけると、100%の可能性で脳卒中になる。

普通、病理学者は、ひたすら実験室でラット(動物実験)と向き合う日々を送るが、家森氏は独特の道を行く。ある時、高タンパク質の食事を与えたラットは、脳卒中の因子が大きくても、脳卒中を発症しないことに気づいた。そこから、脳卒中と食事の関係に注意を向けるようになったのだ。

これは、高タンパク質の食事が、脳卒中を予防出来る可能性があるという画期的な発見だった。残念なことに、この実験結果が、世に認められることはなかった。「ラットにはそうかもしれないけど、人間には違うでしょ」と言われてしまったのだ。

そこで、家森氏は、世界中の長寿の国・民の食生活・食習慣を調べて、自分の理論が正しいことを実証しようと思い立つ。そこから、25か国61地域をまわり1万6000人の尿と血液を採取し続け、食生活を分析し続けた。その集大成ともいえるのが、この本だ。まさに「冒険病理学者」と呼ぶにふさわしい人だ(病理学の世界で解剖することを「剖検」(ぼうけん)と言います、これにかけている)。

世界の長寿国・地域の食習慣を丹念に調査した結果、家森氏は「長寿の秘訣6法則」を発見している。興味深かったエピソードと、私が実際に、この本を読んでやってみようと思ったことを紹介したい。

長寿の秘訣6法則とは?

それぞれ、よく言われる健康的な食べ方ではあるものの、世界の食生活・食習慣から、下記の六法則を説明されるので、説得感が半端ない。

では、ひとつずつ。

その壱「大豆や大豆加工品をとる」

中国の「貴陽」という地域は経済的に貧しい地域だが、長寿の人が多い。調べていくと、大豆の栽培、そして、日常的に大豆加工品を、これでもか!というくらい食べているということに気づく。健康のカギは、大豆のタンパク質だけではなく、イソフラボンにあるということがわかってきた。

日本人の食生活にも大豆加工品が多い。豆腐・納豆・味噌・醤油・・。日常的に大豆イソフラボンを摂取する生活の知恵が再確認された。この結果を受けて、家森氏が提唱するのは「1日に(大豆加工品を)70g食べれば、健康に必要なイソフラボンをとることができる」というシンプルな健康法だ。

この量は、納豆1パック・豆腐半丁・枝豆などを常食すれば、簡単にクリアできるものだ。晩酌にピッタリ。

我が家では、納豆・豆腐は毎日夕食に食べてますし、朝のヨーグルトに大豆プロテインが入ってますので、イソフラボンは十分に摂れているようです。これからも自信を持って、この健康習慣を続けていきたいと思います。

その弐「過剰な塩分を摂らない」

高血圧の主な原因になっているのは塩分の過剰摂取だと言われている。血液検査を行いナトリウム値を見ると、その相関関係がすぐにわかる。興味深い点として、この本では、長寿国だけではなく逆に短命な国や地域の食生活も分析している。

例えば、カザフ地方の人たちは非常に短命ですが、食生活を見るとそれも納得できる。野菜や果物をほとんどとらず(つまりナトリウムを下げるミネラルであるカリウムが不足する)、チーズ・バターなどの塩分が非常に多い食生活になっている。実際、家森氏は60歳代の人の血液検査をしたいと思ったが、60代はほとんどいなかったそうだ。カザフの人たちは、50代で亡くなってしまうのだ。これは、まさに食生活と寿命の関係を印象づける例だ。

同様に、ナトリウム値が高くなる食生活をしている地域にチベットがある。家森氏が調査した時には50歳代の人の4割が血圧200越えだったそうだ。あり得ない。ちなみに、WHOが推奨する一日の塩分は6gだけど、チベットの人たちは平均で17gの塩分を摂取しているそうだ(ちなみに日本人は12g)。やはり、食生活は「塩漬け」といって良いほど、ナトリウム値の高い食品を摂取している(バターや岩塩など)。

塩分が体によい、悪いの論議は、今でもなされている。いろいろ意見はあるとはいえ、世界の食生活と長寿の関係を分析した結果から言えば、塩分過剰は縮命につながるというのは間違いなさそう。

日本人の伝統的な食生活も、基本的に塩分過剰なので注意しなければならない。醤油や漬物の類い、伝統的な保存食には塩分が豊富。また、スナックやファーストフードなどには、美味しく感じさせるために塩味が強烈。

ゲルソン療法は、徹底的に塩分を取り除く食事療法だ。これにも、やはりある一定の意味があるのだと理解できた。(もっとも、食生活の中でナトリウム値が高くても、カリウム値が同じように高ければ、塩分の害は打ち消せる。この点は「その五」で取り上げる。)

その参「魚はたくさん、肉はバランスよく」

どの国でも長寿国では、肉を食べる時に「脂」を過剰摂取しないようにしている。グルジアの例を挙げると、この国には肉料理が豊富だが、見事に「脂」を摂りすぎない工夫が食事に見られる。素焼きの皿に脂を吸い込ませるようにして出される「ティティラ」や、串焼きで脂を落とす「シシカバブ」、内臓ごとゆでるものの脂がギトギト出てきたお湯はすべて捨てる「ハシュラマ」など、伝統的な料理が紹介される。

先ほど例としてあげたカザフ人は、全くこの逆で、羊の脂が主食級になっている。その結果としての短命・・。お肉は食べるけれど、脂肪分は摂りすぎない工夫、これが健康的にお肉を食べる秘訣であることがわかる。

同じ「脂」でも、魚の油は体によい。DHA・EPAは是非取り入れたい。グルジアでも毎回食卓に魚が上がっていたということが報告されている。日本も、魚を食べる良い習慣があるので、これは維持していきたい。

その四「牛乳や乳製品をとる」

とりわけ興味深いのが、長寿の各国に「ヨーグルト」を常食する習慣があることだ。グルジアでは朝・晩にヨーグルトをどんぶり一杯分食べる。また、病院では感染予防にヨーグルトを食べさせる習慣があるそうな。また、マサイ族も、やはり自家製のヨーグルトを1日3Lも飲む。ご長寿国は、ヨーグルトの力をフル活用していることがわかる。

ヨーグルトにはカルシウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラルが豊富だ。また、良質なタンパク質源ともなる。牛乳の乳糖は不耐症の人がいるが、発酵して乳糖が乳酸になると体にも吸収しやすくなる。我が家では、毎日、ヨーグルト(プロテイン入り)を食べているので、これは、嬉しかった。

その五「野菜や果物を欠かさない」

果物や野菜が体によい理由の一つは「カリウム」が「ナトリウム」の害を打ち消すからだ。実際、グルジアでは食事中のナトリウム値はそれなりに高いが、それと同等、ちょっと上回るくらいにカリウム値のほうが高い。それで、塩分が多くても高血圧にはならない。

グルジアの食卓には常に、豊富な果物・野菜が並んでいる。冬期にも、干し果物などを摂っている。チャイ(茶)に干し果物を入れて飲む習慣があるという。この記述を読んでから、野菜や果物のカリウムが気になってしょうが無い。

その六「食卓は明るく楽しいものに」

よく言われる食生活の知恵だけど、やはり世界を見て回った家森氏に言われると説得力がある。何を食べる、食べないの議論もありますが、世界のご長寿国、短命国の最大公約数をはじき出していくと、自ずから見えるものがある。

最後にですが、この本を読んで、素晴らしいと思った取り組みを、ひとつ取り上げる。

ヘルシーランチプロジェクト

食生活をガラッと替えることは不可能だ。しかし、一日一食を徐々に改善することは難しくない。家森氏のチームは、一日一食、特に「昼食のお弁当」を活用して、これまでのノウハウを詰め込み、高血圧を抑制することに取り組んだ。これを「ヘルシーランチプロジェクト」と呼ぶ。

ヘルシーランチプロジェクトのお弁当は、本当に普通に見える。しかし、塩分を減らす多くの工夫が盛り込まれている。野菜や根菜を多くし、カリウムを摂取できるようにし、相対的に塩分を減らすようにしている。魚のミンチなどのおかずには、大豆イソフラボン25mg・DHA700mgなどを混ぜてある。こういうお弁当を4週間続けてもらった結果、なんと実験参加者の血液中のナトリウム値が平均3gも減ったそうだ。(14g→11g)。これは、こういう食生活をずっと続ければ、いわば、脳卒中を4割減らせる工夫なのだ。

ちなみに、脳卒中は、塩分が7g以下になると、死亡率はゼロに近づく。地道な努力だが、お弁当の中身を少しでも変えるだけで、塩分はどんどん減る。本人の意識が変われば、家族の協力があれば、食生活で脳卒中を予防することは、可能になる。

家森氏が「脳卒中という病気を無くしたい」という思いから病理学を志し、世界中を回り、そして、本当に誰にでも実践できる(本人が望むならば)予防食を開発しつつあることに感動を覚える。

気の遠くなるような努力を重ね、その研究結果を用い、高額なサプリを開発するのでは無く、誰でも取り組める食卓の知恵に知識を落とし込んでいるのだ。ほんと、素晴らしい!これこそ、本当に役立つ学問ってやつだ。

そこで、私も考えた。

私の場合は、昼食では無く、朝食だけど・・。一日、一食でもバランス良く栄養素の高い朝食を摂ることで、健康効果を高める。「ヘルシーモーニングプロジェクト」(完全にパクり)。無理なくできる健康啓発を目指したい。

編集後記

いや、実に面白い本を読んだ。なかなか、語り足りなくて、奥さんに世界の食事についてだいぶ話してみたが、非常に退屈な顔をしていた(汗)やはり、自分で読んでみないと。食と健康に関心のあるすべての人にお勧めしたい本だった。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq