新しい日本語?顔文字の話

「顔文字や絵文字が果たして文字なのか?」は議論の余地があるだろうが、インターネットの発達と同時に台頭した、新しい言語(?)表現であることは周知の通りである。庶民文化の分析をするなんて野暮なことだと言われるかもしれないけれど、暇なのでやる。今日のテーマは顔文字だ。

顔文字というのは、丸括弧()を顔の輪郭に見立てて、その他さまざまな記号を用いて表情を表すものである。

まず、基本形から。

()←顔の輪郭
(・・)←両目がついたところ
(・・)ノ←カタカナの「ノ」を付けて、片手を挙げている表現。挨拶などに使われる。

次に応用編。目の形が変わったり、口元を示す記号が加えられて表情が豊かになっていく。

(;_:)←泣いている顔。閉じられた口がアンダーバー「_」で示される。
( ;∀;)←同じく泣いている顔。口の形が「∀」となり、上のシクシク泣いている感じからもう少し躍動感のある表現となっている。ちなみに「∀」は「すべての」を意味する「全称記号」であるが、わかっていて使っている人は少ないと思われる。
(^^)←こちらは喜びの表情。目元だけで笑っており、口は省略されている。
!(^^)!←上の発展形と思われる。両脇の「!」はガッツポーズだろうか。

最後に発展編。感情をより印象付けるための工夫が成されていく。主にSNS上でふざけて使われる表現であり、堅い文章の中には決して出てこない。

メダマドコ-( Д ) ゚ ゚ ←「目玉どこー」と書かれた文章と共に使われる。テキスト部分は、全角で書かれる場合もあるが、半角カタカナが多い印象。基本形の顔の輪郭()から、両目が吹っ飛んでいて、非常な驚きを表す。漫画における「両目が飛び出している」表現が影響していると思われ、おおむねネガティブな文脈で使われている。これの基本形になっているのは( ゚д゚)で、こちらの意味も驚き呆れるニュアンスか。

┬──┬ ︵(╯。□。)╯←こちらも非常な驚きを示すために使用されていると思われる。「座っている椅子から転がり落ちた」表現だろうか……。調べたところ「MAD(馬鹿げている)」を示す顔文字として分類されていた。

そして番外編。欧米勢は横向きに顔文字を使う傾向にあるらしい。

:( ←横向きに見ると、口がへの字になって拗ねているように見える。
:-) ←こちらは「-」で鼻が付いたバージョン。上と同じく横向きに見る。笑った口元を「)」で表現。

これらが文字なのか、そもそも言葉なのか?は議論の余地がある。実際、大抵の辞書に顔文字は載っていない。これらは言葉としての正当な地位は持っていない。だけど確実に、言語表現として日常生活に浸透しつつある。新しい日本語が台頭していく、歴史的変化に居合わせている、その感じが楽しい。

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本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。