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不幸未満ってあぶない状態

 住んでいるところでは、妊婦~新生児ママ向けの家事代行が安い。自治体の補助金が出るので、通常の半額か、それ以下くらいのお値段になる。いまだ使ったことがないけど、どんなものか出産前に試してみようと思った。
 
 自治体と連携している業者に電話をかけてみる。すると「体調の悪いひと向けのものなので、元気なうちはダメです」と言われた。市の小冊子には確かに「ママの他に家事をする人がいなくて、体調不良などで休みたいときに使ってね」的なことが書いている。
 
 そっか……と思う。「お前はまだ健康だろ?甘えんじゃねーよ」と言われているわけで、なるほど大きな疾患にはかかってない。熱が高いわけでも、だるくて起き上がれないわけでもない。
 
 ただお腹が大きくて、腰に来ていて、自分でぜんぶ家事をこなすのがちょっと辛いだけ。体を休められるならそうしたい。でもそれくらいのことでは誰も助けません、とのことだった。はい。
 
 業者に連絡しても、すぐに来てくれるわけではない。家事代行をお願いしたい日の1週間前には予約を取る必要がある。となると、病気で倒れてその日に連絡したとしても、すぐに来てくれる人は誰もいない。
 
 もちろん旦那さんはいるけれど、昼は仕事をしている。帰ってきた彼に、買い物から掃除からアイロンがけから全部まかせるわけにはいかない。そうなると、誰もいない1週間のあいだは一人で苦しむ羽目になるのかな。
 
 そうなる前に負担を減らしたい。べつに病気でなくても、お腹の張りがもっと辛くなって動けなくなってからじゃ遅い。でも健康であるうちは、ひとりで頑張ってねと言われる。うーん。
 
 不幸になりなさい、そうなったら助けてあげますよ。そういうスタンスはあんまり好きじゃないな、と思う。どんなときも、不幸になる前に病気になる前に、動けなくなる前に手を打ったほうがいい。
 
 もっともそれなら普通の家事代行サービスを使えばいいわけで、自治体と連携しているほうは「状況が切迫した人向け」なんだろうと理解した。業者によっては体調に関わらず来てくれるらしいけれど、それでも手続きが煩雑だったりする。
 
 そういうことってあるよなあ……と思う。
 
 例えば「学校が嫌いで行きたくない」という子どもがいる。子どもは毎日、嫌々登校している。いまはどうだか知らないけど、むかしのスクールカウンセラーには「学校行ってるなら問題ないでしょ」と言い放った人がいた。この子どもとは兄である。後に自殺する。
 
 不登校になって、学校がイヤ過ぎて吐くようになったら初めて「問題視」してお話を聞いてあげますよ、ってところだろうか。それ以前の「嫌々登校している」部分を解決していれば、たぶんそこまで悪化しないと思うんですが。
 
 こういうのをどう捉えていいのかわからない。「みんな余裕がないから『一見、大丈夫』な人に割くリソースなんてない」ってことだろうか。いま不幸じゃないなら、いま問題が顕在化してなければ、いま病気じゃないなら「問題ない」に分類されてしまう。
 
 「未病」とは、半分健康・半分病気の状態を言うらしい。まだ目立って「病気」と言うほどじゃないけど、まったくの健康とも言えない状態。未病があるなら「未不幸」とか「未問題」なんてのもあっていいし、実際こういう状況は多く見つかる。
 
 まだ決定的な亀裂が入ってないだけで、もうすぐ破綻しそうな人間関係とか。ゆるく首を絞められるようなストレスを受け続け、あと少しで限界に達しそうな環境とか。そういうのは「まだおおごとになってない」時点で手を打たないと、本当に大事になる。
 
 だから健康で動けるうち、何も問題ないうちが華なのだ。家事の負担はホントいまのうち、なんとかしないとなあ。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。