天文学的確率で、いまここにいる

星が好きな小学生だった。
星座やら宇宙やら天文学やら独自に学び始めた私に、祖父は天体望遠鏡を贈ってくれた。ある日突然届いた身の丈ほどの段ボールに入っていたのは、土星の輪が見える感度のビクセン。

東京23区の空だって望遠鏡は宇宙の入り口。目にする宇宙の広さと深さと不明さは10代の混沌や混乱を見えにくくし、新たな考え方のヒントをくれた。

宇宙で生命が偶然生まれる確率は10の4万乗分の1

そんな数字は、悩みの小ささや視野が砂粒より小さいことそして壮大すぎる世界の途方もないドラマの中で自分が生きていることを教えてくれた。

そしていま、目の前でじゃれる2人の子はそれぞれ

3900万分の1の精子と20万分の1の卵子によりこの世に生まれた。

目の前の2人がここに揃って存在し私がそれを見ている確率なんてゼロにちかい。でも2人はそこにいていつものようにケンカし笑い合いさわぐ。最近声も力も大きくてとてもうるさい。

けれど今日は、怒る気にはなれない。じんわりと涙ぐみさえする。時として数字は私を情緒的にさせる。


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