「書きことば」商売の人は「書きことば」文法で

「書きことば」文法とは

 ことばには、書きことばと話しことばがある。そして、友達同士でもなく、意図的にそういう文体で書くのでもないとき、すなわちビジネスでふつうに使う文章ならば、数行のメールでも「書きことば」文法に則って書く必要がある。
 「書きことば文法」というと、「ら抜き」、「い抜き」、「れ足す」、「さ入れ」はNGだから、(「見れます」ではなく)「見られます」、(「読んでます」ではなく)「読んでいます」、(「書けれます」ではなく)「書けます」、(休まさせていただく)「ではなく「休ませていただきます」と書く必要があるんですよね、と言われたりする。
 そう、上記はいずれも、話しことばとしてはだいぶ許容されている語である。新入社員が「休まさせていただきます」と言ったとしても、「『休ませて』だろう!」と叱責を受けることはさほど多くはないだろう。

「い抜き」はNG

 しかし、メールに「いつも御社のnoteを読んでます」と書くのは不適切。お客様へのメールで「い抜き」はNGだ。
 「い抜き」といえば、7~8年前だが、いつも「お世話になってます」ではじまるメールを受け取っていたことがある。チームの一員がこういう言葉遣いをする人だった。見るたびに「あーあ。最初に間違って覚えてしまったんだろうなぁ」と残念だった。
 「お世話になっております(あるいは「お世話になっています」)」と書けないというだけで、「この人はマナーのなっていない人」と思われてしまうのだ。

「書きことば」商売の人ならばSNSも注意

 しかし、「書きことば文法」問題はもっと根が深い。ふだんSNSで自分の私生活を書いている人ほど、書きことばと話しことばの垣根がなくなっている気がする。
 Facebookやtwitterで3食のメニューやレシピ、ペットや植物、家族のあれこれ、果てはビジネス含み自分の日常生活をオープンに投稿している知人が多くいる。それは個人の自由、お好きにどうぞである。
 しかし、そうした投稿文についても「この人は書きことば商売の人のはずだったけど……?」と思うことは多々ある。
 もちろんSNSだから、どんな文体で書こうが、誰に文句を言われる筋合いではない。けれども、自分が「書きことば商売」の一角を占める存在だと自覚しているだろうか。そうした自覚があれば、自分でセルフチェックできるはず。「内容以前に、スタイルで拒絶される投稿がある」ことがわかるはずではないか。

「てにをは」を略すと幼稚な文に

 具体的にはこういうことである。
 「浴衣着る」、「花火行く」、「下駄ない」、「そういうの、おかしい」
 地の文が書きことばであり、故意に話しことばを使いたい等という場合以外には、書きことばが商売である人が書くと失笑を買う。それぞれ次のように助詞を入れればよいだけである。

「浴衣、着る」→「浴衣を着る」 
「花火、行く」→「花火大会に行く」
「下駄、ない」→「下駄がない」
「そういうの、おかしい」→「そういうのはおかしい」 

 気軽なSNSであっても、きちんとした書きことばの文章を書く。そういう心がけで書いていれば、必然的に文章はうまくなるはずだ。
 Facebookはもとより、X(旧twitter)の文章がきちんとしている人はみな品があるし、こういう人と一緒に仕事をしてみたいと思う。
 現に、わたしの講師の初仕事はTweetを読んでくれていた人からだった。そう、きちんと「書きことば文法」に則った文を書けば、仕事のオファーだって届くのである。

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