見出し画像

放送大学 日本語学入門第1回「日本語学とは~ ―国語・国語学・日本語学―」滝浦真人教授

「国語学」と「日本語学」の違い

 放送大学で後期の授業が始まった。今期とったのは「日本語入門」だ。同じ滝浦教授の講義として、一昨年は「日本語リテラシー」、昨年は「日本語リテラシー演習」を受講した。教授の語り口は慣れているから、あまり馴染みがない話でもついていけるだろうと踏んで受講することにしたのだ。
 第1回は「国語学」と「日本語学」の違いについて。国語学は「わが国」の言葉である、国家の言語を研究する。主に文語の韻文を対象としている。
 日本語学は、近代言語学を基盤としながら日本語の特質を明らかにしようとする研究である。主に口語の散文が対象となる。 

「たのしい」を過去形で丁寧に言うと?

 日本語学的なことを考えると、「たのしい」を丁寧にいうと「たのしいです」(「イ形容詞+です」は、1952年に「これからの敬語」で容認されているかたち)となるが、これを変だと感じる人は一定数いる。「イ形容詞の現在形+です」はみなが使っているわけではないということだ。
 では、過去形で「たのしい」をていねいに言うとどうなるか。「イ形容詞の現在形+ですの過去形」なら「たのしいでした」となるが、これはほぼ使われない。「イ形容詞の過去形+です」を使って「たのしかったです」となる。
 「たのしいです」はあまり使われないのに「たのしかったです」はよく使われる。それはなぜか。

「行く」を過去形で丁寧に言うと?

 もうひとつ、今度は動詞を見てみる。「行く」をていねいに言うと「行く+ます」で「行きます」になる。過去形にすると「行く+でした」=「行ったです」は使わず、「行く+ました」を使って「行きました」となる。
 今度はこれを否定にしてみる。すると「行きました」に「でした」がついて「行きませんでした」になる。ここまではよい。
 では推量の形にして「でしょう」をつける。すると、今度は「行きません+でしょう」とはならず、「行く+でしょう」となる。
 「たのしい」「行く」の2つの例から言えることは、「規範的な形(機械的に当てはめて机上で作った形)」と、「世の中でよく使われている形」は異なる場合があるということだ。
 どうやら、こんなことをこれからの授業で掘り下げていくようだ。
 そのほかは、まず呼称詞の話があった。相手をなんと呼ぶか。現在「あなた」がよく使われている。江戸後期にはていねい度が高かった語だが、いまはそのていねい度がどんどん薄まっている。これからどうなっていくのだろう。
 もうひとつ、役割語の話もあった。「~じゃ」は、東日本では「博士(はかせ)語」と呼ばれて「物識りの老人」が話す語とされている。だが、西日本では高齢者に限らずに使用されている。時代を超えて使われる語と、地方で使う語(方言)とがクロスオーバーしているのである。こんな話もこれからしていくらしい。
 今回は第1回で導入だった。なるほど、日本語学というのはこういうことを学んでいく学問なのか。

この記事が参加している募集

国語がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?