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春の記憶と現実は小説より奇なり

会社の近くの桜がいつの間にか咲いていた。
今年は東京でも開花が遅かったと聞いたが、まだ4月の頭だと思うと、寧ろ桜が気を遣って季節に合わせてくれた気もする。

私は季節感のない日々を過ごしているので、桜を認識してようやく春だなぁと感じることができるぐらいなのだが、
連想ゲームのように、連鎖して思い出す、
神経衰弱のように、必ずセットで出てくる、
思い出の紐付きは誰しも持ってるのではないだろうか。

例えば、
すれ違った人の香水が別れた恋人と同じで、恋人との会話を思い出すとか、
夏の夜の風で、高校時代の部活帰りを思い出すとか、
香りや、空気でふっとやって来る思い出たち。

私の場合は、
「4月」と「春のぬるくなった空気」でいつも思い出す曲と記憶がある。

mol-74の「エイプリル」という曲だ。
https://youtu.be/HTjiTJm7jjg?si=veBK01AYuaMK7AxU

突然の陳腐な話で申し訳ないが、
当時付き合っていた彼と別れたのが4月だった。

別れた理由も、4月の何日に別れたのかも覚えていないが、
公園で別れ話をして、帰りの電車でイヤホンから流れてきたのがこの曲だった。

奇跡のように出会って
必然のように別れて
映画みたいには行かない結末に僕は

このフレーズで山手線で泣いた女は私だけだろう。
こうゆう紐付けされた記憶は、なぜか鮮明に残るもので、
その日着ていた当時お気に入りのワンピースの柄も、友人に強がりで送ったLINEの内容も、
数年前の出来事なのに、今だにはっきり覚えている。

青かったとしか言えないこのエピソードを、私は毎春思い出して身悶えてしまうのである。
そして、YouTubeのこの曲の再生数に、毎年貢献してしまうのだ。

今日もふと思い出し、
身悶えを消化させるべく、曲を聴きながらこれをしたためている。

ちなみに、これは本当に蛇足なのだが、
その当時付き合っていた彼とは、
その後すぐヨリを戻し、
今では夫婦となっている。

映画のようにいかない結末に僕は
結構満足しているよ。
春の記憶と、
現実は小説より奇なり。

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