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資金不足、チームの縮小.....それでも曲げなかった信念が『バーチャル経理アシスタント』を生んだ──経営陣が語る、メリービズの「これまで」と「いま」【ボードメンバー鼎談・前編】

こんにちは!メリービズ広報担当です!

2011年7月に誕生したメリービズは、2021年に創立10周年を迎えることができました。そして、創業11年目の今年、大きな決断を下しました。その決断とは、経営体制の変更です。創業以来、メリービズを牽引し続けてきた工藤博樹から、取締役を務める山室佑太郎に代表のバトンが渡されることになったのです。

メリービズは工藤、山室、そして取締役である太田剛志の3名がボードメンバーとして経営を担い、工藤が「代表取締役」という役割を務めていました。これからもこの3人体制で会社の舵を取っていくことは変わりませんが、今後を見据え、役割を変更することに決めたのです。工藤は今後R&Dを、そして、山室が代表取締役を「担当」することになります。

なぜ、このような決断を下したのでしょうか?ボードメンバーに集まってもらい、創業から『バーチャル経理アシスタント』ローンチの経緯、そして、経営体制変更の意図と未来の展望など、メリービズの「これまで」と「これから」を語り尽くしてもらう鼎談を開催。

前編では、メリービズに訪れた最大の危機と、その危機を乗り越えるきっかけとなった『バーチャル経理アシスタント』誕生、サービスが社会にもたらす価値を中心に語り合ってもらいました。

★後編はこちら★
新たなフェーズに挑むための、経営体制変更。メリービズは何を「変え」何を「変えない」のか──“フォーメーションチェンジ”の意図とこれからの展望【ボードメンバー鼎談・後編】

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< 左から 太田 剛志、山室 佑太郎、工藤 博樹 >

かつて直面した、会社存続の危機

──そもそも、工藤さんがメリービズを立ち上げようと思ったきっかけは何だったのでしょう。

工藤:自分のためではなく、次の世代のために仕事をしたいと思ったことです。やがて自分が死ぬとき、社会がどんな状態だったら一番後悔するかな、と考えると「自分の子供や、孫世代が楽しく働けておらず、豊かな生活が送れていないこと」ではないか。だから、次の世代の「働く」に貢献するための仕事がしたいと考えました。

経理領域にフォーカスしようと決めたのは、自らの経験によるところが大きい。というのも、メリービズを立ち上げる以前に所属していた会社で、コーポレート部門、特に経理業務の効率化や整備がどうしても後回しになってしまい、担当社員が苦労するのを目にしていたんです。周りを見渡すと、同じ課題を抱えている会社が少なくなかった。

また、メリービズを立ち上げたのは2011年7月なのですが、その頃ってまだ『マネーフォワード』や『freee』、『SmartHR』など、コーポレート業務を効率化するためのツールがほとんど存在していなかったんですよ。つまり、今で言うところの業務DXがまったく進んでいなかった。改善の余地が大きいのではないかと思って、経理業務に焦点を当てたビジネスを立ち上げることを決めたんです。

──メリービズとして最初に手掛けていたのは、レシートなどの入力代行業務だと思うのですが、なぜそういったビジネスを?

工藤:最も身近な課題だったからです。経理業務に関しては、ほぼ全く何も分かっていないような状態だったので、自分や周りの個人事業主の困りごとにフォーカスしようと思い、いろいろと話しを聞いてみると、レシートなどの記帳がめんどくさくて困っているという声が多かった。だから、記帳代行の事業から始めようと考えました。

しかし、その事業は結果的に大きく成長しませんでした。理由はさまざまですが、最も大きな問題は単価が上がらなかったこと。確かにニーズはあったのですが、メインターゲットは個人事業主だったので、こういった外注サービスに多額の資金を充てる人は多くなかったんです。だから、ある程度売上は立っていたものの、販促費を確保することができず、サービスはなかなかグロースしませんでした。

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──創業後しばらくは厳しい時期が続いていた?

工藤:そうですね。その後、資金を調達して販促費を捻出できるようにはなったんです。でも、販促さえ頑張れば伸びると勘違いしてしまっていた。赤字を出しながら広告などを打っていたのですが、サービスは伸びずかなり苦労しました。「このまま行けば大丈夫だ」と思い込んでしまっていたのだろうと思います。

結局は資金がどんどんと減っていき、体制を維持することすら難しくなってしまった。オフィスも解約し、チームもかなり縮小せざるを得なくなってしまいました。会社として存続できるかどうかの瀬戸際まで行ってしまったわけです。

工藤・山室の人柄と、ビジネスとしての可能性を信じて

──山室さんもその苦しい時期を経験しているのですよね?

山室:そうですね。2014年にインターンとしてジョインし、その後、新卒で入社したコンサルティングファームを経て、再入社したのが2015年。メリービズを選んだ理由などについては、以前のインタビューでお話した通り。

オフィスの縮小などは、2017年初頭の出来事なので、まさにその激動期を経験しています。このころには、太田もメリービズに関わるようになっていましたね。

──太田さんはなぜ、メリービズに関わることになったのでしょう?

工藤:きっかけは僕から説明した方がいいかもしれません。会社を立ち上げた直後、つまり2011年には太田と出会っているんです。いろいろな縁があって、当時太田が勤めていた会社の一角で仕事をさせてもらっていて、そこで出会いました。

その後、2016年ごろにレシート入力代行サービスのカスタマーサポート部門を立ち上げようと考えていたとき、社内にはそういった業務の経験者がいなかったので、外部に知見を求めようと思ったんです。そうして、スポットコンサルティングサービスで適切な方を探していたのですが、そのサービスに偶然登録していた太田から「お久しぶりです」と連絡をもらいました。

太田:2015年に独立して、いろいろな仕事をやっていたときにそのサービスに登録していたんですよね。カスタマーサポート部隊の立ち上げ経験があったわけではないのですが、もしかすると力になれることもあるかもしれないと思って、会うことにしたんです。実際に会ったときは、山室さんも来ていたよね?

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山室:ですね、そのときのことはよく覚えています。カスタマーサポートについての話を聞いたのですが、いつの間にか太田がホワイトボードを使いながら、メリービズの組織や事業全体の問題点を指摘してくれて。

太田:そうそう。せっかくお会いするんだし、何とか力になりたいと思って、感じたことを率直に伝えようと。そのときの工藤と山室の姿勢がすごく印象的だったんですよね。

というのも、とても真剣に、真っ直ぐに僕の話を聞いてくれて。普通、外部の人にあれこれ言われたら、ちょっとムッとしてしまうというか「何を分かっているんだ……」って思ってしまうじゃないですか。少なくとも、僕ならそう思いますもん(笑)。

でも、工藤と山室はまったくそんな素振りさえ見せず、ちょっとでも多くのことを吸収しようとするスタンスを見せてくれたんです。素直にすごいなと思いましたね。

それをきっかけに頻繁に会うようになったのですが、先ほど工藤が言った通り、そのころメリービズはかなり苦しい時期にありました。よくよく話を聞いてみると事業面も財務面もうまくいっていない状態だということが分かりました。それまでのオフィスを解約して、マンションの一室に移転した時期でもありましたしお金が無いことは分かっていたので、報酬とかはさておき、僕にできることをやろうかなと。

──そのような状態の会社に携わり続けようと思ったのはなぜでしょう?

太田:やっぱり、工藤と山室がやりきっていることが分かったから。もちろん、うまくいっていない部分はたくさんあったのですが、必死になんとかしようとしているのが伝わってきましたし、この2人がいるなら巻き返せるのではないかと思ったんですよ。

それに、サービスとしてもその時点ではうまくいっていない部分があったことも事実ですが、目の付け所というか、発想は素晴らしいと感じていました。少しやり方を変えれば、一気に成長する可能性は大いにあると。だから、その可能性にかけてみたいと思いました。

そうしてメリービズに携わるようになって、2人といるときはもちろんですが、1人でいるときもメリービズの事業をどうすべきか考えるようになって。情報をたくさん持っていたわけではないので、足りない部分は想像で埋めながら、ああでもないこうでもないと考え、立て直しプランを2人がいるオフィスに持っていくような感じでしたね。

『バーチャル経理アシスタント』の種は、講習会で配布された「プリントの裏」から生まれた

──以前、山室さんにお話を伺った中で太田さんの提案をきっかけに、現在の主力事業である『バーチャル経理アシスタント』が生まれたというお話を聞きました。その提案も、1人でメリービズについて考えを巡らせる中で思い付いたものだったのでしょうか?

太田:そうですね。あるとき、とある講習会を受けなければならなくなったのですが、その講習会がとても長かったので、途中から頭の中ではメリービズのことをずっと考えていて(笑)。具体的にどんなことを考えていたかというと、当時は現在ほどバックオフィス業務をサポートするSaaSが当たり前ではない時代だったのですが、「SaaS時代」の兆しはすでに現れていました。

ソフトウェアによって人の手による業務が効率化されていくことは目に見えていましたが、すべての業務がソフトウェアによって代替され自動化するとは思えなかった。つまり、「本当はソフトウェアに任せたいけれど、そうすることができない専門的なルーティン業務」は、残り続けるだろうと考えました。本来なら、経理部の人材は自社に特有な付加価値の高いコア業務に集中したいのだけれど、どうしてもそうしきれない状況になるだろうと。また、新たなSaaSやテクノロジーが生み出されることは確実なものの、それを使いこなせる人材やノウハウが社会に不足するだろうとも考えていました。

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どうすれば、コア業務に集中できるようになるのか。専門的なルーティン業務だけを任せられる人材を確保できれば良いですが、採用難の時代にあってそれも簡単なことではありません。であれば、ソフトウェアで完結・自動化しきれないノンコア業務を「外部に任せる」しかない。とはいえ、バックオフィス業務に関する豊富な知見を持った「受け手」はほとんどいませんでした。ここにチャンスがあると思ったんです。そうして、現在の『バーチャル経理アシスタント』につながるアイデアが浮かびました。

その講習会で配布された手元資料があったのですが、資料の裏が白紙だったもので、そこにそのアイデアや事業プランを書き留めて、その紙をそのまま工藤と山室に見せたんですよ。そしてそこに書いたものをみんなでブラッシュアップして『バーチャル経理アシスタント』が生まれました。

──工藤さんはそのアイデアを見たとき、手応えを感じられたのでしょうか?

工藤:はい。ただ、太田がそのアイデアを持ってきたときは、まだ資金的にかなり厳しい状況が続いていて、さまざまな金融機関を駆けずり回っていたので、僕はサービス化にあまり関わっていないんですよね。

でも、レシート入力代行サービスを運営するために集めていたスタッフさんが、さらに力を発揮できるようになるのではないかと感じたことは覚えています。それまでのサービスでは、クライアントから預かったレシートに書いてある数字を、そのまま『Excel』などに入力するだけの仕事だったわけですが、太田が持ってきた事業プランは、法人の経理業務を丸々代行することをも見据えたものだった。

スタッフさんの中には、経理に関する豊富な知識を持っている方がたくさんいたんです。その能力を活かせる環境を用意できず申し訳ない気持ちもあったのですが、『バーチャル経理アシスタント』であれば、存分にその力を発揮してもらえる。逆に言えば、その方々がいなければ成り立たない事業でもあったので、スタッフさんがいたからこそ「いけるのではないか」と思えました。

──そうして、2017年9月に『バーチャル経理アシスタント』を正式リリースすることになったと。

山室:レシート入力代行サービスを手掛けていたころにも、お客様から「もっといろいろなことをお願いしたい」と言われていたんです。しかし、当時はリソース的にもスキル的にもできないことが多く、もどかしい気持ちを抱えていました。というより、振り返ってみると、自分たちで「自分たちの限界」を決めてしまっていたように思います。

『バーチャル経理アシスタント』をローンチして、勇気を持って一歩踏み込んだことによって「なんだ、僕たちもたくさんのことができるじゃん」と確認できたと言うか。そういう意味で、すごくホッとしたことを覚えていますね。

工藤:あとは、メリービズが掲げる「ビジネスを楽しく」というビジョンを体現できるようになった感覚がありました。というのも、先ほど言った通りレシート入力代行サービス時代は、スタッフさんにギグワーク的な仕事をお願いするしかなかった。もちろん、そういった仕事も重要ですが、「ビジネスを楽しく」と言っている会社でおこなわれている業務が、そういった内容に限定されていることに、中途半端さを感じていました。『バーチャル経理アシスタント』の誕生によって、スタッフさんにもより複雑で、やりがいを感じてもらえる仕事をお願いできるようになり、ビジョンに一歩近付いたような気がしましたね。

目指すのは、導入企業・リモートワーカー・自社がWin-Win-Winになる世界

──山室さんと太田さんは、『バーチャル経理アシスタント』が提供している価値をどのように捉えていますか?

山室:お客様のニーズに合わせて、柔軟にサービス内容を変化させながら課題を解決できることは、今も変わらず大きな価値だと思っています。あとは、工藤が言ったように「実務を巻き取ること」はもちろん喜んでいただけるのですが、それだけではなく経理業務の進め方に関する知見を提供できていることも大きいですよね。僕たちはこれまで、さまざまなお客様の業務をサポートする中で、さまざまなクラウドサービスやSaaSを活用しながら業務を効率化し、リモートでも業務を成り立たせるためのノウハウを蓄積してきました。その量と質はどこにも負けないと自負していますし、実際に「経理業務のDXが一気に進んだ」といった、驚きと喜びの声をいただくことが多いんです。

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太田:まさに「いま」必要とされるサービスですよね。リモートワークの促進、あるいは業務DXが求められている中で、うまく時流を捉えられている感覚があります。クラウド会計ソフトや高機能なグループウェアなどがなければ成立しづらいビジネスモデルだということもありますが、10年前に『バーチャル経理アシスタント』をローンチしていたとしても、いまほど順調に成長していなかったかもしれません。昨日より今日、今日より明日と、日を追うごとにこのサービスが社会に提供する価値が増していく。そんなタイミングにあると思っています。

リモートワークや業務DXだけではなく、個人の働き方の文脈でも大きな価値を生むためのチャレンジをしています。経理業務に関する豊富な経験・スキルを持った方が、個々のビジョンやライフステージに合わせてイキイキと働けるプラットフォームをつくる挑戦です。

経理畑の方がフリーランスとして独立してやっていくのは、そう簡単なことではありません。経理業務と一口に言っても、そのスコープは広く、「〇〇という専門業務が得意」な人もいれば、「広く浅く、何でもできます」という人もいるわけですよね。

しかし、フリーランスになると、かなり抽象的な課題解決から具体的な業務まで、つまり上流から下流まで一人で担当することを求められる場合もありますし、あまり経験したことのない業務を任せられることもある。実際に仕事を始めてから業務内容が判明したり、仕事をする中でどんどんスコープが変わっていってしまうことも少なくありません。つまり、それぞれの特性を活かせる場所が見つけにくいのが現状だと捉えています。

『バーチャル経理アシスタント』は、経理経験者のみなさんが自らに合った働き方で、それぞれの能力を発揮するためのプラットフォームになっています。これからもそういった社会的な価値を見据え、さらに高めながら、事業を運営していきたいですね。

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メリービズ立ち上げから、『バーチャル経理アシスタント』立ち上げとその価値を聞いた前編はここまで。後編では、いよいよ「経営体制変更」の背景とメリービズのこれからに迫ります。3人は、今回の決断を「『犬ぞり』のフォーメーションを変更するようなもの」とたとえます。その真意とは? ぜひ後編もご一読ください!

★後編はこちら★
新たなフェーズに挑むための、経営体制変更。メリービズは何を「変え」何を「変えない」のか──“フォーメーションチェンジ”の意図とこれからの展望【ボードメンバー鼎談・後編】