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「手順を頭に入れて作る」ことの大切さ

「お菓子づくりは時間かかる」「なんだか疲れる」と思う方へ。家庭料理と同じで、お菓子も“慣れ”がとても大切な要素だ。

ただ、料理はお菓子に比べて生きていく上で必要な「食」を担うもの。苦手だと思っていた人でも、必要に迫られて作り、回数をこなし、上達した例は多いはずだ。

お菓子はそれとは前提がちがう。

それでも、この話で、心にかかる負担を少し軽くすることはできると思う。

作業は、繰り返すほど精度が上がる

パティシエがお菓子を仕込む際、次の工程をいちいち確認することはまずない。なぜなら、すべて頭に入っているから。

「粉を入れた後は、どうすれば?」などと、行き当たりばったりの作業はしない。

先が見えているからスムーズに動けるし、効率も上がる。おまけに、そのお菓子作りにかかるおおよその時間が分かる。

1時間後の自分がどこまでの作業を終えているべきか、や、どのタイミングで昼休憩をとる時間を作るか、合わせて仕事を組みたてる。

そういうものだ。

パティシエは、1日に何種類ものお菓子(またはお菓子のパーツ)を作るが、仕事の仕方は、個々ではなく、チームになって働いているというとイメージし易いかもしれない。

ムースを作る担当と、土台の生地を作る担当は違う。

当然、今、周りがどんな作業をしているか、彼は次に何をするか、という目線は必要だ。無駄な時間を作らず、昨日よりもスムーズに、昨日と同じに最高のケーキを作るのが仕事だ。

飾りつけだって、カットだって、「どうすればもっと早く、うまくできるか」と戦う人は上達する。

とはいえ、これは仕事としてお菓子を作っている「プロ」の話。

最初から慣れている人は、どこにもいない

おうちでお菓子を作るのに、同じお菓子を、作る前から「何度も作ろう!」と決めて作る人がどれだけいるかどうか。気に入るかわからないお菓子に対して、端から「たくさん作って慣れなさい」では楽しくない。

また、初めて作るのに「本やスマホを見るな、作業性を上げろ」だなんて土台無理な話。レシピを広げ、工程を追いながら作ることは絶対に大切だ。ミスを防いだり、状態を確認しながらゆるりと進めてかまわない。

仕事ではないんだから。

ただ、作業の負荷を減らするためには、パティシエがそうであるように、最初に作業のおおまかな流れを把握することをお勧めする。

作業が止まってしまう、いくつかの疲れる原因

初見で作り始めたときに、先を見なかったせいで起こる予想外のトラブルはいくつか思い当たる。

計量が終わり、さあ作り始めるぞという時に「バターをポマード状に柔らかくする」などと書いてあると出鼻をくじかれる思いがするだろう。電子レンジにかけてバターをほぐす手間は、常温に出していたバターを使う時と比べて、雲泥の差だ。

粉を投入する時になって突然「振るった粉を入れて」と言われ、妙に慌てること。粉ふるいはどこにあったか? 粉はどこにふるおうか、などと考えているうちに、状態が変化しやすいメレンゲはバサバサになってしまう可能性もある。

「氷水で冷やす」とあるのに氷のストックがないこと。ないまま進めて、生クリームがバサつくことや、脂っぽい味がするケーキになることもある。

分量外の打ち粉(強力粉)を求められ、薄力粉で代用しなければならないこともある。

生地を○分寝かせる、と作業の中断を迫られ。作業終了の時間が予定より大幅に遅くなる。

自分のぺースでなく、レシピに翻弄されて疲労困憊。そのうえ、状態の良くないものが出来上がれば、やる気は削がれ「もう作りたくない」という気持ちを生みかねない。

たとえばスポンジケーキ

【準備】

型を用意する。

オーブンを予熱する。

薄力粉は振るっておく。

バター(牛乳)は溶かしておく。

【作る】

全卵は砂糖と一緒にすごくたくさん泡立てる。

薄力粉を入れてゴムベラで合わせる。

バター入れてゴムベラで合わせる。

型に流して焼く

この程度だ。あとは生地の状態をレシピで確認すればいい。

大丈夫。お菓子作りはもっとスムーズに進むもの

たとえば、バターを柔らかくする必要がある場合、数時間前から常温に出しておけば、ほどよいポマード状になる。私が以前いた店でも、当日焼き菓子で使う分のバターを見越して常温に出していた。

また、クッキーやタルト生地のように、小麦粉が持つ「グルテン」のつながりを弱くすることでサクサクの状態を目指すお菓子は、寝かせる時間が必要だ。

店では前日に生地を仕込み、翌日成型することが多く、家の場合も、前日に仕込めば、ゆとりを持って、生地を落ち着かせることができる。

粉振るいがなくて断念するくらいなら、いっそ味噌漉しで代用したっていい。そのかわり2~3度ふるってほしいが。粉は、大き目のクッキングシートがなければ、大き目のチラシの裏なんかの上に振るっていけばいい。

工程を一読していれば、先に起こる出来事を知ることができる。すると、迷路をカンで進んでいくような妙なプレッシャーがなくなり、気持ちにちょっとの余裕ができる。

作業は早く、楽になり、また、自然と無駄な洗い物も減る。

だから手順を頭に入れて作り始めることが大切だ。

「疲れた」「もうしばらくはいいや」とならずに、お菓子作りを楽しむための小さいコツを積み重ねれば、ハードルはどんどん下がっていくだろう。

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