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武田鉄矢の言葉が、こんなにも突き刺さる国で

"暮れなずむ町の光と影の中"

"去りゆくあなたへ"

"贈る言葉"

みなさんご存知の名曲、3年B組金八先生の主題歌。海援隊の「贈る言葉」

先日、若い方に話したら知らなかったので念のためにYouTubeも。

本当に名曲です。

作詞は武田鉄矢。

天才です。言葉の魔術師です。(としか言えない私の語彙の貧困さ…)

日本に住んでいた時だって、良い歌だなと思っていました。

卒業シーズンにぴったりよね、って。

でも、ここミャンマーでは、「贈る言葉」の歌詞が突きささりすぎて泣き、また贈る言葉の歌詞に心を救われる、といった事が多くありました。


信頼していた、また、大事に育ててきた、あるいは苦労して採用したスタッフが辞める。

しかも、すぐだったり。

しかも、無断でだったり。

しかも、一気に大量にだったり。

しかも、嘘をついてだったり。

しかも、その嘘がすぐにバレるような幼稚なものだったり。

あまりにも日常の風景なので、ひとつひとつのエピソードを思い出すときりがありませんが、例えばこんな事がありました。

「体の具合が悪くて、医者から数ヶ月休むように言われている。」と診断書を持ってきた子がいたのです。「それでは、3ヶ月休職するのはどうですか」と提案し、「はい、ありがとうございます」と言って消えたその子は、すぐに別の会社に転職していた事が分かりました。

嘘はすぐにバレるんです。なぜって、転職した子は、それをSNSで全世界に発信しているのですから。ITの会社で働いてるんだから、公開範囲の設定とかフィルタとか色々やりなよ!

辞めたいならそう言えばいいのに、診断書(おそらく医者にお金を渡して書いてもらったのでしょう)まで出してきて、嘘ついて。何なの。

(そんなに体の具合が悪かったのに、無理して出勤していたのね、悪かったな。)

(休んだら、調子が良くなるのかしら。早く良くなるといいけれど。)

何より、そんな風に思った自分の気持ちが踏みにじられたように感じたのです。

当時はとても悲しくて、悔しくて、涙を流しました。

しかし、それから現在までの3年弱、こんなエピソードが本当に軽く感じられるくらいに、もっと驚きの、もっと悲しい、もっと悔しい、同様の事が沢山あったため、今同じ事が起きても、もうダメージも受けないだろうな、と思います。

こんな事があるたびに思い出していたのが、「贈る言葉」の一節です。

"信じられぬと嘆くよりも 人を信じて傷つく方がいい"

まずは信じなくては人間関係は始まらない。そうだ、何度こんな事があっても、まずはこちらが信じる事から始まるんだ、と、この歌詞が人間不信になりそうな心を救ってくれました。

ありがとう、鉄矢!

何度もこんな事を繰り返して、何度も涙を流すうちに、私が思い至った事があります。


「嘘をつく子には、それなりの理由があるんだろうな」

「自分を守りたくて必死なんだろうな」

「そこに、良いも悪いもないんだ。それは、私がジャッジする事ではないんだ」

「私は、ただ、素直に相談してもらえるような自分でなかったことを省みよう」

「私が傷つく理由は何もない。私を傷つけようとしている人はそこにはいない」

「ただ、お互いに自分を大事にしただけ。嘘をついた人はその方法が幼かっただけ」


そう考えた時に、心がスーッと軽くなって、今までよりも、自分も、他人も大事にできるような気がしたのです。

その考えに至った大きな道標は、哲学書でも、偉人の言葉でもなく。

武田鉄矢の言葉でした。


"悲しみこらえて微笑むよりも 涙枯れるまで泣く方がいい"

"人は悲しみが多いほど 人には優しくできるのだから"

"求めないで優しさなんか 臆病者の言い訳だから"


本当に、ありがとう、鉄矢!

いや、鉄矢さん。

鉄矢様!

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5年間の駐在生活を終えて、日本へ帰任される方の送別会で、在住のミュージシャンにこの曲をリクエストして歌ってもらったことがありました。

お別れする方に贈る歌として、その曲名の通りふさわしいのではないか、と思ったからです。

終始和やかに楽しく進んだ会でしたが「贈る言葉」のところでは、帰任される方の目に涙がありました。

きっと、別れの寂しさと共に、この国で経験した様々な事が頭の中に走馬灯のように浮かんだのではないでしょうか。

「この国では、信じられない事も沢山ある。でも誰よりも信じるしか道はない」

「信じた結果、悲しい事も沢山ある。でもだからこそ人に優しくできる」

「でも人に優しさは求めないで(自分の心が強くあることが大切)」

きっと、日本でだって、いや、どの国で生きていても、誰もが、こんな気持ちを経験する事があるのでしょう。

ただ、ここミャンマーでは…

その機会が桁違いに多いという、ただそれだけ。

この国では、武田鉄矢の言葉が、こんなにも突き刺さる。


2014年〜ミャンマー在住。IT企業を現地でやっている夫、現地のローカル幼稚園に通う3歳の息子と一緒に、日々アレコレドタバタやってます。サポート頂いたら、新しいモノコト探しに使わせて頂きたいです!