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【第25話】-教師のままでは無理だったこと-

「先生、文化祭のステージに一緒にあがってください」
高島を通じて、そうマリンから連絡をもらった本村は迷った。
普通に考えたら、辞めた学校の教師が文化祭に出るなんてありえない。
それも、辞めさせられたわけじゃないとはいえ、晴れ晴れと去ったのではない職場だ。

どんな顔をしてそのステージに上がれというのか。いや、無理だろう。
マリンには謝っておいてもらうよう、高島に伝言を頼んだ。
「そりゃそうですよね。伝えときます」そう返信があった。
マリンとのSCREAM!!でのことを本村は時々、思い出していた。

自分はともかく、マリンにはせっかく見つけたものを形にしてほしい。
同じ学校の女子生徒と一緒に音楽を始めたようだったが、その後のことは知らないまま学校を辞めてしまった。気になっていたのだが。
一緒にステージに上がろうと誘うということは、うまくやっているのだろうか。本村は、動画サイトでマリンの声を見つけた。

しかし、いくつか立て続けにアップされて以降ピタリと止まってしまったようだ。しばらく更新されていない。何かあったのだろうか。
マリンや高島たちにとって高校3年の最初で最後の文化祭。
本村はこれまで何一つ高校生らしい行事を楽しませてやれなかったことを悔いていた。教師のままでは無理だったかもしれないことが、もしかしたら辞めた今だからこそできるのかもしれない。

一つでも何か、彼らの記憶に残せるのなら……。