見出し画像

【第23話】〜若者の光〜

「先生――!」息を切らしながら、マリン、高島、あみが駆け寄ってきた。
屋上を走ってくる三人の姿を見ていると、彼らには何かまっすぐな光のようなものが宿っているように感じ、本村は目を細めた。

「先生、なんで……」
「あんなのウソなのにどうして辞めちゃうんですか!?」
どうして、と聞かれると明確な答えを返すことはできないが、無理やり辞めさせられたわけではないのは確かだ。

さっきまで重く曇っていた空の隙間からは、暖かい光が滲み出していた。
フッと笑みがこぼれる。「なに笑ってんですか、先生」という高島に、
「いや、それよりどうしてここがわかったんだ」
本村が聞くと、「教えてもらったんです。知らない人から」と三人は顔を見合わせた。

「知らない人?」本村が聞くと、それぞれが頷く。
全く疑っていないその様子に、不用意に信用するなよと本村は思うが、マリンも高島も不思議とどこかで会った気がして怪しいと思わなかったという。

「先生、戻ってきてください」
ストレートに熱い言葉を向けられて、まるで青春ドラマの中の人気教師にでもなったようで照れたが、「こんなのに屈しちゃダメですよ」
「SNSとか見えないところから攻撃してくる人に負けちゃダメです!」と、その裏には他にもいろいろと理由がありそうだ。

そもそもSNS で広まったのはフェイクニュースなのだから、学校側も辞めさせるつもりはなかったと。そこに対する思いが、どうやら強いようだ。
本村が「自分で辞めたから、戻るつもりはないんだ」と言うと、マリンたちは顔を見合わせて小さく息をついた。