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ざっくり百首

第3回「ナナロク社 あたらしい歌集選考会」応募作品制作記録:その3

 前回、どんな歌を集めるか決めたので、それに沿って歌をざっくり100首を集めてみた。
 ここから一首ずつ検討してみる。

以下、集めた100首

  1. 蜘蛛は逝きその巣にかかる虫も逝く煙を吐いてただ見てただけ

  2. 消えていく音と知りつつ冷えきった石炭を焼べ銀河にポッポー

  3. 体毛が濃くなってきて最高なぼくが敗北してできた俺

  4. 神・仏・悪魔・悪霊・クリーチャー・妖怪たぶん全部持ってる

  5. YouTube観ながら折った飛行機が(ギュッギュッギュッギュ)めっちゃ飛んでく

  6. ガラガラのパチ屋の駐車場で逢うカップルみたいに恋をしようよ

  7. コンビニの前で拾った千円のお釣りを全部募金しました

  8. アニメ化は絶対されない毎日がそれでも歌うタッタタラリラ

  9. ああ俺が世界だったか かきけしてかいてはけして悪足掻きで上書き

  10. くす玉に満たされないが満ち満ちてくだらないパーティーが始まる

  11. お互いにニンニク臭い牛タンを食べた舌でも絡めませんか

  12. なきながら四十五歳のおじさんが生まれる事を誰も知らない

  13. 路線図は便利だけれど青空はバスに乗らない人であふれろ

  14. 憂鬱をてなずけている指先を輪ゴムで縛り酸欠をみる

  15. 夏の雪 目をあけみてる夢のなか拍手を浴びつ歩いてをりぬ

  16. めくじらをたてず 挨拶するように心を込めて中指たてる

  17. 隙間から風の悲鳴がうるさくて窓を閉めずに全開にした

  18. どねーなら(フォークリフトを登る蜘蛛)こねーなとけぇ夢があるんか

  19. あったっけ?見覚えがないんだよガソリンスタンドの屋根は高くて

  20. 乱暴に割った卵を混ぜ込んでやけくそに焼くパンケーキ旨っ

  21. 童貞のくせに真珠を三つ入れ息も吸わずに握る金槌

  22. 「普通って理想の別の言いかたね。」どこにでもあるドラマを観てる

  23. 「いやキミは、星みたいだね。いやホント、星みたいだね。すごく浮いてる。」

  24. にんじんは柔らかくなり、卵なら固くなるでしょ。あなたを茹でる。

  25. ジャバチップフラペチーノのグランデでメトホルミンとトラゼンタ錠

  26. ビリビリの迷子の犬の張り紙が電信柱で揺れるペロペロ

  27. 模範囚だったのでしょうスクワレタ魚は浮かび刑期を終えた

  28. 上流で放水されるサイレンがわたしに雨は降ってないのに

  29. 既読無視 電線のない電柱が等間隔で立ち尽くす星

  30. 頼りないシャーペンの芯なにもない荒野に建てる一本の塔

  31. わからないことをわからぬままにして無意味の意味と無価値の価値を

  32. 行き止まり漂いふわり息詰まりダマしダマし生きてく魂

  33. 飛び乗ったタイムマシーンで行った先むなしいだけのむかしの話

  34. 待ってるの?いってしまった乗るはずのバスが去っても?明日・明後日も?

  35. 正解は全て知ることではないし対話したいや愛やDESIRE

  36. 条例で禁止されてはいるけれど貰って枯れた花を燃やそう

  37. 〝私って褒めれば伸びる〟と言う人を褒めたら俺の鼻が伸びてく

  38. 〝私ってサバサバしてる〟と言う人が鯖より早く腐って臭い

  39. 問題です!!「なんでもいいよ」と言う人の〝なんでも〟の意味 知ってるか君?

  40. 「センスいい!!」と言ってくれるあなたにはセンスがかけらもないから言うな

  41. だいたいは〝要するに……〟って言う人の話は長い。要するにバカ。

  42. 僕だけがいつでもいける屋上の南京錠が壊れた扉

  43. 暗闇でリモコン探しテレビ付け蛍光灯が切れて三日目

  44. 下駄箱に画鋲を撒いた跡がある肥やしが土地を豊潤にする

  45. シャンパンの映像みせて育てられ飲もうとしたら泡はなかった

  46. 気合い入れ「失礼します」襟ただす 面接官がカラコンしてる

  47. 一ヵ月ほぼ帰らずに働いて手元に残る十二万円

  48. 【発泡酒】これはビールじゃありません「私は社員ではないのです」

  49. いいようにそそのかされて独立後値段を叩く パソナの門を

  50. 徹夜明け『ちゃんと老いた?』とごじがきた 間違いばかりしていてごめん

  51. なんにでも名前あるやん?知らんだけで。なんでも知っとるな人間は。

  52. 言いあって腹の中まで酸っぱくて〝人には人の乳酸菌〟か…

  53. キャベジンを手に持ったまま感染し食欲不信の異例のゾンビ

  54. カレーの匂いを嗅いで黄昏 鼻毛を揺らしていく追憶

  55. あけてくれたらあけてくれたら明けて暮れてもずっと同じ場所だね

  56. 夜のそこ光が溶けた水槽に藻屑と踊るありふれた違和

  57. 知っている暗黙だったまだ知らぬ沈黙がある不愉快な音

  58. こんなにも構造自体は簡単な百円ライター 家が燃えるよ

  59. 夕立ちと強炭酸にまぜこんで脈打つようにざくろ酢の赤

  60. やわらかな土でも倒れないようにふかくふかくに差し込む支柱

  61. ふくらめばシャボン玉にも影はある虹色混ざる吐きだした影

  62. 太陽を覗けば失明しちゃうでしょ地球の影は夜と呼ばれて

  63. めでたしも途中経過のひとまくで全て「死んだ。」で終わるのでしょう

  64. ひからびたひなたのみみず人はみな日サロにいくなら一人でいくか

  65. 雨浴びるビルよじ登る伸びるツルらくがきにふるルビ愛死帝流(ルビ:あいしてる)

  66. パチパチとはじける音につつまれた本日はお日柄もよく雨

  67. 一発で危険をわかってもらうためピクトグラムがなげうつ身体

  68. EXILEみたいな奴が甚平を着ている街も終戦記念

  69. 駅前をあふれ行き交う人波に丸められてくガラスの破片

  70. 読むために漫画アプリで見せられる違う漫画アプリの広告

  71. 一分でいいからどうかとどまって最高潮で散ってく火花

  72. 短冊のない風鈴がぶらさがる軒下に風 見えぬ塊

  73. なにもない空にうかべた風船やウルトラマンや豚や失恋

  74. 血液とほとんど同じ成分の頬を流れる体液をみる

  75. そんな趣味はないんだけど君の目はどんな味かを確かめたいな

  76. 爪切りで裁断された人体がパチパチ弾け飛ぶ日曜日

  77. 決意したはずだったけど 何枚か日めくりカレンダーをいっきに

  78. 電池の切れたおもちゃのためにとどかない棚をめがけてジャンプジャンプ楽しい

  79. 真夜中にふさわしくないスケボーが無音のなかに飛んだ一瞬

  80. 音のない月に向かって遠吠えをしたら光がさす喉ちんこ

  81. 「つめた〜い」で俺が落としたデカい音この街中に響かせた音

  82. パン屑を盛大に撒くじいさんのパリッと糊がきいたワイシャツ

  83. ミーンミンみんなしんじゃえ裏返りうるさいだけの夏が死んでる

  84. デカい虫とにかくデカい虫がいる見えているだろ?ムシで死んでる

  85. 五期ぶりのV字回復 片仮名で聞き間違えて不死のゴキブリ

  86. 目をつむりやり過ごしてることばかりせめて八月六日九日

  87. わかりみが深すぎるから台風が過ぎ去った後すみきった青

  88. ひとりでは行っちゃいけない池でみた決まったルートを飛ぶギンヤンマ

  89. ウワズッタ声で会話が平静できたいがもれる観測気球

  90. 失えば拾われてゆくえんぴつがどんどんおちる授業参観

  91. 公共のジャングルジムの剥げている塗料でぬられた以前の塗料

  92. 咲き誇れ!!横領・逮捕・離婚した幼馴染の家のコスモス

  93. 絞られた夕日が紅を撒き散らし燃え立つようにゆれる秋桜

  94. 「秋風に揺れる秋桜」チーズインハンバーグオンスライスチーズ

  95. みずたまり泥濘むことは許されず夕日が道路に落とす血溜まり

  96. 断面がおいしいショートケーキにはのってるイチゴと埋もれた苺

  97. 雨上がり蛙が跳んでまた降った跳んだ跳んだ跳んだ降り続く

  98. 揺蕩った。さっき使った雨合羽タラッタラッタHappyだった

  99. ムカっ腹たったらたったうわっつら歌って着火ゆだったかっぱ♪

  100. 脱兎だと!?尻尾をサッととっ掴むカッ飛ばすぞとズバッとバット

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