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DAY1-2 松本の土地の匂いについて


@月曜日からビールを飲む

松本は寒かった。

腕をさすりながら改札を出ると、
そこは別世界だった。

大袈裟だ思うかもしれないが、
もうこれだけで来てよかったと思った。

東京とは全く違う匂い。
土地の香りは確実にある。
冷たくて静かで艶のある空気が、
鼻に口に流れ込んでくる。

ザクザク編みのおしゃれセーターの隙間には、
容赦なく寒さが飛び込んでくる。
秋、などという生易しいものではなく、
指先が痛くなるような厳しい寒さであった。
宿までは徒歩10分。

完全に着てくる服を間違えた。

だが、生かされている心地がした。
心地が良くないことが、とても心地が良い。
生きている感じがした。

焼き鳥屋の前からは焼き鳥の匂いが
家の前からは石油ストーブの匂いが
どんなに幸せなことだろうか。
(雑居ビルと複合商業施設が立ち並ぶ
東京では考えられないことだから)

夜は宿の人におすすめされた
台湾料理へ来てみた。
メニューは中華料理ばかりだった。
居心地はよかった。
ビールを頼んだ。

目の前で初老の男性が若い女性を
怪しげに占っていた。
それを見ながらビールを喉に流し込んだ。

わたしの旅が始まった。


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