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【上手ければ幅を取る必要はない】

幅を取るポジショニングは、スペースを有効活用するための一つの手段。
スペースを操り、相手を操る。
相手を守りづらくし、自分たちが攻めやすくする。
そのための大原則。

しかし、これを育成年代の子どもたちに対して強調するのは、果たしてどのくらい必要なのか。

幅をとり、相手を操りスペースを作り出す。

これは見方を変えると、スペースがあるからプレーができている、ということ。
裏返せば、スペースを作り出してもらえなければ、うまくプレーができなくなる、という一面が潜んでいます。

一見うまく見えたり、うまくプレーができているのは、味方が作り出してくれているスペースがあるからなのかもしれません。

ボールが止まっていないのに、スペースがあるからミスにならない。
パスがずれているのに、スペースがあるからミスにならない。

それで相手を崩したり、得点につながると、結果オーライとなってしまう。
果たしてこの環境で、技術のディテールにこだわろうとするのだろうか。
こだわって取り組もうと伝えたところで、選手の心に伝わるのだろうか。

サッカーはチームプレーなので、味方との関わりや敵との駆け引きの中で、実戦的な技術発揮、戦術理解力が必要とされます。
そのための幅を取ることや立ち位置は、目的を達成するための正しい手段。

ただ、このことが育成年代で、優先順位として上がってくるものなのかどうか。

本当に上手い選手は、敵に囲まれた狭いスペースでも、「自分の位置」という最小スペースで止めれるし運べるので奪われない。
そして、針の穴ほどのパスコースしかなくても通せるし、空中にもパスコースを見出せる。

これは、そういう環境下でこそ身につくべき技術だと考えています。
環境が選手に気づかせて自覚させ、自発的な取り組みにつながる。
それにより、大人からの余計なコーチングを省くことができる。

何を、伝えるか。
どの程度、伝えるか。
いつ、伝えるか。

知っていることを、どのように伝達するのかが、指導者の腕の見せ所。
自然にそれが身についている、というのが一番いい。

やらせれば、勝つ確率は上がる。
その反面、自ら育つ環境を奪ってしまっている。

今、何を身につけておくことが将来につながるのか。

このことに気づいている指導者の元からは、勝てなくても確実にいい選手が育っています。




 
代表 森  一哉

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