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葉桜の日

葉桜の時期に思うこと。
どうか、風、強く吹かないで。雨、激しく降らないで。

春の風は強い。海の高波のように勢いがいい。私の髪を、上着を遊ぶようにして乱して、どこか遠くへ持っていこうとする。それらは私が整えればいいから構わないのだけれど、でもお願い、桜の花びらを持って行かないで。

春の雨は冷たい。空気はだんだん暖かくなってきたのに、それを遮るようにして、季節の移ろいに抗うようにして、地面に水分を落とす。人間は傘をさすことができるけれど、でもお願い、桜の花びらを持って行かないで。

そうして、葉桜の頃まで咲いている桜を引っ張るようにして落とそうとしないで。

空中に舞う桜が綺麗だとある作家は言う。
春には花吹雪を見たいと言う詩人がいる。


でも私は、花として枝から伸びて、まあるい形を成している桜が見たい。1度や数度じゃなくてもっと見ていたい。触りたくなるし鼻も近づけたくなる。そのうち食べたくなったりして。

そのままでいて。散るなんて、人と人の間に使うような言葉で表現しないで。

木なのだから葉が生えてくることはわかっている。

けれど、また来年、お目にかかれるかどうかわからないから。

今この瞬間にも世界に何が起きてしまうか分からないから、もう少しだけでも、可愛くて可愛くて小さいまあるい桜を見ていたかった。


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