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好きな人

好きな人には好きって言いたいし言われたい。

好きな人の好きなものを知って認める努力をしたい。

アメスピのゴールド、1杯900円のコーヒー、憧れの車、ヴィンテージカメラ、バイブルにしてる漫画、3足目のスタン・スミスでも、なんでもいい。

それを好きだという事実だけを教えられたくない。好きな人がなんでそれを好きなのかという理由を、木造の暗がりのカフェで眠くなるまで話して欲しい。

夜、会いたいと言われたらわたしも、とだけ答えて、広い交差点で待ち合わせて信号の真ん中で落ちあいたい。

今日と明日のかたわれ時、23時45分。

コンビニで甘いものを選んで一緒に食べて、目と口と鼻と、心で甘さを感じたい。わたしはプリンと、それから、好きな人もまるごとご馳走になりたい。

好きな人の使ってる香水を私も手首につけて、体温に馴染ませたい。そのまま香りが消えなきゃいい。香りのタトゥー。消えて欲しくないから、いつも好きな人の首に鼻を近づけられる関係を願いたい。

好きな人の前では天真爛漫に振る舞いたい。

顔をうんと近づけて目をじっと見つめたら、今度は2メートルくらい距離をあけて後ろを歩いて背中を見つめてヘラヘラしたい。

 もしも小悪魔だねと言われたら、大悪魔とどっちがいい?って聞くことに決めている。

好きな人の家族のことを知りたい。女性の家族とは仲良くする自信がある。

好きな人の友達や、先輩や、会社の上司の名前はすぐに覚えて驚かせる。

でも昔の恋人と女友達のことは耳にもしたくない、知りたくない。

 好きな人からの突然のキスや熱い眼差しで、恋のプログラムを狂わせられたい。

そのまま息つぐ間も与えられないほど深くキスされたって構わない。

そうなったら、わたしなしでは呼吸困難になるほどわたしに溺れてしまえばいい。

知的で雰囲気がある、と思われたい。

シェイクスピアの韻の踏み方や島崎藤村の「初恋」の話をして、今まで会ったことないよ、君みたいな女性に、と言わせたら、もうすぐかもしれない。

好きな人がわたしのことも好きだとしたら、告白は譲らせない。

床上で朝を迎えたら、好きな人の横顔を、穴が開くほど眺めていたい。

そのまましばらくしあわせにくるまれて、シャワーを浴びたらサラダを食べに行こう。

そうやって、好きな人の大好きな人になりたい。

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